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無事に帰って来れるかなぁ…
かげみちの方にばしばし上げてるはず。

管理人不在中お詫びの管理人の秘密コーナー☆
野球は高校野球の方が好き。
でも野球はやりたくない…
応援するのが一番なのです!


さて、昨日の続きです。
お盆なお話。

恋人設定


「僕らのとこよりも先に、奈緒の方に行ったらどうです?」

溶けかけの氷が浮かぶ、湯呑みの中。

八雲はそれを飲み干すと、小さくなった氷を、口の中で噛み砕く。

口の中からひんやりと冷えていった。


『今から行ったって、どうせ寝てるよ』

それだけ言うと、どこか寂しそうに窓の外を見つめた。

八雲もその先を追ったが、そこにはカーテンの隙間から漏れる、月の光しかない。

微かなものではわるが、その光は確かなもの。


まるで、一心の輪郭をなぞる光のような…



その光景を黙って見ていられず、ガリガリと髪を掻き回した。
「…僕だって寝てたらどうするんです?」
半分くらい無くなった中身を残し、机の上に置いた。
『八雲なら、いろいろと起きてるだろうと思ってね』
振り返り様にニコリと笑うが、八雲にはニヤリに見えて仕方ない。
思わず表情を歪め、一心を睨みつけた。
「…いろいろってなんですか?いろいろって」
そんな問いかけには見向きもせず、一心は軽快に笑う。
『でも安心したよ。晴香ちゃんとここまで進んでるなら、心配はいらないな』
目を細めて八雲を見やると、笑いを堪えるように口元を押さえる。
「っ…なんの心配してるんですかっ!」
ついつい立ち上がり、苛立ち気に机を叩いてしまった。
そのせいで晴香は大きく肩を揺らし、目をまん丸く開く。
「ど…どうしたの?」
『おやおや。なにをそんなに慌ててるんだい?』
返事を返そうとしたが、なんだか面倒くさくなり、開きかけた口を閉ざした。
そして最後に、大きく溜め息を吐く。

その溜め息に晴香は不思議そうな顔をしていたが、何も言わなかった。



ふとした瞬間、一心の微笑みににやけがさした。
八雲はそれを見て、嫌そうに眉を寄せる。
『それにしても…』
そこまで言うと、笑いを堪えるように口元を隠した。
だが、目が笑っていてはしょうがない。
「…なんですか?」
ふんっ、と口を結い、両眉を釣り上げる。
晴香の方も、一心に話しかけているとわかり、黙っていた。
『いやぁ〜。少し見ないうちに男になっちゃって…』
ニヤリと笑う辺り、どこか八雲に似ている感覚を覚える。

だが、それを知っているのは晴香だけで、今は見えないのだ。
誰もそれを知るものはいない。

「僕はもともと男ですけど?」
背もたれにもたれかかり、眼で威圧する。
これ以上は言うな…というように…
「八雲君…なんの話してるの?」
一人だけ会話に乗れないのがむず痒いのか、八雲のシャツを引いた。
普段のシャツとは違い、袖がなく、しょうがなく脇腹の辺りを引いている。
「…君は聴かない方が良い」
「…そう」
一心は八雲の言葉に片眉を上げ、感心したように頷いた。
『…と、いうわけは理解しているようだな』
「………」
黙りこくった八雲を見て、晴香は頭にクエッションマークを浮かべる。
「ねぇ…私だけ置いてけぼりにしないでよ…」
『いや〜。八雲の方に来て正解だった』
眉を下げる晴香と、ニヤニヤと笑う一心。
「っ…うるさい!」
思わず大声で怒鳴った事に、八雲は後悔した。
「…そう、だよね。うるさかった…ね…」
しょぼんと落ち込んだ晴香の声を聞き、八雲はゆっくりと隣を向く。
そこには肩を落とし、俯いている晴香がいた。
「ま…待て!君に言った訳じゃなくって…」
『おやおや。修羅場のようだね?』
のんきに剃り上がった頭を掻きながら、二人を眺める一心。
「っ…誰のせいだと…」
文句を言おうと一心に視線を向けたとき、晴香が立ち上がった。
「ごめんね…親子水入らずのとこを、邪魔しちゃ悪いよね」
ニコリと笑うが、笑え切れてはおらず、泣きそうな顔。
そしてそのまま、寝室に向かって一直線に駆けて行ってしまう。
「お…おいっ!」
八雲は慌ててその背中を追いかけた。


『…女の子には弱いんだからなぁ』

覗きたい心が湧くが、ここは我慢をする。

『…もう少ししたら、様子でも見に行こうかね』

椅子から立ち上がり、窓際まで歩く。

『あの子は素直になれないんだから…』

今までの事を思い出し、一心は苦笑を浮かべた。

ふとした時。
真剣な眼差しで月を見上げた。

『…そろそろ来る頃か』

それだけ呟くと、すっ…と窓を通り抜け、ベランダに出る。

月の明かりが、一心の姿を通り抜けていった…



八雲は深く息を吸うと、寝室前のドアをノックする。
「…入るぞ?」
しばらく待ったが、返事は返ってこない。
最後にもう一度ノックをすると、八雲はゆっくりドアを開けた。

電気がついていないようで、あたりは真っ暗だ。
壁に手を当て、スイッチを入れると、あたりが眩しくなる。

それとともに、ベッドの上に寝転がった晴香を見つけた。

「…晴香」

その名を呼び、晴香が寝転がっているベッドに腰を下ろす。
うつ伏せで寝ている晴香は、返事を返さない。
「その…君だけ置いてけぼりにするつもりはなかったんだ…」
そっと柔らかい晴香の髪を撫でる。
ゆっくりと上がる晴香の顔。
「…寂しいの」
絞ったようにそれだけ呟く。
枕に口を埋めたままなので、はっきりとは聴こえなかったが。
「寂しい?」
そう返すと、小さくだが確かにコクリと頷いた。
「私だけ…一心さん見れなくて。なに言ってるかわかんなくって…」
ぎゅっ…とシーツを握る小さな手。
「八雲君に対して、こんなこと言うのはおかしいかもしれないけど…」
ちらりと晴香の視線が八雲に移る。
こちらの様子を窺っているようだ。
「…言ってごらん?」
ぱふっ…と晴香の頭を優しく叩く。
母親が子供をあやすように優しく…
「今は…八雲君がうらやましい…」
そして晴香はすぐに、自らの耳を塞いだ。
八雲の答えを聞きたくない…というように。
「………」
しばらくなんと言っていいか分からず、静寂があたりを包む。
だが何かが吹っ切れたように、八雲は頭を掻いた。
「晴香」
そう呼ぶと、晴香の両手首を握り、耳から離す。
何を思っているのか、怯えたように八雲を振り返る晴香。
そんな晴香に深く溜め息を吐くと、八雲は口を開く。

「…僕が通訳になってやる」

思ってもみなかった返答だったのか、眼をまん丸くさせた晴香がそこにはいた。
「つう…やく?」
「ん。だから君はそんなに落ち込むな」
何で落ち込んでるのかは知らないがな…
八雲がそう言うと、晴香が飛びついてきた。
不意打ちだったので、八雲はばたりと後ろに押し倒される。
「こ…こら。落ち着けって…」
「んっ」
大きく頷くも、興奮が冷めない晴香は、八雲の体にしがみついたまま。
「…まったく…かわいいんだから」
クスリと微笑むと、八雲はその頭を優しく優しく撫でた。


しばらくはこのままで…



『いや〜。いつの間にへたれ卒業か?八雲』
その声に八雲は勢いよく振り返った。
ドアの前には一心の姿。
「こ…こういうときは出てこないものでしょう!?」
かぁっ、と頬が赤くなって行く八雲。
「一心さん居るの?」
小首を傾げるも、体はぴったりとくっついたまま。
先ほど色々と堪えた事もあり、八雲にとってはきつい状態だ。

「まぁ…な」

「ね。早く通訳して?」

キラキラと瞳を輝かせて返答を求める。

「え…っと…」

『ほら、早く言いなさい。へたれ卒業だって!』

「うっ…」

「私の通訳さ〜ん!」


最後は怒鳴るようにして通訳をした八雲なのでした。


END。



続くのかな?
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