×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「ごはん…おいちかった…」
「…どうも」
久しぶりなトーン塗り。
あぁ…これが一番楽ですね、やっぱり。
塗ってて楽しいですし。
さて、バレンタイン翌日の翌日の…翌日ですが、なんじゃかんじゃで翌日話。
バレンタインはいつまで続くのどこまでも。
恋人未満
自分で言うのもなんだが…
僕はモテていると思う。
…断じて、ナルシストではないことは理解してもらいたい。
2月14日…
バレンタインデー当日。
去年だって一昨年だって、僕の感情は無視に、チョコを沢山もらった。
全て本命なのだろう。
…ついでに告白までされた。
それを全て、同じ台詞で断り、チョコだけ押しつけられて、はい終わり。
だが、例外が一人いた。
義理チョコなんだからね!と、悲しいくらい強く言われた相手は…
僕の本命。
…何故、どうでもいい奴らにばかり告白されて、本命には告白されないのだろう。
毎年毎年、それについて一人討論会をしていた。
…だが、今年のバレンタインはどうだ?
「………」
なんだ、この静けさは。
土曜日とあり、大学は休講。
校内にいるのは、サークルや部活に入っている奴らオンリー。
去年一昨年の場合、朝っぱらから訪問者が続出したが…
今年の訪問者はゼロ。
毎日毎日やってくる、あの暇人でさえやってこない。
「…今年はゼロ…か」
別に悲しくなんかないが溜め息を吐き、八雲は立ち上がった。
数年連続で貰っていない年はない。
その記録を伸ばすためにも、寂しさを癒すためにも…奈緒に会いに行こう。
「…もしかしたら、あいつがいるかもしれないしな…」
そんな八雲の願い虚しく、後藤家には“あいつ”の姿はなかった…
2月14日…
バレンタインの夜。
「………」
八雲は寝袋に入ったまま、出てこようとしない。
その瞳は、眠たそうにゆらゆら揺れる。
夜中に来るかもしれない…
そう思うと眠れず、八雲は目を擦っていた。
「はぁ…」
何をこんなに待っているんだ…
寝袋に入ったまま寝返りを打ち、携帯を開く。
受信メールも、着信履歴もゼロ。
毎年チョコをくれるあいつからも、今年は何も無かった。
無かっただけじゃない。
メールや電話で、連絡すらしていない。
休日でも、時々連絡は来る。
勉強を教えて〜だとか、ブレーカーが落ちた〜だとか。
…下らないことで連絡してくるくせに、今日はまったく無い。
いっそ、こっちから連絡してみるか?
そう思って電話帳を開くが、決定ボタンを押せずにいる。
「あ…」
そうこうしている間に、日にちが変わってしまった。
バレンタインの土曜日から、バレンタイン翌日の日曜日に…
こうなるとやる気が落ち、八雲は携帯を閉じた。
まだ起きている…と合図に付けておいた電気を消し、再び寝袋に潜る。
いつ連絡が来ても良いように、携帯は傍に置いておく。
「…なんで来なかったんだ…」
もしかしたら、後藤さんちに行っている間に来たのか…?
いや、あいつのことだ…
僕が帰ってくるのを待っているだろう。
…何か…事件に巻き込まれたとか…
「っ!」
慌てて起き上がり、連絡を取るために携帯を開く。
暗い室内で、携帯のディスプレイがやけに眩しく感じた。
「………」
いや、待てよ。
あいつのことだ…
事件の種を拾ったら、すぐに相談に来るはず…
慌てた自分が恥ずかしくなり、携帯を閉じて寝袋に戻る。
あと考えられるのは…
「…彼氏が…出来た、と……か…」
自分で口にしてから、はっきり言って後悔した。
苦しいぐらいに胸が締め付けられ、目頭が熱くなる。
…今にでも泣きそうだ。
「そうか……彼氏が出来たの、か…」
それなら話が通じる。
あいつが来ないのは、一日中彼氏と一緒にいるため。
連絡が来ないのも、他の男と関わりを持ちたくないため。
下らない話も…そいつに聞いてもらってるんだ。
僕なんかよりも、そいつの方が…話していて楽しいのだろう。
毎年「義理だ」と言われ続けていたのも、本命はそいつにあげているから。
今年は無かったのは、関係が深くなったから。
今ごろ、あいつはそいつに抱かれて…
「…くそっ」
考え出したら止まらず、涙も比例して止まらなかった。
震える拳に噛みつき、声を押し殺して泣いた。
「この野郎っ…」
…こんなに悲しむなら、もっと素直になってれば良かった…
朝日が眩しくて、頭まで寝袋に潜る。
起きないと…と思ったが、今日が日曜日だと思いだし目を閉じた。
「………」
今ごろ、あいつは誰の腕の中で寝ているのだろうか…
そう思うと腹立たしくなり、八雲は丸まった。
瞼の裏に走馬灯のように浮かび上がるのは、あいつとの数々の思い出。
一昨年のチョコは甘すぎて、去年のチョコは苦すぎた。
だから、今年は丁度良いと思った矢先…ナシときた。
…どんな落ちだ。
そわそわとした様子で、いつものように「やぁ!」とやってくるあいつ。
明らかに様子が可笑しいというのに、いつも通りを振る舞うあいつ…
「や、やぁ!」
そう…こんな感じに…
「………」
一瞬にして走馬燈は消え、八雲は目を見開いた。
…まさか、幻聴まで聞こえるとは…恐るべし。
寝袋から出るのが怖く、幻聴で済まし、再び目を閉じようとしたとき。
「ま、ままままだ寝てるなんて。お寝坊さんだこと」
誰が聞いたって平常じゃない言い方。
去年一昨年の記憶が、脳裏に浮かび上がる。
「……あれ、寝てるのかな?」
まさか、妄想が現実になったのではないかと、八雲は動けないでいた。
声は…明らかにあいつのもの。
だが、まだ姿を見ていない。
偽物…ってこともある。
…無いと思うけど。
「もしもーし…」
明るくなった視界に目を細めた八雲が見たのは…
目の前に迫ってきていた、小沢晴香…張本人だった。
「あ…」
どちらとも無く出た声に、つい目をそらす。
「お、おはようっ」
「……おはよう」
そこまでは良かったが、その後はなかなか会話が進まない。
「あれ…」
ひょんな声を出し、じっと見つめられる。
泣きすぎて赤くなった目を見られるのが嫌で、寝袋に潜った。
「目、赤いけど大丈夫?」
「…目が赤いのは生まれつきだ」
「いや、そうじゃなくて…」
「それより…こんなとこにいて、いいのか?」
「?…なにが?」
「…彼氏のとこに、行かなくて…」
「かれ、し?」
「……男のとこにいたから、昨日…来なかったんだろ」
「まさか、八雲君…チョコ楽しみにして…」
「別に…」
「ご、ごめん!」
蚊を捕まえる勢いで手を合わせ、深々と頭を下げられる。
「実は失敗しちゃって…昨日、持っていけなくて…」
「……?」
どういうことだ…と、眉を寄せる。
「昨日は…男と一緒に…」
「何言ってるの?私は一日中、チョコ作りに…」
みるみるうちに赤く染まっていく頬と、小さくなっていく声。
「今年こそ、おいしい…って言って貰いたくて…」
そう言ってカバンから出したのは…
「一日遅れちゃったけど、バレンタインチョコ…あげるね」
赤いリボンで包まれた…ピンクの箱。
「ちょ…な、なんで泣いてるの!?」
「泣いてない」
「あ…」
「……んっ」
「…おいしい?」
「…しょっぱい」
一昨年は甘くて、去年は苦くて、今年はしょっぱくて…
来年は、幸せな味になることを祈ろう。
「今年は…本命、だよ?」
「ごほっ!?」
訂正。
今年から幸せな味になりました。
END。
めざせ、恋する男の子!
僕はモテていると思う。
…断じて、ナルシストではないことは理解してもらいたい。
2月14日…
バレンタインデー当日。
去年だって一昨年だって、僕の感情は無視に、チョコを沢山もらった。
全て本命なのだろう。
…ついでに告白までされた。
それを全て、同じ台詞で断り、チョコだけ押しつけられて、はい終わり。
だが、例外が一人いた。
義理チョコなんだからね!と、悲しいくらい強く言われた相手は…
僕の本命。
…何故、どうでもいい奴らにばかり告白されて、本命には告白されないのだろう。
毎年毎年、それについて一人討論会をしていた。
…だが、今年のバレンタインはどうだ?
「………」
なんだ、この静けさは。
土曜日とあり、大学は休講。
校内にいるのは、サークルや部活に入っている奴らオンリー。
去年一昨年の場合、朝っぱらから訪問者が続出したが…
今年の訪問者はゼロ。
毎日毎日やってくる、あの暇人でさえやってこない。
「…今年はゼロ…か」
別に悲しくなんかないが溜め息を吐き、八雲は立ち上がった。
数年連続で貰っていない年はない。
その記録を伸ばすためにも、寂しさを癒すためにも…奈緒に会いに行こう。
「…もしかしたら、あいつがいるかもしれないしな…」
そんな八雲の願い虚しく、後藤家には“あいつ”の姿はなかった…
2月14日…
バレンタインの夜。
「………」
八雲は寝袋に入ったまま、出てこようとしない。
その瞳は、眠たそうにゆらゆら揺れる。
夜中に来るかもしれない…
そう思うと眠れず、八雲は目を擦っていた。
「はぁ…」
何をこんなに待っているんだ…
寝袋に入ったまま寝返りを打ち、携帯を開く。
受信メールも、着信履歴もゼロ。
毎年チョコをくれるあいつからも、今年は何も無かった。
無かっただけじゃない。
メールや電話で、連絡すらしていない。
休日でも、時々連絡は来る。
勉強を教えて〜だとか、ブレーカーが落ちた〜だとか。
…下らないことで連絡してくるくせに、今日はまったく無い。
いっそ、こっちから連絡してみるか?
そう思って電話帳を開くが、決定ボタンを押せずにいる。
「あ…」
そうこうしている間に、日にちが変わってしまった。
バレンタインの土曜日から、バレンタイン翌日の日曜日に…
こうなるとやる気が落ち、八雲は携帯を閉じた。
まだ起きている…と合図に付けておいた電気を消し、再び寝袋に潜る。
いつ連絡が来ても良いように、携帯は傍に置いておく。
「…なんで来なかったんだ…」
もしかしたら、後藤さんちに行っている間に来たのか…?
いや、あいつのことだ…
僕が帰ってくるのを待っているだろう。
…何か…事件に巻き込まれたとか…
「っ!」
慌てて起き上がり、連絡を取るために携帯を開く。
暗い室内で、携帯のディスプレイがやけに眩しく感じた。
「………」
いや、待てよ。
あいつのことだ…
事件の種を拾ったら、すぐに相談に来るはず…
慌てた自分が恥ずかしくなり、携帯を閉じて寝袋に戻る。
あと考えられるのは…
「…彼氏が…出来た、と……か…」
自分で口にしてから、はっきり言って後悔した。
苦しいぐらいに胸が締め付けられ、目頭が熱くなる。
…今にでも泣きそうだ。
「そうか……彼氏が出来たの、か…」
それなら話が通じる。
あいつが来ないのは、一日中彼氏と一緒にいるため。
連絡が来ないのも、他の男と関わりを持ちたくないため。
下らない話も…そいつに聞いてもらってるんだ。
僕なんかよりも、そいつの方が…話していて楽しいのだろう。
毎年「義理だ」と言われ続けていたのも、本命はそいつにあげているから。
今年は無かったのは、関係が深くなったから。
今ごろ、あいつはそいつに抱かれて…
「…くそっ」
考え出したら止まらず、涙も比例して止まらなかった。
震える拳に噛みつき、声を押し殺して泣いた。
「この野郎っ…」
…こんなに悲しむなら、もっと素直になってれば良かった…
朝日が眩しくて、頭まで寝袋に潜る。
起きないと…と思ったが、今日が日曜日だと思いだし目を閉じた。
「………」
今ごろ、あいつは誰の腕の中で寝ているのだろうか…
そう思うと腹立たしくなり、八雲は丸まった。
瞼の裏に走馬灯のように浮かび上がるのは、あいつとの数々の思い出。
一昨年のチョコは甘すぎて、去年のチョコは苦すぎた。
だから、今年は丁度良いと思った矢先…ナシときた。
…どんな落ちだ。
そわそわとした様子で、いつものように「やぁ!」とやってくるあいつ。
明らかに様子が可笑しいというのに、いつも通りを振る舞うあいつ…
「や、やぁ!」
そう…こんな感じに…
「………」
一瞬にして走馬燈は消え、八雲は目を見開いた。
…まさか、幻聴まで聞こえるとは…恐るべし。
寝袋から出るのが怖く、幻聴で済まし、再び目を閉じようとしたとき。
「ま、ままままだ寝てるなんて。お寝坊さんだこと」
誰が聞いたって平常じゃない言い方。
去年一昨年の記憶が、脳裏に浮かび上がる。
「……あれ、寝てるのかな?」
まさか、妄想が現実になったのではないかと、八雲は動けないでいた。
声は…明らかにあいつのもの。
だが、まだ姿を見ていない。
偽物…ってこともある。
…無いと思うけど。
「もしもーし…」
明るくなった視界に目を細めた八雲が見たのは…
目の前に迫ってきていた、小沢晴香…張本人だった。
「あ…」
どちらとも無く出た声に、つい目をそらす。
「お、おはようっ」
「……おはよう」
そこまでは良かったが、その後はなかなか会話が進まない。
「あれ…」
ひょんな声を出し、じっと見つめられる。
泣きすぎて赤くなった目を見られるのが嫌で、寝袋に潜った。
「目、赤いけど大丈夫?」
「…目が赤いのは生まれつきだ」
「いや、そうじゃなくて…」
「それより…こんなとこにいて、いいのか?」
「?…なにが?」
「…彼氏のとこに、行かなくて…」
「かれ、し?」
「……男のとこにいたから、昨日…来なかったんだろ」
「まさか、八雲君…チョコ楽しみにして…」
「別に…」
「ご、ごめん!」
蚊を捕まえる勢いで手を合わせ、深々と頭を下げられる。
「実は失敗しちゃって…昨日、持っていけなくて…」
「……?」
どういうことだ…と、眉を寄せる。
「昨日は…男と一緒に…」
「何言ってるの?私は一日中、チョコ作りに…」
みるみるうちに赤く染まっていく頬と、小さくなっていく声。
「今年こそ、おいしい…って言って貰いたくて…」
そう言ってカバンから出したのは…
「一日遅れちゃったけど、バレンタインチョコ…あげるね」
赤いリボンで包まれた…ピンクの箱。
「ちょ…な、なんで泣いてるの!?」
「泣いてない」
「あ…」
「……んっ」
「…おいしい?」
「…しょっぱい」
一昨年は甘くて、去年は苦くて、今年はしょっぱくて…
来年は、幸せな味になることを祈ろう。
「今年は…本命、だよ?」
「ごほっ!?」
訂正。
今年から幸せな味になりました。
END。
めざせ、恋する男の子!
PR
この記事にコメントする