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いや、おっくれすぎたあああああああっ!!!

遅刻だ遅刻だ言ってるウサギ並みに遅れましたよ。いや、それ以上に。
何がって父の日小説っすよ。
何日…何週間…もしくは何十年遅れましたかなぁ…

次は七夕小説…書き終えてるには書き終えてるんですが、多分上げるの遅れるかと。
頑張って七日には出てこようと思いますよ!
頑張れアイマイミーマイン俺!!


さて、遅れた父の日小説。
甘えん坊八雲君の参上です。

新婚設定

「………」

「ほら。八雲君、ちゃんと言いなさい!」

「……叔父さん、いつも……ありがとうございます」



6月21日。


6月、三週目の日曜日。


そう、今日は父の日…





「はっはっはっ、まさか八雲が礼を言うなんて…随分と丸くなったねぇ」

息子同然である八雲の成長に、一心は笑う。
馬鹿にするような、軽蔑するような笑みではない。
ではないのだが…明らかに、楽しそうに笑っている。



父の日ということで、八雲と晴香は出掛けていた。

最初に後藤の家に行き、父の日のプレゼントにビールを贈り…
今は、八雲の叔父である一心の元に来ていた。

血の繋がりは無い父親達だけれど、八雲にとっては父親当然。



「これも、晴香ちゃん効果かい?八雲?」

クスクスと子供みたいな笑みを浮かべる一心。
きっと、八雲の成長振りに喜び、少しからかっているのかもしれない。

「…だから嫌だったんだ…」

ぼそりと独り言を吐く。
へそも口も歪めて、早く帰りたいと訴えられる。

だが、晴香はそれを無視した。
文句を言ったって、八雲は叔父である一心に見せたかったのかもしれない。
自分は幸せだ…って。

「ははっ、家じゃもっと丸いですよ〜」

けれど、この言葉には本気で睨まれた。

「おやおや、二人っきりじゃ甘えん坊になるのか」

「そりゃ、これでもか!ってくらい甘えん坊に…んむっ」

「お喋りはその辺にして、そろそろ帰るぞ」

「おや?夕飯食べてくんじゃないのか?」

口を塞がれ、ぐいと手を引かれる。
一心がそれを防ぐように、晴香の腕を手に取った。

「僕らにはまだ仕事が残ってるんですよ」

ふんと鼻を鳴らし、僕のだと言わんばかりに、その手を振り払う。
…甘えん坊さんめ。

「仕事?」

「あ、お父さん…私のお父さんに電話するんです。父の日ですからね」

「と言うわけで、失礼します」

くるりと回され、八雲に手を引かれながら、玄関を出る。

「お、お邪魔しましたーっ」

別れの挨拶をしようとするも、八雲が邪魔をするように背中を押す。


最後に見た一心さんは、本当に幸せそうに笑っていた…





「うん。でねー、八雲君ったら怒っちゃって」

自宅に帰った二人は、風呂に入り夕飯を食べ…
晴香は実家に電話を入れていた。

家を出てから、余り話す機会もなく、毎度恒例になった長話真っ最中だ。

「うんうん、それで困っちゃってさ」

あははっ、と笑った刹那、コツンと頭に何かがぶつかった。
そんなに痛くはないが、不審に思い振り返る。

「………」

そこには、ソファーに座り、むすっとした表情の八雲がいた。
足元に視線を下ろすと、住宅売買の広告が、丸まって落ちていた。

せっかく手に入れた愛の巣を誰が売るか馬鹿野郎。
…なんて、この前酎ハイ缶片手に吐いていたのを覚えている。

…だからって、私に向かって投げなくても…

〈どうしたの?〉

「あ、ううん。何でもないよ」

そう言って、八雲に背を向けようとしたとき…
再び、何かが背中にぶつかった。

足元に視線を下ろすと、そこには丸まった広告が二つ…

「ちょっと待ってて……なにか用?」

電話口を手で塞ぎ、広告を投げた主である八雲に話しかける。
すると、妙にゆっくりとした動作で、机の上に置かれたコップを手に取った。

「お茶」

お茶を入れろ…とでも言っているのだろう。
でもそれくらい…

「自分でしなさい」

ぴしゃんと断り、電話耳を傾けた。

〈なになに?八雲君なんだって?〉

キラキラと輝いた表情が、スピーカー越しでも分かる。

「お茶入れろだってさ…まったく、こっちは電話中だって言うのに…」

〈………〉

「な…なに?」

〈八雲君…構ってもらいたいんじゃないの?〉

「はぁ!?」

自分でも驚くくらいの間抜けな声。

「…そんなわけないと…思う、けど」

〈そんなわけ無く無いわよ!八雲君甘えん坊なんでしょ?〉

「う…うん…」

〈じゃ、早く構ってあげなさい!〉

そう告げると、恵子は返事も聞かずに電話を切った。

「………」

静かに電話を置き、ゆっくりと振り返る。

八雲は頬を膨らまし、空のコップを揺らし見つめていた。

「八雲君」

コップを奪い、真正面から見やる。
だが、怒っているのか拗ねているのか…
八雲はそっぽを向いてしまった。

目線を合わせようと移動するが、逃げるように反対側を向かれてしまう。

「………」


まったく…

心の中で呟き、隣に腰を下ろす。

「おいで」

そして、そっと…そっと、両手を広げた。


「………」

ちらりと、こちらに視線を向けてくる八雲。
何も言わず、その眼差しを受け止める。

だが、何が気に入らなかったのか…ぷいと背を向けてしまった。

「…別に、来たくないなら、良いけどさ」

溜め息を一つし、晴香は立ち上がろうとする。
そんな晴香の手に触れたのは…八雲だった。

腕を掴まれたかと思いきや、続けてぐいと引き寄せられる。

「きゃっ」

気付いたときには、八雲に抱き締められていた…

顔を覗こうとするも、肩に顔を埋められていて叶わない。


…甘えん坊八雲様のご登場らしい。


「まだ、拗ねてる?」

「ん」

「…今日はどうして拗ねちゃったの?」

「ずるい…」

「何がよ」

「後藤さんとか、叔父さんとか…君の父さんにだけ……ずるい」

「だから…何が?」

ぐしゃぐしゃの髪を、解くように優しく撫でる。
すると、お返しだと言わんばかりに、ぎゅっと力強く抱き締められた。


「…僕には、父の日の贈り物…ないのか?」


「……え?」

可愛い…なんて思ってたから、聞き逃しそうになった。
というよりも、聞こえた言葉が事実なのか…聞き返した。

「父の日の贈り物…僕にはないのか?」

だが、再び耳に届いた言葉はやっぱり事実で…
晴香は瞬きを繰り返す。

おかしなことをしている訳ではないのに、八雲に近距離から睨まれる。

「だ、だって……八雲君はお父さんじゃなくて、だんな様じゃない」


父の日なんだ…

子供のいない私たちは、奥さまとだんな様の関係。
…お母さんとお父さんの関係は、程遠い。


「…子供がいないと、君は父の日の贈り物はくれないのか?」

「た…多分…」


正確には、子供が父親に贈り物をするわけだから…

私からではない。



「……わかった」

やっと分かってくれた、と安堵の息を吐いたとき…

「!?」

何故か、お姫様だっこで抱き上げられた。

「やっ、やくもくん!?」

降りようともがくが、八雲には効きっこない。

「…僕が、父親になれば良いわけだ」

八雲の足が、刻一刻と寝室に向かっている。



「今夜中に、子供作るぞ」



「ちょっ…待っ…!!」




リビングには、晴香がこっそり買っておいたワインだけが残された…



END。



嫉妬深い甘えん坊。
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