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久しぶりな八雲です!
今年に入って…二回目か。
お待たせしてしまい申し訳ありませんー(´・ω・`)

実は失踪前に書いたお話。
といっても、途中までですがね…
なので、途中からがらりと変わります。
けど、書き直そうとはしません。めんどくさ(殴


上げようとは思っていましたが、記念日わっしょいシーズンになってしまい…
お待たせしましたー(`_´)ゞ

八晴:恋人未満

「もう…終わりにしましょう…」


なんだか今日は、殴られたみたいに頭がガンガンする。


「さすがだな、八雲。また事件を解決しちまうなんて」


耳なりのせいか、声が聞き取りにくい。


「いい加減、一般市民を巻き込むのはやめてください」


口から吐かれた言葉は、どこかしゃがれた声。




…あぁ、そうか。




「お疲れさま、八雲君」


呼ばれて振り返ると同時に、ぐらりと世界が揺れる。




そうかそうか。そうなのか。




「八雲君っ!!」



視界の片隅に彼女を捉えたとき、僕の目の前は真っ暗になった。





どうやら僕は、風邪を引いたらしい。








目を覚まして一番に目にしたのは、見知らぬ天井だった。

天国のように白い天井だが、病院ではないことは確か。


「あ、起きた?」


耳鳴りに紛れ聞こえた声に、八雲は視線を横に動かす。
歪んだ視界の中見えたのは、晴香であった。

「きみ、は…」

「あ、動かない方が良いよ」

起き上がろうとした肩をぐいと押され、ふわふわな床に押し倒される。
よく見れば、これは床じゃなくてベッドだ。

「八雲君、凄い熱なんだよ」

「熱…?」

「事件解決したあと倒れちゃったんだけど…」

覚えてない?


言われて、やっと脳が働き出す。


……そういえば…


「…そうだったかも、しれない…」


真っ暗な世界の中、名前を呼ばれたのを覚えている。

それから、暖かいものに包まれて…

安心したところで、記憶がぷつり。


「心配したんだからね!…なかなか目、覚まさないんだもん…」

「そんなに、寝てたのか?」

「私の家に来て…もう五時間は寝てたんだから」

「……?」

五時間も寝ていたことよりも、引っ掛かるワードを発見。

「私の、家…?」

熱で浮かれた頭脳でも、しかとそれは理解した。
それから、事実ではありませんように、と部屋を見渡す。



桜色のカーテン。

白色の壁紙。


どこか見慣れた部屋だが、明らかに見慣れない構図。



どうやら僕は…彼女の部屋、彼女のベッドで寝ているらしい。



「……!?」

理解と、身体への伝達に若干のズレ。
これも熱のせいなのだろうか。

慌てて起き上がると、急な動きに視界がぶれる。

「っ…!」

「八雲君!」


数時間前の光景がフラッシュバック。
数時間前と違うのは、意識がちゃんとあると言うこと。

ふらふらと視界が揺れ、そのままベッドから落ちそうになる。
硬い床に叩きつけられるのを覚悟し、固く目を閉じたが、それはこない。

代わりに、何か暖かく柔らかなものに包まれ…


「だ、大丈夫…?」

「…?」


ぼやけた視界の中捕らえたのは、影になった彼女の心配そうな表情…

王子様がお姫様を抱き抱えるように、背中に回された小さな手。


優しさと温もり…

すべてがその小さな手のひらから伝わってくる。


母親が子を心配するような。

母親が子を愛するような。


どこか懐かしくて、悲しくなる記憶が蘇ってきた…



八雲の無事を確認した晴香は、大きく息を吐いた。


「もう、おとなしくしてないと駄目でしょ!」


こどもを叱りつけるような言葉。

むっと来て、言い返してやろうとしたが出来なかった。
それが、あまりにも母親の姿に重なって…

「ほら、早くベッドに戻って!」

「あ、あぁ…」


そんな思い出に浸る暇も無く、八雲はしゃがれ声で返事をした。




それから八雲は、晴香による付きっきりの看護を受けていた。


額の上のタオルは、数十分置きに交換されて。

彼女が作ってくれた暖かい食事を食べさせてもらい。

寝ている間に、わざわざ寝間着まで買ってきてくれ…

……着替えるまで、手伝ってもらった。
下はご丁寧に断らせてもらったが。

汗を拭ってくれた濡れタオルと、彼女の手のひらの感触は忘れられない。


そのおかげで、翌日には元気を取り戻していた。

晴香には「もうしばらく居ればいい」と言われたが、甘える訳にはいかない。
これ以上お世話になることが出来ず、朝食だけ頂いて帰路についた。



「………」

映画研究同好会の戸を開けて一番に感じたのは、ひとりだという孤独。

たった数時間のことだけれど…
どうやら“彼女”の存在は大きくなってしまったようだ。


「また風邪…ひかないかな…」


微かな期待を込めて、部屋の窓を全開に開け放った。






「八雲君、元気?」

それから数時間後。
映画研究同好会の戸を開けたのは、待ち望んでいた晴香であった。


「また君か…」

「看病してくれた相手にそれはないんじゃない?」

くすりと笑った晴香は、言葉とは真逆の笑みを浮かべていた。


窓が開け放たれた部屋。

十人中十人が「寒い」と声を上げるであろう部屋が、春のように暖かくなった。



「それで、もう大丈夫?」

「……まぁ」

“また風邪をひきたい”…
なんて思っていた分、言葉が濁ってしまう。

「こんな寒い部屋にいるんだもん。風邪ひいて当たり前ね」

そういいながら八雲の横を通り過ぎ、開け放たれた窓を閉める。

「…換気は必要だろ」

慌てて探した、くだらない言い訳。

「それは…そうだけど…」

ごにょごにょと聞き取れない言葉たち。

「ちゃんとした家に住んでる奴に、僕の気持ちなんて分からないだろうな」

続けて出てしまった、子供じみた発言。


これには晴香も黙り込んでしまい、窓の前…
八雲の後ろで立ち竦んでしまった。




言い過ぎた…

そう後悔しても後の祭り。
一生懸命に看病してくれた相手…思いを寄せる相手に、なんてことを…


冬を知らせる乾いた唇を噛みしめ、どうしようかと悩みかけたそのとき。



「そうだっ!」



パンッ!と手を叩いた晴香が、八雲の前に駆けた。
続けてドンッと机に手を乗せ、ぐいぐいと輝いた笑顔で迫ってくる。

「ど、どうした…?」

あまりの笑顔と顔の近さに後ろに下がった。





「八雲君がうちに来ればいいのよ!」





「は?」

唐突過ぎる言葉に、八雲は眉を寄せる。

「冬の間だけでも良いから!ねっ!良いアイデアでしょ?」

「待て…来れば良いとか、冬の間だけでもって…」


まさか…まさか、な。



「私の家で暮らせば良いじゃない!」



晴香の口から出てきた言葉に、八雲は深く溜め息を吐いた。
恥ずかしさやら呆れやら…

なんとも言えない感情が八雲を包み込む。




「どう?八雲にとっては良い話じゃない?」


「…どうなっても知らないからな」





こうして、部室に住み着いた化け猫は、無事に冬を過ごすことが出来た…





END.



久しぶりの王道(?)風邪ネタ。
改めて書いてみましたが、意外と難しい…

熱出したときの感情だとか分からず…
“人恋しい”のは確か。

この後はきっと、春夏秋冬と同居コースに決まりですね^^家猫決定。
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無題
お久しぶりです。

久々にコメントします。
なるほど、それが晴香の口説き文句なんですね。
なんという天然小悪魔(笑)
光と影 2010/01/17(Sun)18:17:26 編集
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