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ぎりぎり間に合いました、ホワイトデーまでに!(←
明日はとうとう映画公開ですね!
あぁもう楽しみです。初日は行けないだろうなぁ…orz
秋直:恋人設定
明日はとうとう映画公開ですね!
あぁもう楽しみです。初日は行けないだろうなぁ…orz
秋直:恋人設定
携帯をかちっと開けては、ぱちりと閉める。
ときどき、メールが来ていないか問い合わせて。
けれど、この良く出来た機械の塊は返事を返してはくれなかった。
2月14日、バレンタイン当日。
秋山深一もうすぐ三十路は、一人寂しく自宅であるおんぼろアパートにいた。
「おかしい…」
何十、何百回目となる問い合わせを終えた秋山は、眉を寄せて呟いた。
恋人のいない良い年した男ならば、この過ごし方はごくごく普通。
外を出歩き、腕を組んで歩く男女を見つけては遠くから鼻で笑って。
バカバカしく眺めながらも、心の中では羨んでいるだろう。
だが、俺には恋人がいる。
十近くも離れた、愛らしくてどこか幼さ残る恋人。
何ヶ月も前から「どんなチョコが好きですか」と問いつめられていたというのに。
当日となってみれば連絡はなし。
あの彼女が、今日と言うこの日を、忘れたり無視するわけがない。
「…何かあったのか?」
心配になった秋山は必要なものを手に、コートを羽織り飛び出した。
あいつのことだ。
また騙されていたり、もしかしたら誘拐なんてことも…
あんなに可愛いんだ、誘拐に会っていてもおかしくはない。
息を整えるより先に、玄関のベルを鳴らす。
しばらくもしない間に、ドアの向こうで「はーい」と言う声。
その声にどれだけ安堵したことか。
出てきたらまずは何を言おうか。
そう考えている間に、鉄製のドアが開き、隙間から丸い瞳が現れた。
「あ」
ぱたん。
「……は?」
秋山深一は突然すぎるできごとに首を傾げた。
ドアの隙間から彼女と目があったかと思いきや、すぐに閉められた。
不用心にドアを開けるな、なんて注意しようとしていたためにどう反応すれば良いかわからない。
あぁ、もしかして新しい挨拶の仕方なのだろうか。
玄関開けて、すぐに閉める。…そんなわけあるか。
ただ分かったことは、丸い瞳が焦っていたこと。
「おい」
カンカン、と薄いドアをたたく。
耳を当ててみると、どうしようと言う小さな声が聞こえた。
「直さん?」
「な、なんでしょうか」
なんでしょうかはこっちのセリフだ。
「…何かあったのか?」
「なにもありませんよ」
何もなく無いだろう。
正直者の声は、明らかに震えていた。
「俺でよかったら相談にのるけど?」
「だ、大丈夫です!ほんと、なんでもありませんから!」
「……そう」
仕方ない、な。
「じゃ、俺帰るから」
何かあったらいつでも呼べよ。
そう言い残し、古びた階段をわざとらしく鳴らしがら降りた。
それから数分もしないうちに、再び階段を上がる。
今度は足音を立てないように、抜き足差し足忍び足で。
彼女の部屋の前で立ち止まると、覗き窓を手で覆う。
反対の手を口に当て、こほん。
そして、ベルを鳴らした。
「ど、どちら様ですか?」
ドアの向こうから聞こえる声。
流石に警戒しているのか、ドアが開くことはない。
「郵便でーす」
あまりのわざとらしさに、苦笑いを浮かべた。
これでも変装が得意な秋山深一なのだろうか。
「あ、郵便屋さんでしたか」
だが、これでも信じるのが馬鹿正直の直。
ちょっと待っててくださいね、と言ってからすぐにドアが開く。
「あ」
予想通り、現れた彼女は数分前と同じ顔をしていた。
違うのは、その手にハンコを持っているくらい。
慌てて閉まろうとするドアに足をかける。
靴の幅だけ開いた隙間からは、慌てふためく直の姿が見えた。
「ゆ、郵便屋さんは…」
「あ、それ俺だから」
お邪魔しまーす、と隙間に手を入れこじ開ける。
後ろ手にドアと、鍵を閉めて向かい合う。
からり、と小さな手からハンコが転がった。
「それで、どうした?」
答えを待つも、返事は返ってこない。
顔を俯かせて、渋るようにスカートを握りしめているばかり。
「なお」
叱ったつもりはないけれど、ぴくんと直の身体が揺れた。
「………びっ、が」
「?」
俯いたまま、ぼそぼそと口を動かす。
何も言わなくても、伝わっていないことが通じたらしく、再び口を開けた。
「ニキビ、が、出来ちゃったんです…」
聞こえてきたのは、小さなちいさなコトバたち。
「ニキ、ビ……?」
「はい……」
「吹き出もの…じゃなくて?」
「ニキビですよ?」
微かに感じるジェネレーションギャップ。
聞こえてきたそれを確かめようと、覗き込む。
だが、負けじと言うか反射的にか、ますます俯かれてしまう。
「だめです、見ちゃだめです」
「大丈夫だから、見せて」
ぽかぽかと暖かい頬を、なでなでと手のひらで、指先で撫でやる。
「ね?」
子供をあやすように諭せば、徐々に頭を上げる。
途中、再び俯いてしまったが、どうにか顔を上げてくれた。
「………」
うるうると潤んだ瞳。
八の字に垂れた眉尻。
小動物とも草食動物とも見えるその姿に。
身長差からくる上目遣いに。
どきどきと胸が高鳴った。
「……で、どこ?」
このままでは加減が聞かなくなると察し、無理矢理に言葉を吐く。
顔をぐいと寄せたら、ぎゅっと目を瞑ってしまった。
「…キスするんじゃないんだから」
思わず噴き出してしまったら、今度は逆に睨まれてしまった。
「も、元はと言えば秋山さんのせいなんですよぉっ!?」
かっと顔を上げ、わんわん吠える小動物。
次の瞬間、前髪がはらりと捲れて見つけた。
「あ、ニキビみっけ」
「っ!」
おでこのそれを、両手が慌てて隠す。
手の間から覗く瞳で睨まれるが、涙目のせいでまったく怖くない。
「…で、俺のせいってどういうこと?」
「秋山さんの…」
旋毛から毛先へと撫で下ろす。
サラサラの髪がとても心地が良かった。
「秋山さんのために、いろんなチョコレートを作ったんです」
クルクルと指に絡ませては、静かに逃げていく。
「それで、どんなのが秋山さんのお口に合うのかなって…」
徐々に小さくなっていく声は、最後には消えてしまった。
「…それで……それ、でっ」
味見、しすぎちゃって…
「……もう、いいから」
小さく縮こまる身体を抱きしめた。
「要は…俺のためを思ってニキビが出来た、と」
思い思われ振り振られ。
額に出来るのは、思いニキビ…
「ピッタリ、だな…」
「…何がですか?」
「いや、なんでもないよ」
額の髪をかき分けて、おでこのそれと向き合った。
前髪がなくなるだけで、こうも雰囲気が変わるとは。
愛しの彼女の悩みの原因に、ちゅっと短い短いキスをした。
「な、なにするんですかっ!?」
「しょーどく」
舐めてやろうとしたが、さすがにこれは止められた。
早くはやく治りますように。
「……今度は俺にニキビつくらせる気?」
「全部で50種類はあります!」
END.
思い思われ振り振られという言葉が好きです。
両思い…ってなんでしたっけ?
ときどき、メールが来ていないか問い合わせて。
けれど、この良く出来た機械の塊は返事を返してはくれなかった。
2月14日、バレンタイン当日。
秋山深一もうすぐ三十路は、一人寂しく自宅であるおんぼろアパートにいた。
「おかしい…」
何十、何百回目となる問い合わせを終えた秋山は、眉を寄せて呟いた。
恋人のいない良い年した男ならば、この過ごし方はごくごく普通。
外を出歩き、腕を組んで歩く男女を見つけては遠くから鼻で笑って。
バカバカしく眺めながらも、心の中では羨んでいるだろう。
だが、俺には恋人がいる。
十近くも離れた、愛らしくてどこか幼さ残る恋人。
何ヶ月も前から「どんなチョコが好きですか」と問いつめられていたというのに。
当日となってみれば連絡はなし。
あの彼女が、今日と言うこの日を、忘れたり無視するわけがない。
「…何かあったのか?」
心配になった秋山は必要なものを手に、コートを羽織り飛び出した。
あいつのことだ。
また騙されていたり、もしかしたら誘拐なんてことも…
あんなに可愛いんだ、誘拐に会っていてもおかしくはない。
息を整えるより先に、玄関のベルを鳴らす。
しばらくもしない間に、ドアの向こうで「はーい」と言う声。
その声にどれだけ安堵したことか。
出てきたらまずは何を言おうか。
そう考えている間に、鉄製のドアが開き、隙間から丸い瞳が現れた。
「あ」
ぱたん。
「……は?」
秋山深一は突然すぎるできごとに首を傾げた。
ドアの隙間から彼女と目があったかと思いきや、すぐに閉められた。
不用心にドアを開けるな、なんて注意しようとしていたためにどう反応すれば良いかわからない。
あぁ、もしかして新しい挨拶の仕方なのだろうか。
玄関開けて、すぐに閉める。…そんなわけあるか。
ただ分かったことは、丸い瞳が焦っていたこと。
「おい」
カンカン、と薄いドアをたたく。
耳を当ててみると、どうしようと言う小さな声が聞こえた。
「直さん?」
「な、なんでしょうか」
なんでしょうかはこっちのセリフだ。
「…何かあったのか?」
「なにもありませんよ」
何もなく無いだろう。
正直者の声は、明らかに震えていた。
「俺でよかったら相談にのるけど?」
「だ、大丈夫です!ほんと、なんでもありませんから!」
「……そう」
仕方ない、な。
「じゃ、俺帰るから」
何かあったらいつでも呼べよ。
そう言い残し、古びた階段をわざとらしく鳴らしがら降りた。
それから数分もしないうちに、再び階段を上がる。
今度は足音を立てないように、抜き足差し足忍び足で。
彼女の部屋の前で立ち止まると、覗き窓を手で覆う。
反対の手を口に当て、こほん。
そして、ベルを鳴らした。
「ど、どちら様ですか?」
ドアの向こうから聞こえる声。
流石に警戒しているのか、ドアが開くことはない。
「郵便でーす」
あまりのわざとらしさに、苦笑いを浮かべた。
これでも変装が得意な秋山深一なのだろうか。
「あ、郵便屋さんでしたか」
だが、これでも信じるのが馬鹿正直の直。
ちょっと待っててくださいね、と言ってからすぐにドアが開く。
「あ」
予想通り、現れた彼女は数分前と同じ顔をしていた。
違うのは、その手にハンコを持っているくらい。
慌てて閉まろうとするドアに足をかける。
靴の幅だけ開いた隙間からは、慌てふためく直の姿が見えた。
「ゆ、郵便屋さんは…」
「あ、それ俺だから」
お邪魔しまーす、と隙間に手を入れこじ開ける。
後ろ手にドアと、鍵を閉めて向かい合う。
からり、と小さな手からハンコが転がった。
「それで、どうした?」
答えを待つも、返事は返ってこない。
顔を俯かせて、渋るようにスカートを握りしめているばかり。
「なお」
叱ったつもりはないけれど、ぴくんと直の身体が揺れた。
「………びっ、が」
「?」
俯いたまま、ぼそぼそと口を動かす。
何も言わなくても、伝わっていないことが通じたらしく、再び口を開けた。
「ニキビ、が、出来ちゃったんです…」
聞こえてきたのは、小さなちいさなコトバたち。
「ニキ、ビ……?」
「はい……」
「吹き出もの…じゃなくて?」
「ニキビですよ?」
微かに感じるジェネレーションギャップ。
聞こえてきたそれを確かめようと、覗き込む。
だが、負けじと言うか反射的にか、ますます俯かれてしまう。
「だめです、見ちゃだめです」
「大丈夫だから、見せて」
ぽかぽかと暖かい頬を、なでなでと手のひらで、指先で撫でやる。
「ね?」
子供をあやすように諭せば、徐々に頭を上げる。
途中、再び俯いてしまったが、どうにか顔を上げてくれた。
「………」
うるうると潤んだ瞳。
八の字に垂れた眉尻。
小動物とも草食動物とも見えるその姿に。
身長差からくる上目遣いに。
どきどきと胸が高鳴った。
「……で、どこ?」
このままでは加減が聞かなくなると察し、無理矢理に言葉を吐く。
顔をぐいと寄せたら、ぎゅっと目を瞑ってしまった。
「…キスするんじゃないんだから」
思わず噴き出してしまったら、今度は逆に睨まれてしまった。
「も、元はと言えば秋山さんのせいなんですよぉっ!?」
かっと顔を上げ、わんわん吠える小動物。
次の瞬間、前髪がはらりと捲れて見つけた。
「あ、ニキビみっけ」
「っ!」
おでこのそれを、両手が慌てて隠す。
手の間から覗く瞳で睨まれるが、涙目のせいでまったく怖くない。
「…で、俺のせいってどういうこと?」
「秋山さんの…」
旋毛から毛先へと撫で下ろす。
サラサラの髪がとても心地が良かった。
「秋山さんのために、いろんなチョコレートを作ったんです」
クルクルと指に絡ませては、静かに逃げていく。
「それで、どんなのが秋山さんのお口に合うのかなって…」
徐々に小さくなっていく声は、最後には消えてしまった。
「…それで……それ、でっ」
味見、しすぎちゃって…
「……もう、いいから」
小さく縮こまる身体を抱きしめた。
「要は…俺のためを思ってニキビが出来た、と」
思い思われ振り振られ。
額に出来るのは、思いニキビ…
「ピッタリ、だな…」
「…何がですか?」
「いや、なんでもないよ」
額の髪をかき分けて、おでこのそれと向き合った。
前髪がなくなるだけで、こうも雰囲気が変わるとは。
愛しの彼女の悩みの原因に、ちゅっと短い短いキスをした。
「な、なにするんですかっ!?」
「しょーどく」
舐めてやろうとしたが、さすがにこれは止められた。
早くはやく治りますように。
「……今度は俺にニキビつくらせる気?」
「全部で50種類はあります!」
END.
思い思われ振り振られという言葉が好きです。
両思い…ってなんでしたっけ?
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