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ついったでも呟きましたが「◯◯カァーッ!」がyamaの中で流行中
クリリン。クリリンのことカァーッ!コロコロクリリンカァー!


梅雨な話。

ヨツマコ

空から落ちるはぽろぽろ涙。


雨は神さまの涙と言ったのは誰であろう。


そう聞くとロマンチックに聞こえるけれど。


所詮は梅雨は梅雨。


むしむしとした蒸し暑さも、靴下に跳ねる水玉も。


全部は全部、この神さまの涙のせいなのだ。



神さま神さま。


どうかはやく泣き止んで。






一日の授業がおわり、帰りのホームルーム中。
窓枠に閉じこめられた灰色の空は、見ているだけで気分が沈む。

ザーザーという音をたてた地面へ落ちる雨。
朝はあんなにも晴れていたのに。

近年やってくるゲリラ豪雨に打たれる世界は、あまりにも憂鬱だ。



「はぁー…」


傘持ってくるの忘れちゃったな、ヒナノに借りようかな。

そう思いながら、視線は教室の後ろに向かう。
2年A組、窓際後ろ。“四ッ谷先輩”の席。


大丈夫、かな。



「真」

「ん、なにヒナノ」

明日の予定を話す担任品茂の目を盗み、隣のヒナノを振り向く。
ヒナノは話しかけた本人とは思えないような知らん顔で、淡々と口を開けた。

「先輩のこと、気になるんでしょ」

「へ!?」

「さっきからずっと見てるよ」

ん。とヒナノの花びらのような爪が、後ろの席を差す。

「真、先輩のこと大好きだもんね」

「そ、そんなことないってッ!」

「うるさいぞ、中島!」

眼鏡を押さえ、決め顔の品茂の注意に教室は笑いに包まれた。

「しゅいませーん」

口をへの字に歪めた真に、品茂はまた怒声をあげた。






ばん、と隣で傘が開く音。
艶のある黒髪に、美少女だけが似合う桃色の傘。

傘をみて思い出すのは、やはり屋上のこうもり傘。
ボロボロで穴だらけの傘の下で、彼はびしょ濡れになっていないだろうか。
いやいや、さすがに屋上前の踊場辺りにでも避難しているだろう。


「真、きいてるの?」

「え、あ、うん!」

「…どうする?」

一緒に帰る?と傘が半分さし出される。


「身体冷えちゃったら風邪ひいちゃうよ」

彼も、風邪をひくのだろうか。


「梅雨だし、一度濡れたらなかなか乾かないだろうしね」

避難してても、一着しかなさそうな服が濡れてたりしたら…


「この分だとなかなか止まないだろうし」

夜まで、もしかしたら明日までこの雨の中ひとり…



「どうするの、真チャン?」

「あ、あたし、学校で雨宿りしてるッ!」

踵を返した真は、振り返ることなく階段を駆け上がる。


めざせ屋上の彼の、四ッ谷先輩のもとへ。



「少しは、進む、かな」

そんな真を見つめながら、ヒナノは桃色の傘を回した。
ぴしゃりと踏んでしまった水たまりに、今日はどこか青春を感じた。






「先輩ッ!」

必殺「階段さんだんとばし」を決めた真はそのままの勢いで屋上に飛び出した。

ひたひたと制服に雨が不時着する。
バケツをひっくり返したような雨がコンクリートを叩きつけた。

「なんだ中島か」

「なんだじゃないっス!」

真が声を荒げるのには理由がある。


黒いソファーにガムテープで張り付けられた傘の下。
四ッ谷はいつもの調子で本を開いている。

穴だらけで骨も折れたおんボロ傘。
その下に高く高く積み上げられた本やらダンボールの間に、細身の身体が覗いていた。

「先輩、濡れちゃってるじゃないですか」

「これくらい平気だ」

あまりに平然と言うが、その広い肩口は雨に濡れ、下に着た黒のカッターシャツが透けて見えた。

「どこが平気なんですか!」

真の怒声も雨に打ち消されてしまったのか、まさかの無視なのか。
四ッ谷は返事を返さない。

「ああもうっ」

鞄から取り出したタオルを片手に、真は四ッ谷の元へと大股で寄る。
足音に気付いた四ッ谷が顔を上げると、そこにはタオルの端と端とを手にした真が仁王立ち。

なんだ、と口にしようとした瞬間。目の前が真っ暗になった。

「なっ」

四ッ谷の頭からタオルを被せた真は、そのままがしがしと手を動かす。
視界を遮られた四ッ谷は、真にされるがまま頭を振った。

「や、めろッ!」

やっとのことで真の手首を掴むことに成功。
そのまま持ち上げれると、一方的な戦いに終止符を打つことができた。

「先輩はばかなんです!」

「はぁ!?」

「こんなに濡れちゃって、風邪ひいたらどうするんですか!」

「お前は、俺の、お袋かァーッ!」

「こんなでっかい息子産んだ覚えはありません!」

「例えだ、た、と、え!」

ばかだろお前、と四ッ谷が吠える。
返す言葉が見つからず、真は口を歪める。

「それで中島、お前は何をしにきた」

「傘、忘れたから、雨宿りっす」

「雨宿りなら教室でしろ」

「なんでですか」

「ここは濡れるぞ」

「じゃあ先輩もいっしょがいいです」

「………」

「こんなところにいたら風邪ひきますよ」

「その言葉、そのままお前に返すぞ」

ビシッと蜘蛛の足のような指が差してくる。
何のことかわからない真は、小首を傾げた。

「下は緑のくせして、上はスポブラねぇ…」

キシシ。聞こえてきた声と笑い声に、胸に移る妙な視線。

真は恐る恐る視線を下ろす。
そこには雨に濡れ、透けた下着の線が…

「!」

慌てて胸の前で腕をクロス。

「ヒャー、ハ、ハ、ハッ!」

「へ、変態!」

「お前が勝手に透けさせてるんだろ」

「っ……」


なんてこった。心配したあたしがばかだった。

寒がってないかとか風邪ひいてないかとか、心配したあたしがばかだった。

悔し涙がこみ上げてくる。


俯いた真の濡れた腕を、四ッ谷の手が引いた。
いとも簡単に、四ッ谷の中に身体が埋まった。


「まあまあ拗ねるな」

「…拗ねてないっす」


脳天をさす雨粒がやむ。
こんなボロ傘でも、雨を防げることに感動した。



「嬉しかったぞ」

「なにがですか」

あたしの下着みれたことがっすか。
たっぷりとこもった皮肉に、四ッ谷は苦笑を浮かべた。

「俺を心配してくれる奴がいて」

「へ…?」

思わず顔を上げる。
だが先輩の顔をみる前に、頭に衝撃。
ぐるんぐるんとかき混ぜるように頭を撫でられる。

「なーんてなっ!」

「やだ、やめてくだしゃっ」

「ハーハッハッハッ!」



空から落ちるはぽろぽろ涙。

雨は神さまの涙と言ったのは誰であろう。


その日の夕暮れ、神さまは泣くのをやめた。






「くしゅん!」

「へーくっしょん!」


翌日、風邪という痕跡をのこして。






end.



なぜ透けない>14話

あのあとの怪我は、先輩に責任を取って治療してもらおう
足の怪我とか、eroい

心配してくれるひとがいるのは幸せなこと

本人たちよりも、ヒナノちゃんの方が二人の恋心に気付いてそう
そしてさり気なく応援するのであろう
ビバ、おねえちゃん
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