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なんだか地味に人気があった狼さんと赤頭巾ちゃんパロです。
「読みたい!」の声が多かったのですがなかなか書けず。
なんがかんだで前のお話から間が一年以上開いてしまい「もう誰も期待してないよな」と思っていたのですが、ふとパソコン開いてみるととらじまさんが狼さんと赤頭巾ちゃんを描いて下さっていて。
これは書くしか無い。一年ぶりで二人の性格がぐにゃぐにゃしちゃうけれど書くしか無いって。

要約するとあれなのです。とらじまさんに愛と勇気とこの作品を捧げます。
それとまだここに来てくださっている狼さんと赤頭巾ちゃん好きな方に贈ります。
「あかずきん」って打とうとして「おかずきん」って書いたのはここだけの内緒ですよ、先生。


八雲パロ/狼さんと赤頭巾

赤い頭巾に、装備は輝く銀のコーム。


少女と狼男が過ごす、秋の緩やかな午後。


たった数個の文字から成る歌声の列が耳をくすぐっては通り過ぎていく。


「………」


尾てい骨から生えた普通の人間にはない尾を梳かす、きれいな指。

感じるのは心地よさ、それから確かな温もり。


ムズムズとするこそばゆさに堪えるように、八雲は口を一文字に結んだ。






森の八雲の家には、今日もまた晴香が遊びに来ていた。
と言っても、途中で迷子になり草木の紅に紛れていたところを八雲が見つけ出したのだが。

いい加減に道を覚えろと注意をしたのだが、返された笑みと言葉に毎度ながら呆れ。そして照れ。
にやにやしながら顔を覗き込もうとしてきた晴香を脇に抱え、有無を言わさず家に連れ込んだ。

「もう!」

頬を膨らまされて、とりあえず押し倒したら真っ赤な顔でぽかぽか殴られて。
先ほどからぷりぷりと、一人淡々と掃除をしている。

怒っているならば帰ればいいのに。
そう思っても口にはしない。

言っても良いのだが、妙な意地を張られて本当に帰ってしまったら。
それはそれで悲しいのだ。

それからほどなくして、聞こえてきた鼻歌に八雲の肩の力が抜けた。
本から目を移し、ベッドの上から晴香の姿を捉える。

冷たい板の間の上に腰を下ろし、これまた冷たそうな雑巾で床を磨いている。
小さな背中にかぶりつきたい衝動を堪える。

「今度、使ってないカーペットがあるから持ってきますね」

「…あぁ」

晴香は立ち上がり雑巾を洗い終えると八雲の隣に腰を下ろす。
ベッドがぎしりと軋む。

再び本に目を落とすそうとするも、視線は晴香から剥がれない。
それに気付いたのか、くりっとした瞳と目が合う。

「晴香」

頬に触れる。
名前を呼ばれ困ったように染まる頬に、思わず自らの唇を舐めた。

素肌を楽しむように撫で、可愛らしいその表情を隠す邪魔な頭巾をおろす。

「はるか」

水仕事を終えた赤い手を、暖めるように包み込みそっと押す。
すんなりと倒される身体は抵抗するようにシャツを掴んだ。

「待って、待って…」

「聞こえない」

啄むように唇を合わす。
晴香が黙ったのを見ていつまでもそこに執着せず、首に噛みついた。

「っ……」

晴香が横を向いたとき。
何かに気付いたのか、細い眉が中心に寄った。

「…どうした」

噛みつく犬歯を一時止め離れる。
白い首に浮かぶ噛み跡。

「これ」

眉を寄せながら晴香が摘んだのは、褐色色の毛だった。

「………」

誰の?と言わんばかりの睨み。
第三者が見たならば、口を揃えて非難の言葉を投げかけるであろう。

何も言わない八雲に何を勘違いしたのか、口をへの字に歪めたかと思いきや大粒の涙をぼろぼろとこぼし始めた。

さすがの八雲もこれには焦り手を離す。

「違う」

「何が、違う、のよ!この浮気者っ!」

晴香の右手が空を切る。
それを現役である野生の感でいち早く察知した八雲は、その細くて白いが健康的な腕を掴んで制した。

「落ち着け」

声に大人しく黙るも、目は力強く黒と赤の瞳を威嚇する。
今にも飛び出しそうな左拳を視界の片隅に入れつつ、八雲は喋る。

「これだ」


布と何かが擦れる音。


「…?」

「ん」

八雲は起きあがると、それを大きく振る。
パサパサと揺れる尾は、晴香が指に挟んだ褐色と同じ色であった。

起き上がった晴香は褐色に手を伸ばし、摘んでひっぱる。
「痛い」と文句を飛ばすも無視。
仕方なく様子を眺めていると、みるみるうちに縮こまっていった。

「ご、ごめんなさい…」

「誤解が解けたならそれでいい」

だが晴香は俯いたまま、スカートの裾を握りしめている。
白い繊維に褐色が絡み、土汚れのように滲む。

晴香が顔を上げるまで、八雲はそれを除いていった。


心まで、心臓まで白いコイツに、こんな汚れなんて似合わない。



擽ったそうに膝を擦り合わせるのが目に入る。
…変なことをしているわけじゃあない。ただ、純な気持ちできれいにしてあげているのだ。

「換毛期なんだ」

「狼さんにもあるんですね」

膝元にあった晴香の手が尾を撫でる。
ごっそりとまでは言わないが、白い手に枯れ松葉のような毛が絡み付く。
それを眺めていたかと思いきや、きらりと晴香の瞳が輝いた。
野生の感というのかなんなのか。嫌な予感がし手を離すも遅い。


「お詫びにブラッシングします!」

「遠慮する!」


あまりに楽しそうな満面の笑みに八雲は一刀両断で断った。

「えー、いいじゃないですか」

「よくない」


彼女に、何かをしてもらうのは嫌ではない。

他人とは接してこなかったこの身。

人と触れ合うぬくもりを知ったからには、口には出せないけれど触れたい。触れられたい。


「まぁまぁ」

「まぁまぁじゃない」


だがこいつはトラブルメーカー。
一歩気を緩めれば、自慢の尾に禿を作りかねだいであろう。



いつの間にか晴香の手にはぎらりと輝く銀の櫛。
じりじりと怪しいオーラを振り撒きながらにじり寄られ逃げ腰になる。

だが戦場は狭い狭いシングルベッド。
壁と背中がごっつんこ。くっついた。

それから尾を握りしめられ、全身に粟が生じた。

「こう見えてもうまいんですよ」

よく、近所の猫さんにもやってあげてるんです。
僕は猫じゃない!

そんな嘆きが晴香に届くことはなかった。






そして、今に戻る。

晴香の口から繰り返し刻まれるこの歌は、なんて歌だっただろうか。

そんなことを考えられるくらいには、気を緩ませることが出来ていた。

「気持ちいいですか?」

「…別に」

頬の筋肉を引き締める。
と言っても背を向けている今、顔が見られないのが唯一の救い。


一つのベッドの、二つの縁に腰を下ろす二人。

相手の顔は見れないが、尾を通して伝わるものに警戒心は完全に失せる。
代わりに何か直に心臓を触れられたようなくすぐったいものが来る。

照れくささでもなければ、欲する思いでもない。

…まぁ、それも少しはあるけれど。
それとはまた違う、未知なる感情。


「どうしたんですか?」

「…別に」






はい、おしまい!

ぽんと肩を叩かれる頃。
疾うの昔に忘れた、この感情の名前を思い出した。



「おい」

「?」

「その、だな…」

「!」

「……お礼」



すべては幸福感を思い出させてくれた少女に、感謝の意を込めて。






END.



なんだか久しぶりに甘々としたものを書いた気がします。

すべてはとらじまさんのおかげです!
ブラッシング(?)の描写が少ないのはあれです。
とらじまさん宅のすてきな狼さんと赤頭巾ちゃんをご覧くださいということです。
というよりもあのすてきな場面を文として表すことは人類には不可能なのです。←結論
もう続きはとらじまさんに託します!(こら

本当にありがとうございました!

このあとはあれです、八雲が「お返し」って晴香の髪を解かしてやればいいと思います。
eroもいいけれど、ほのぼのもいいよね。
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きゃー!!
わあああああい!!!
待ちに待った赤頭巾パロだー!
もうもう、雑記に描いてよかった!自分GJ!
やっぱり赤頭巾パロ八晴はかわいいです…(*´∀`*)
浮気されたと思って涙目になる晴香も
勘違いされてあせる八雲もかわいい…!
ブラッシングされて内心嬉しい八雲もかわいい^^
もう、その尻尾は晴香にシャンプーまでされてしまえばいいんですよね!(笑
ああ、やっぱりこのパロ大好き^^
また読めて嬉しいです!
ありがとうございますー!
とらじま 2010/10/17(Sun)23:52:44 編集
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