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LGで秋直です。

改めてLG読み返しているのですが、密輸ゲームの直がかわいいのなんの。
なにこのこ、ちょおかわいいんですけどおおお。


LG:秋直(お友達)

空をよぎるは北風。

風にそよぐは赤トンボ。

ダークトーンに染まった世界に、紅だけが鮮明に色をつけている。


そんな様子をベランダから見上げては惚ける直。

淡い春色のロングスカートから覗く白雪の右足が柵の隙間を行ったり来たり。



今年は秋が来ないと噂されていたけれど、今年もやっぱり秋は来た。


赤い身体を上下に揺らす秋茜。

雲を掻き消す夕日の閃光。

数月前のことが嘘のように落ち着いた身形の道行く人々。

それから秋の美味しい味覚。


それらをつれて、今年も秋は変わらずやってきたのだ。






ゴウンゴウンと地鳴りのように揺れる床。
地震ではなく、どちらかと言うと工事現場のような揺れ。

全ての原因はこの築うん十年の古アパート。
壁も床も骨組みも薄く脆く、定期的な点検もしていないようだ。

玄関前のコンクリ廊下に置かれた洗濯機が嘆き声をまたあげた。

さすがに心配になり「近所迷惑じゃないんですか」と直が問う。
けれど秋山は「大丈夫大丈夫」の一点張り。

白くて長いながらも男性的な骨太の指が紙を捲る。

「だってこのアパート、俺しかいないから」

「そうなんですか」


直は改めて耳を澄ます。

集合住宅にしては確かに無音だ。

外の世界からは子供のはしゃぎ声や近所の犬の鳴き声は聴こえる。


だが、この敷地からは話し声が聞こえない。

物音がない。

人の気配が、ない。


唯一の生活音は外廊下にぽつんと置かれた電気洗濯機のみ。

まるで、二人きりの世界のよう。


鈴虫のりいんりいんという鳴き声で現実に戻り、ロマンチックな妄想に恥じた。

「どうしたの?」

「な、なんでもないです」

逃げるように直は部屋を飛び出した。
しばらくドアを見つめていた秋山だが、その目は再び活字に埋もれた。






頬を撫でる秋風の寒さに震えながら、直は外廊下にて洗濯機と並んでいた。

その光景を見た通学路を歩く小学生に「お化けだ」なんて囁かれたのも知らず。
手を振ったら逃げられたことに、直は小首を傾げていた。


透き通る青を眺めてはぼんやり、今夜の晩ご飯のことを思う。

だがそれも直を夢中にはさせてくれず、気付けば膝を抱え頭は船を漕いでいた。

寄りかかった洗濯機の揺れに直は驚き目を覚ます。
それを何度も繰り返しているうちに、音程のズレた電子音が鳴り響いた。

仕事を終えた洗濯機は、煙臭さを撒きながら停止する。
ご丁寧に「おつかれさまです」と口にし頭を下げる直。

洗濯物の山を腕いっぱいに抱え部屋に戻る。
出てくるときと同じ場所にいた秋山が「おつかれさま」と片手を上げた。

「秋山さんも少しは手伝ってください」

「はいはい」

気のない返事にむっとする。
けれど動く見込みのない秋山に、諦めた直はベランダに歩んだ。

「めっきり寒くなってきましたね」

「そうだな」

「そろそろ毛布、出した方がいいんじゃないですか?」

「俺んち、毛布ない」

「え、大変じゃないですか。それじゃあ死んじゃいますよ」

「それくらいじゃ天才詐欺師は死なないよ」

「さすがですね」

口を動かしながらも、手は濡れた衣服をハンガーに着せては干していく。
それは秋山も同じで、指は静かにページを捲る。

「秋山さんも少しは手伝ってください」

ハンガーに掛けたり、洗濯ばさみで摘んだり。
一向に減らない洗濯物に溜め息を吐き、秋山に声をかける。

「寒いからいやだ」

「私だって寒いです」

「じゃあやめればいい」

「そもそもこれは秋山さんの洗濯物です」

「やってくれと頼んだ覚えはないけど?」

「………」

もういいです。ぷいと背を向け、直は淡々と作業に戻った。



「直さん…」

今晩のおかずは何にしようかなぁ、なんて考えていた直に秋山は話しかける。

「はい?」

「……やっぱりなんでもない」

どうしたんでしょう?

深く追求しようとも思ったが、ここは寒い。
はやく洗濯物を干し終えたい一心で、それ以上追求はしなかった。

直は手にしていた男性物の下着をハンガーの洗濯ばさみで摘んだ。






大家族なわけでもないのに、物干し竿の右から左まで洗濯物が埋められる。

無地のシャツにシンプルなスウェット。

秋の薄雲浮かぶ空をバックにそれを眺めていると、清々しい気分になる。
同時にこれだけ溜め込んでいたことに呆れもしたが。



あまりにも平和な景色を、直はしばらく眺めていた。

「へっくしゅん」

静か過ぎる世界に浸っていたためか、自分自身のくしゃみに驚く。
驚いたことにまた驚き、冷え切った身体で部屋に戻る。

窓を閉めると床に座り込んだ秋山に手招かれ、ふらふら歩む。
薄紅色のスカートがふわふわと揺れた。

「なんですか?」

放射線状に広がる桜色を整え座る。

「手、貸して」

「?」

おとなしく差し出された手を、秋山は握りしめた。

「寒いのに、おつかれさん」

「秋山さん…」


きらきら。

直のまん丸い瞳が星屑のようにきらめく。

秋山の細い瞳が鋭いながらもかがやく。



「優しくしても、手伝わなかったことに変わりないですよ」

「…やっぱ駄目か」

「駄目です」

即答で返された秋山は苦笑を浮かべた。
秋山の表情とともに緩んだ拳から逃れ、直は指を絡める。

「でも、あったかいのでもう少しこうしててください」

「わかった、俺にまかせろ」

「そのセリフ、さっき聞きたかったです」

「残念だったな」

柔らかそうな頬が膨らむ。

直に爪を立てられ可愛らしい曲線が手の甲に刻まれる。
「痛い」と口にすればふふんと勝ち誇りこう言った。



「今日はこのくらいで許しましょう」






彼女の家まで送っていった別れ際。
鍵をちらつかせながら「一緒に、暮らさないか」と聴けばきっぱり、

「お風呂とトイレが一緒なのでいやです」

と言われてしまった。

せめてでものお返しに「最近の若いもんは」とだけ吐いてやった。



とにかく金貯めて、あのお化けアパートを出ようと決めた秋の日の話。






END.



秋山⇔直ではなく秋山→←直なお話でした。
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無題
生活感あふれる秋直って良いですね!そして…まるでお母さんと男の子みたいなやりとりにニヤリとしてしまいました(笑)直ちゃん強くて素敵~♪
no name 2010/11/06(Sat)23:23:35 編集
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