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八雲で八晴です。

…さて、突然ですが。
12月は年末上げ忘れてたの上げちゃうよ祭でっす!
更新率が上がりますのでよろしくおねがいします。


今回のお話は誰も憶えていないであろう一年半前の夏の話の続きです。
第三話目でございます。そしてまだまだ続きます。
八雲や晴香が寒そうで仕方がない。
[一話:2009/08/22][二話:2009/08/30

八雲/八晴(恋人未満)

「っは……はぁ…」

「お、お疲れさま」


自転車置き場の、ちょこっとした日陰。
花壇の縁に腰を下ろした八雲に、晴香はスポーツドリンクを渡した。

「…どうしたんだ、それ…」

「今、自販機で買ってきたの」

「…そうか」

スポーツドリンクを受け取った八雲は、一気に半分をも飲み干す。

「どうする?もう少し休憩してから中に入る?」

「いいや…中に入ってからも、休憩出来るだろ」

「そうだね」

どうせ泳がず、寝ているであろう八雲のために、レジャーシートを持ってきた。
それから、サンドイッチだとか、ちょこっとしたおやつも。

「ほら、さっさと行くぞ」

「あ、うん!」

いつの間にか入り口に立つ八雲を、晴香は慌てて追いかけた。





着替えるために一時別れ、更衣室で着替える晴香。
下に水着を着てきたため、すぐに着替え終え、更衣室を出た。

「あ、八雲君」

更衣室を出てすぐのところ。
シャワーの前に、ワイシャツに水着姿の八雲がいた。

「遅い」

「あ、ごめん…」

八雲より先だろうと思っていたため、心の準備をしていなかった。
そんなに遅くないはずなのに、つい頭を下げてしまう。

「………」

そのまま、下から八雲を見上げていく。


黒の、半ズボンのような形をした、どこにでもある男物の水着。
どこにでもあって、デパートなんかで見慣れているはずなのに…

着ている人によって、こんなにも印象が変わるなんて…


「ジロジロ見るな。気持ち悪い」

「なっ…!」

そういうと、スタスタと消毒用のプールに浸かり、続けてシャワーを浴びる。
晴香も、後を追いかけて八雲に続く。


「…ところで」

八雲と並んで、シャワーを浴びているときのことだった。

「何?」

シャワーの冷たさに、腕を擦り合わせる。
よく八雲は寒くないもんだ。

「…水着、変えたのか?」

「え…?」

どういうこと…?
小首を傾げて訪ねると、八雲の視線が晴香に向き、ゆっくり降りていく。

「下…」

ポツリと呟いた二文字は、シャワーに紛れて消えそうだった。

「あぁ、これね」

着替える前は、普通のビキニパンツであった。
でも今は、紺のホットパンツを履いた状態。

「やっぱ、露出度高いかなって思って」

水着を買ったときについてきたホットパンツ。

「…そうか」

「八雲君とお揃いだね!」

黒の半ズボンと、紺のホットパンツ。

「………」

「ねぇ…」

「…なんだ」

「似合う、かな…?」

「………普通」

「ふ、普通って何よ!」

「………」


ジロジロ見られて恥ずかしかったのか…

「?」

八雲の顔は真っ赤に染まっていた。


「…反則だ」

「え?」

「なんでもないっ」





取りあえず、人目が付かなそうな木陰にレジャーシートを敷く。
すると早速、八雲がその上に寝転がった。

「ちょっと、何寝てるのよ」

「僕はそういう約束で来たんだが?」

「そうだけど…」

「じゃ、お休み」

欠伸をしながら告げると、八雲は腕を枕に眼を瞑ってしまった。

…せっかくプールに来ているというのに。
コイツは本気で寝るつもりらしい。

「…まったく」

溜め息を吐き、とりあえず隣に並んで座った。
それでも暇で、半分ほど空気が抜けた浮き輪を膨らますことにした。

しばらくプールで騒ぐ人々を眺めていたが、ふと八雲を横目で窺う。
八雲が目を閉じているのを確認し、水着姿の八雲を上から下と見渡す。


そんなに筋肉質ではない身体。

だからと言って、ガリガリという訳じゃなくて…
ほどよく肉や筋肉がある訳で。

…まるで、女性のようなその身体。

でも、女の私とは違う身体…


「………」


そんな身体に浮かぶ、微かな傷跡。

彼が、拷問された跡。

消えそうだけれど、確かに残っている傷跡に晴香は手を伸ばす。


「君にそんな趣味があったとはな」

「なっ!?」

あまりにも突然のことに、口から浮き輪が離れた。
驚きで目をパチクリさせていると、八雲の右目がゆっくりと開く。

「…男の寝首を狩るなんて、君の趣味を疑うよ」

「そ、そんなんじゃないもん!」

「ほほう?僕の身体を舐めるように見ていたのはどこの誰だ?」

「舐めるようにって…!」

「事実を言ったまでだ」

「…もう良いっ」


晴香は浮き輪を手にし、足早にその場から去った。
数十メートル歩いたところで、八雲を振り返る。

追いかけてくれたら…いいや、こちらを見ていてくれたら許してやろう。


けれど、振り返った先の八雲は…

見知らぬ若い女性たちに、逆ナンパされていた。

これを避けたくて、人目が付かない場所にしたのに…


「…もう知らない!」

知らない…と言っているのにも関わらず、足は八雲の方へ向かう。
数メートル離れたところに立ち、晴香は浮き輪を八雲めがけて投げた。

「………」

輪投げのごとく、浮き輪はすぽりと八雲を捕まえた。
八雲と女性たちの、何とも言えない眼差しが振りかぶる。

「ふんっ」

あぁ、これでは子供と同じだ。
うまくいかなくて、他人に八つ当たりしてしまう…幼い精神。


今度は振り返らず、晴香はプールめがけてまっすぐ歩いた。





子供のような自分自身が嫌になって、見栄を張ってやってきたのは…
一番深い、潜水練習用のプール。

深いと言っても二メートル前後。
多少の恐怖はあったものの、人も多いし、溺れても助けてもらえるだろう。

「よし!」

このもやもやとした気持ちも一緒に、水に流してしまおう。


そう決意した晴香は、プールに足を入れた。

「冷たくて気持ちがいいー…」

肩まで浸かれ、怒りに火照った身体を冷ましてくれる。

「なーんだ…意外と浅いじゃない」

足も付く深さ。
これで、人が多いわけがわかった。

「よし、久しぶりに泳いじゃおーっと」

どちらかと言えば、泳ぎは下手な方。
だから、たくさん練習をして、みんなを驚かせてやるんだから。

こんなことなら、ゴーグルを持ってくれば良かったな。
ビキニで泳ぐのに、多少の抵抗はあったものの、気にしないことにした。

そう思いながら、晴香はプールの壁を蹴り、泳ぎ始めた。


泳ぎながらも、脳裏に浮かぶのは八雲の姿。
忘れようとするのに、何故か八雲の姿が離れない。


どこまで厄介者なのだ、あいつは。

ひねくれ者で、意地悪でずる賢くて。

人をバカにしていて、全人類を二種類に…
二種類と、変わりものの私にしか分けなくて。

いつも、ひとりぼっちで…

どうして、あんな奴を好きになったんだろう…



「っ!」


そのときだ。

右足に激痛が走り、泳ぐ足が止まった。

一旦、床に足を付こうとしたが、床がない。


水深二メートル…


晴香の頭に、そんな言葉が浮かび上がった。


あぁ、そうだ。

プールっていうのは、真ん中に行くに連れて深くなるんだった…


床を探しているうちに、身体が沈んでいく。


届かない…っ!


そう理解したときには遅く、晴香は頭まで水に沈んでいた。

冷たいプールのはずなのに、身体が焼けるように熱い。

プールの水が、目に滲みるはずなのに、まったく感覚がない。


泳ごうにも、足が動かない。

足を付こうにも、足が届かない。

息を吸おうにも、呼吸が出来ない。

助けてと叫びたくても、口からは空気しか出ない。


死にたくない。


あぁ、そういえば前もこんなことがあったっけ…


ね、八雲君…



晴香の意識も、身体と共に、冷たいプールの底に沈んでいった…



「……?」

何かが、手に触れた気がした。


暖かい…暖かい何か。


気のせいかと思っていれば、背中にも同じ温もりを感じた。


この暖かさ…覚えがある。


晴香は、残り少ない意識の中、ぼんやりと感じていた。



あぁ…そうだ。


この温もりは…



…やくもくん。



END。






はだワイから覗く縞パンが好き。
ちょっと恥ずかし気味に裾をぐいっ…とかやられた日には襲います。八雲が。←

以上、ぱんちゅ語り第三夜でした!
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