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八雲で八晴で昨日の続きです。

そして年末在庫上げちゃう祭!
久々の連日更新です!年中無休活動していたときぶりです。
…と、前にも言ったような気がしますが…はて、どうだったか。


昨日の続きで、四話目。全五話予定なので、次でラストかと。
本当、二人には寒い思いさせて申し訳ない。
[一話:2009/08/22][二話:2009/08/30][三話:2010/12/3

八雲/八晴(恋人未満)

あぁ…そうだ。


この温もりは…



…やくもくん。





そんな安堵に包まれて、晴香は水の中で小さく笑った。
そのまま意識を手放そうとしたとき、寝かせまいと肩にチクリとした痛み。

「っ!」

だが、そのチクリとした痛みのおかげで、晴香は意識を失わずに済んだ。

次の瞬間。

肺に一気に空気が入り、むせ返る。
それと同時に、肌を冷たい風が撫でていく。


「げほっ、はっ…」


のどが痛い。

目が開かない。

鼻がツンとする。

耳鳴りが聞こえる。



〈飛び込みは禁止となっておりますー!〉


遠くから、メガホン越しの声。


「すみません、次から気を付けますので!」


そして、耳元で聞こえた、聞きなれた声…

「は、ごほっ……?」

咳をする度に痛む喉を抑えながら、痛みに開かない瞼を無理矢理開ける。


数十年ぶりかのような、太陽の光。

その逆光になって見えた姿は…


「溺れてる馬鹿も見えないくせに…」

メガホンを持つ監視員に、陰口を叩く八雲だった。


「げほっ、…っは!」

八雲だと分かった瞬間、いつの間にか掴んでいた腕にすがりつく。
プールの水に紛れて、涙がこぼれ落ちた。

…まだ、床に足がつかない。

「…大丈夫か?」

大きな手に、背中を撫でられる。

素に感じる温もりが、あまりにも暖かくて…

「ひっく…はっ、う」

涙はぽろぽろと、落ちることしか知らなかった。

「…もう、大丈夫だ…」

ぐい…と、頭が八雲の胸に押しつけられる。
消毒薬の匂いてともに、八雲の優しさがじんわりと染み渡る。

…駄目だ。また泣きそうだ。


「…一旦、上がるぞ」


髪が濡れて、いつもの八雲君じゃないみたい…

でも、この温もりは八雲のもの。


「泳げる…か?」

身体も口もぶるぶると震え、うまく喋れなかった。
やっと話せたのは「あ」だとか「う」だとか。

だが、八雲はそれだけで分かったのか…

腕に抱えていた晴香を、肩に高く抱え直す。

「…じっとしてろよ」

「げほ、はぅっ」

返事が言えなくて、痛む目を瞑りながらコクコクと頷いた。

それを見た八雲は、何事も無かったかのように泳ぎだした。






「はっ…ぁ…」

陸に上がって数分経ったと言うのに、晴香の呼吸は不規則なものだった。

歩けない晴香に対し、周りの視線も気にせず、八雲にお姫様だっこされた。
初めての体験だというのに、晴香には慌てる元気すら無く…


「座っている方が楽か?」と言う質問に頷いてしまった結果。

現在、八雲の膝の中にいたりします。


レジャーシートの上。
木陰の下。

人目に付かない場所で良かった。

横に座るようにして、八雲の膝の中に埋まる。
八雲の胸板に寄りかかり、彼の鼓動を確かめる。


生きている。

そして私も…


「生きてるか?」

ぺちぺちと、頬を数回叩かれた。

「はっ…う!」

うまく喋れず、うまく表情に表せられず…
とりあえず、薄らと目を開けた。

気付けば、八雲のワイシャツを羽織っていた。
…ご丁寧に、数個だがボタンまで締めてある。


「…生きてるな」

八雲に真上から見下ろされるなんて…
初めての経験かもしれない。

真上に見る、赤い瞳もやっぱり綺麗で…
そんなに見つめられると恥ずかしくて、目を閉じて俯いた。

「…ゆっくり休め」


前髪を、額を撫でやる大きくて優しい手。
その言葉に甘え、ゆっくり休ませてもらうことにした。

こうしていたら、八雲君を口説こうとする輩も出てこないし…



しばらくすると、近くで聞こえたペリリ…と何かを破る音。
不思議に思ったが、目が痛くて瞼を開ける気にもならなかった。


「ひゃっ」

だが、首に触れた感触には、目を開けざるを得なかった。

何が起きたのか分からず、返事を求めて八雲を見上げる。
そこには、素っ頓狂な顔をした八雲がいた。

「安心しろ…絆創膏だ」

「…?」

何故、絆創膏が…?

目で訴えると、苦笑を浮かべながら返事を返してくれた。

「…僕が噛みついた」

それまたどうして。

「気を失いそうだったからって……噛んだのは、悪かった」

ガリガリと髪を掻き回しながら、頭を下げられる。


あぁ、そうか。

あのとき、意識を繋いでくれた、あの痛みは…

八雲君なんだ。


「あ…」

「?」

「ありがとっ」


笑えてないかもしれないけれど。

晴香は精一杯の笑顔で、八雲にお礼を言った。





「まったく君は…」

照れくさそうにそっぽを向いたのが、晴香にも分かった。

「てへへ〜」

「もう大丈夫なら、早く退け」

「うん、ありがと」

足の痛みも大分消えた。
そんな重症ではなかったのだろう。

…どちらかと言えば、溺れた方が重症だ。


八雲の膝に手を突き、とりあえず隣に並んで座った。

「………」

改まって並ぶと、なんだか気恥ずかしい。

それも、水着姿で…
いや、八雲のワイシャツを羽織った状態で。


「あ、ワイシャツ返さなくっちゃね」

「ちょ、待て!」


このとき何故、八雲が止めたのか…

すぐに理由は判明した。


「っ!」

ワイシャツのボタンを外した刹那、裾から落ちてきたのは…
緑と白のストライプのビキニ。

「え、え!?なんでっ…!?」

慌てて自身を抱きしめるように、腕をクロスさせる。

よく見れば、下も履いていたホットパンツが脱げ…
下着のような水着が露わになっていた。


脱いだ覚えなど、一度もない。
…ということは。

「っ…!!」

痛みとは別に、涙が滲む瞳で八雲を睨む。
珍しく眉を八の字にした八雲が、真っ赤な顔で弁解しようとしている。

「く、苦しそうだったから…少し紐を緩めようと思って…」

真っ赤なのは顔だけでなく、耳や首まで赤く染まっていく。

「でも、解けてしまって…」

だが、そんな八雲に弁解の余地など無く…
真っ赤な顔を隠すように、うなだれてしまった。



「…まったく」

これ以上責めるほど、意地悪でもなく。
助けようとして招いた事故な訳で…

「今日だけは…特別だからね」

「……ん」

小さく頷いた八雲は、頬をポリポリと掻いた。






「でも、よく溺れてるの分かったね」

「見張りだからな」

「見張り…?」

「忘れたのか?僕がプールに来た理由」

「あ…」

「ま、君専属の監視員だな」

「ひ、必要ありませんよーだ!」

「ほら、転ぶぞ」

「え…きゃっ!」

「…僕がいなかったら、病院送りになってたかもな」

「うぅ…っ」



END。



ぱんちゅ語り第四夜!

晴香のぱんちゅはボクサー(でいいのかな)でもいいと思います!
「八雲君とお揃い〜」みたいな!

でもここのところ。
八雲、トランクスでもよくね?と思う自分がいます。
いや、夏と言えばトランクスにランニング…みたいな?
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