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四ッ谷でヨツマコです。
八雲以外の更新がとても久しぶり。
今年中にもう一度上げたいです…!
四ッ谷/四真(恋人未満)
八雲以外の更新がとても久しぶり。
今年中にもう一度上げたいです…!
四ッ谷/四真(恋人未満)
灰色が厚塗りされた空。
それは明らかに「雨が降りますよ」と警告しているサイン。
梅雨時ならまだしも今の時期はちがう。
乾燥した空気が漂う中。
準備が良いわけでもないあたしが、傘など持っているはずもない。
だから、今日は大人しく真っ直ぐ帰ろうとしたのだ。
したのだが…
「よぅし中島!ネタを探しにいくぞっ!」
「ええぇっ!」
ノーの返事を返すより先に、四ッ谷先輩に連れ出されてしまったのだった。
しかも、こういう日には限って校外に出るという…
郊外の暗くて怪しい路地裏。
いかにも怪談、もしくは事件の種が落ちているような道をさ迷う。
すると、予想通りというかなんというか。
重苦しい空から、水滴が落ちてきた。
「雨だな」
冷静に呟く四ッ谷。
一度降り出した雨はみるみるうちに雨粒を大きくしていく。
大地を覆うコンクリートがポツリポツリと黒に染まる。
その様子を他人ごとのように眺める横顔が、どこか大人っぽく見えた。
「のんきに見てないで、とりあえずどこかで雨宿りしますよ!」
四ッ谷の手を引き、目に入った喫茶店へと向かう。
だが、看板に書かれた珈琲一杯500円の文字を見つけ足が止まる。
「べ、別のとこにしましょーか」
「貧乏学生め」
「先輩だってそうじゃないっすか!」
雨のことなど見ず知らず。
怪しく笑う四ッ谷にこの人は普通じゃないと、改めて思った。
とにかく今は、肌に張り付く髪をどうにかしたい。
真は四ッ谷の手を引き、雨宿り出来る場所を探し走った。
しばらく走り、空と同じ色をしたビル街を抜けた先。
人気のない集合住宅の中にポツリと建つ公園を見つけ、指さした。
「とにかく今は、あの中に避難しましょう!」
二人が駆け込んだのは公園の中央にそびえ建つコンクリートの半球体。
鉄パイプをコの字型に曲げて作られた梯子が、猫の足跡のように生えていた。
塗装の剥げた外観は、桃色とも肌色ともとれる色合い。
だが、元は朱色だったのだろう。
中に入ってみると、元の色が薄暗い中で強く主張していた。
「とりあえず、雨が弱くなるまでここで雨宿りしますよ」
床は砂利だが、雨はまだ侵食してきてはいない。
走って荒れた呼吸を落ち着かせようと深呼吸。
肺に入り込んできた冷たい酸素に思わず咳き込んだ。
授業が終わった放課後ということもある。
だがそれよりも、走ったことと身体が冷えたことが手伝って。
疲労に襲われた真は、思わず砂利の上に尻をつく。
制服越しに日陰特有のひんやりとした温度が伝わってきた。
「もう、先輩に付き合うとロクなことが起きないっす…」
「あやしい噂が俺を呼んでるんだ!行くのが当たり前だろっ」
「呼んでるんじゃなくて自分から突っ込みに行ってるんじゃないっすか」
隣に座る四ッ谷の目が子供のように輝く。
呆れながら、額に張り付いた髪を掻き上げ後ろへと梳く。
濡れた髪は風呂上がりのようにすんなりと言うことを聞いてくれた。
後頭部でまとめ、ぎゅっと絞る。
「うわ、冷たいっ」
首を通り制服の中へ消える水分に、思わず飛び跳ねてしまった。
鞄からヒナノに貰ったゴム止めを取り出す。
それを後ろに回し、慣れない手つきで結びにかかる。
背中に目がついてなどいない。
頭の後ろで指か試行錯誤している間、真は天井を見上げていた。
光の射さない遊具内。
ダークトーンの朱色の天井に、落書きの数々。
相合い傘に誰かの名前。
口にするには恥ずかしい下品なものから、心躍る告白まで。
しらない誰かが残したメッセージは、遥か彼方から来るボトルメッセージのよう。
「よし、出来た」
最後にパチンとゴムを張り、回した腕を膝に乗せた。
二の腕が疲れて痛い。やせ細った訳ではないそれを軽く揉む。
ふとそのとき、視線を感じて手が止まった。
恐る恐る横を向いてみると、真剣な眼差しの四ッ谷と目があった。
「な、なんすか…?」
雨に濡れた髪のせいだろうか。
いつもは四方八方に広がった髪がストレートだからだろうか。
年相応の色気と、男性オーラを醸し出しているように感じた。
「こういうときに、ピッタリな、怪談を思い出してな」
そう言うと四ッ谷は、身体がある方とは反対側に手を突いてきた。
自然と追いやられる形になり、思わず後ろに下がる。
「このように、突然の雨が降り出した日のことです」
このように、突然の雨が降り出した日のことです
男と少女は、突然のことに雨宿りをする場所を探しました。
ですが、彼らを招き入れてくれる場所はどこにもありません。
二人は仕方なく、寂れた公園の───
コン。
…そう。このような、遊具の中に逃げ込みました。
二人きりの狭い遊具の内。
触れた肩から伝わる熱。
聴こえるのは、荒い息遣いとコンクリートを打つ雨音だけ。
しかし、男は気付いてしまいました。
男にだけ聴こえる、身体の内側を、叩くような、音に。
それに気付いてしまった男は、ゆっくり。
ゆっくりと、少女の方を振り返りました。
───そして男は。
ごくり。思わず唾をのむ。
だが、焦らすように四ッ谷は続きを語らない。
「せんぱい」
思わず声をかける。
怪談は、怖い話は嫌いだけど、オチのない怖い話はもっと嫌いだ。
想像が掻き立てられ、恐ろしい結末が次々と浮かんでしまう。
「先輩」
「ん…なんだァ?」
「はやく、つづき、を」
何故だか鼓動が速い。
始めは、先輩の口から語られる怪談のせいかと思った。
だが落ち着いて考えている間に、それは違うのだと知った。
「男は」
右指に触れる左指。
顎を撫でる右指。
足の間に入り込んでいる胴体。
そして、目前にいる四ッ谷。
「せ、先輩っ!!」
「男は」
“男”から“オス”へと豹変したのでした…
end.
遊具の中で雨宿り。
公園の、こうやって中に入れる遊具の天井って落書きだらけですよね。
それは明らかに「雨が降りますよ」と警告しているサイン。
梅雨時ならまだしも今の時期はちがう。
乾燥した空気が漂う中。
準備が良いわけでもないあたしが、傘など持っているはずもない。
だから、今日は大人しく真っ直ぐ帰ろうとしたのだ。
したのだが…
「よぅし中島!ネタを探しにいくぞっ!」
「ええぇっ!」
ノーの返事を返すより先に、四ッ谷先輩に連れ出されてしまったのだった。
しかも、こういう日には限って校外に出るという…
郊外の暗くて怪しい路地裏。
いかにも怪談、もしくは事件の種が落ちているような道をさ迷う。
すると、予想通りというかなんというか。
重苦しい空から、水滴が落ちてきた。
「雨だな」
冷静に呟く四ッ谷。
一度降り出した雨はみるみるうちに雨粒を大きくしていく。
大地を覆うコンクリートがポツリポツリと黒に染まる。
その様子を他人ごとのように眺める横顔が、どこか大人っぽく見えた。
「のんきに見てないで、とりあえずどこかで雨宿りしますよ!」
四ッ谷の手を引き、目に入った喫茶店へと向かう。
だが、看板に書かれた珈琲一杯500円の文字を見つけ足が止まる。
「べ、別のとこにしましょーか」
「貧乏学生め」
「先輩だってそうじゃないっすか!」
雨のことなど見ず知らず。
怪しく笑う四ッ谷にこの人は普通じゃないと、改めて思った。
とにかく今は、肌に張り付く髪をどうにかしたい。
真は四ッ谷の手を引き、雨宿り出来る場所を探し走った。
しばらく走り、空と同じ色をしたビル街を抜けた先。
人気のない集合住宅の中にポツリと建つ公園を見つけ、指さした。
「とにかく今は、あの中に避難しましょう!」
二人が駆け込んだのは公園の中央にそびえ建つコンクリートの半球体。
鉄パイプをコの字型に曲げて作られた梯子が、猫の足跡のように生えていた。
塗装の剥げた外観は、桃色とも肌色ともとれる色合い。
だが、元は朱色だったのだろう。
中に入ってみると、元の色が薄暗い中で強く主張していた。
「とりあえず、雨が弱くなるまでここで雨宿りしますよ」
床は砂利だが、雨はまだ侵食してきてはいない。
走って荒れた呼吸を落ち着かせようと深呼吸。
肺に入り込んできた冷たい酸素に思わず咳き込んだ。
授業が終わった放課後ということもある。
だがそれよりも、走ったことと身体が冷えたことが手伝って。
疲労に襲われた真は、思わず砂利の上に尻をつく。
制服越しに日陰特有のひんやりとした温度が伝わってきた。
「もう、先輩に付き合うとロクなことが起きないっす…」
「あやしい噂が俺を呼んでるんだ!行くのが当たり前だろっ」
「呼んでるんじゃなくて自分から突っ込みに行ってるんじゃないっすか」
隣に座る四ッ谷の目が子供のように輝く。
呆れながら、額に張り付いた髪を掻き上げ後ろへと梳く。
濡れた髪は風呂上がりのようにすんなりと言うことを聞いてくれた。
後頭部でまとめ、ぎゅっと絞る。
「うわ、冷たいっ」
首を通り制服の中へ消える水分に、思わず飛び跳ねてしまった。
鞄からヒナノに貰ったゴム止めを取り出す。
それを後ろに回し、慣れない手つきで結びにかかる。
背中に目がついてなどいない。
頭の後ろで指か試行錯誤している間、真は天井を見上げていた。
光の射さない遊具内。
ダークトーンの朱色の天井に、落書きの数々。
相合い傘に誰かの名前。
口にするには恥ずかしい下品なものから、心躍る告白まで。
しらない誰かが残したメッセージは、遥か彼方から来るボトルメッセージのよう。
「よし、出来た」
最後にパチンとゴムを張り、回した腕を膝に乗せた。
二の腕が疲れて痛い。やせ細った訳ではないそれを軽く揉む。
ふとそのとき、視線を感じて手が止まった。
恐る恐る横を向いてみると、真剣な眼差しの四ッ谷と目があった。
「な、なんすか…?」
雨に濡れた髪のせいだろうか。
いつもは四方八方に広がった髪がストレートだからだろうか。
年相応の色気と、男性オーラを醸し出しているように感じた。
「こういうときに、ピッタリな、怪談を思い出してな」
そう言うと四ッ谷は、身体がある方とは反対側に手を突いてきた。
自然と追いやられる形になり、思わず後ろに下がる。
「このように、突然の雨が降り出した日のことです」
このように、突然の雨が降り出した日のことです
男と少女は、突然のことに雨宿りをする場所を探しました。
ですが、彼らを招き入れてくれる場所はどこにもありません。
二人は仕方なく、寂れた公園の───
コン。
…そう。このような、遊具の中に逃げ込みました。
二人きりの狭い遊具の内。
触れた肩から伝わる熱。
聴こえるのは、荒い息遣いとコンクリートを打つ雨音だけ。
しかし、男は気付いてしまいました。
男にだけ聴こえる、身体の内側を、叩くような、音に。
それに気付いてしまった男は、ゆっくり。
ゆっくりと、少女の方を振り返りました。
───そして男は。
ごくり。思わず唾をのむ。
だが、焦らすように四ッ谷は続きを語らない。
「せんぱい」
思わず声をかける。
怪談は、怖い話は嫌いだけど、オチのない怖い話はもっと嫌いだ。
想像が掻き立てられ、恐ろしい結末が次々と浮かんでしまう。
「先輩」
「ん…なんだァ?」
「はやく、つづき、を」
何故だか鼓動が速い。
始めは、先輩の口から語られる怪談のせいかと思った。
だが落ち着いて考えている間に、それは違うのだと知った。
「男は」
右指に触れる左指。
顎を撫でる右指。
足の間に入り込んでいる胴体。
そして、目前にいる四ッ谷。
「せ、先輩っ!!」
「男は」
“男”から“オス”へと豹変したのでした…
end.
遊具の中で雨宿り。
公園の、こうやって中に入れる遊具の天井って落書きだらけですよね。
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