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LGで秋直小説です。
クリスマスですね。
どうにかクリスマス当日に上げることが出来てよかったです。
LG/秋直(恋人未満)
クリスマスですね。
どうにかクリスマス当日に上げることが出来てよかったです。
LG/秋直(恋人未満)
商店街を飾る、ディープグリーンとワインレッド。
きらり輝くニセモノの星々は、夕暮れの空に輝いては消える。
そして、今日もまた「あぁ、もうすぐクリスマスだな」と思うのであった。
ふと隣を歩く少女が足を止め、空を見上げた。
「もうすぐ、クリスマスですね」
瞳に映る、大きな大きなクリスマスツリー。
点いては消える灯火が、彼女の瞳の中を泳いだ。
その目から逸らせなくなる前に、ツリーに目を向ける。
商店街の飾り付けは、大都会で見るLED電球の集まりとはかけ離れたもの。
けれどそれは、幼少時に飾り付けをしたツリーとどこか重なり。
次々と思い出す思い出に、見ていて飽きは来なかった。
「サンタさんはいるんでしょうか」
しばらく続いた沈黙を破る声。
その言葉には思わず耳を疑い、振り向いてしまった。
…まさか。まさか、な。
「さ、サンタ…さん、にプレゼント頼んだの?」
サンタさんってなんだ。
自分の口から出てきた“さん”付けのサンタクロース。
三十路間近の独身男である俺にとって、それは恥ずかしい言葉でしかない。
「はい。ダメ元ですが…」
「…そう、か」
子供の夢は壊してはならない。
実在したとしてもしないとしても、ここは何となくスルーするしかない。
早速話を逸らそうと、粒餡派かこし餡派かの話をしようとする。
が、一足先に直の口が開いてしまった。
「…サンタさんはいるんでしょうか」
二度目に聴いたその言葉はあまりにも切なくて。
その横顔があまりにも寂しそうで。
俺はその日、“サンタさん”になることを決めた。
そしてクリスマス当日。
日も暮れて夕食の匂いが町内を漂い出す時刻。
ドアベルの音に、直はエプロンで手を拭きながら玄関へと駆けた。
「どちらさまですかー?」
ドアを開ける。
すると直は、元から丸い瞳をさらに丸くさせて見開いた。
驚きのあまり、開いた口が閉じない。
それでもどうにか口を動かし、声を出した。
「どちらさま、でしょうか」
黒目がちな瞳に映るのは、赤い服に白い髭を蓄えた。
この時期大量発生する、俗に言うサンタクロースだった。
「…サンタクロースだ」
「あ、秋山さん」
聞き覚えのある声に、正体はすぐに分かった。
だが、サンタクロース兼秋山は少し慌てた様子で否定する。
「ちがう。サンタクロースだ」
「秋山さんでしょ」
よくよく見れば一目でわかる。
モデルのように高い背も、栄養不足と疑われる細さも。
赤い帽子から覗く栗色も、白い髭に隠れた陶磁器のような肌も。
私を見守る優しい瞳も。
それは見間違えることはない。
秋山さんのものだった。
それにしても。
…どうしてこんな格好をしているのでしょう。
不思議に思いながら見つめていると、階段の下から人間のざわめき。
「ままー、サンタさんがいるよー」
声がした方へ目を向けると、そこには母親と息子の姿。
きらきら瞳を輝かせる息子とは逆に、母親の眼差しは冷めたもの。
ほっておいたら赤いランプにパンダみたいなお顔の車を呼ばれそう。
珍しく冷静に考え、大人しく玄関のドアを開ける。
「…とにかく、中に入って下さい」
「お邪魔します」
浅く一礼を交わし、中に招き入れようとする。
「しまった」
だが、サンタさん十八番のパンパンに膨れた白い袋が玄関にて突っかかってしまった。
壁と秋山の間を潜り抜けた直は、秋山の後ろに回りその袋を押した。
こんなにも何が入っているのであろう。
とても気になった。
けれど、とにかく今は玄関に詰まったコレをどうにかしなくちゃ。
「すまないな」
「いえいえ。秋山さんにはいつもお世話になっていますからね」
「…だから、俺は」
「秋山さんでしょ」
こういうのを、苦虫を噛んだような顔と言うのだろう。
悔しそうな、気まずそうな表情の秋山。
とりあえず秋山の手を引き、部屋の奥へと招き入れた。
しまった、な。
彼女があんなことを言うから、てっきり信じているのかと思っていたが。
それじゃあ、こんな格好してきた俺ってなに。恥ずかしいだけかよ。
想像していたより喜ばれなくて。
どちらかと言えば苦笑いを浮かべられてしまって。
恥やら後悔やら。次々と襲ってくる何かに、頭は下がるばかり。
そんな秋山を知ってか知らずか。
前を歩く直が口を開けた。
「秋山さんがこうやって来てくれて、とっても嬉しいです」
暗い廊下を抜けた先。
明るいリビングが二人を迎え入れる。
そして止まる、直の足。
「でも、さすがにサンタさんがいないことくらい知っています」
「じゃあどうして、この間は」
“サンタさんはいるんでしょうか”って言ったの?
尋ねるより先に、直が口を開く。
「でも、夢があるかなぁって」
キラキラした瞳で語る姿は、凛々しくけれど子供のようで。
理由は分からないが、恥やら後悔やらはどこかへ行き。
やっぱり彼女の言うサンタさんになりたいと思った。
「君は、何がほしい?」
肩から白い布袋をおろす。
中で様々なものがぶつかり合い、おもちゃ箱のような音がした。
「君が好きそうなものを、色々買ってきた」
「それ…全部私のために!?」
驚いたように目を丸くさせ、こちらを見上げてくる直。
“悪い”という思いもあるが、それ以上に胸が高鳴っているのだろう。
きらきらした瞳は、ちらちらと布袋の方へと視線を向けていた。
「…それで、何がほしいの」
うさぎのぬいぐるみ。
春のようなブランケット。
遠い国のマグカップ。
彼女には少し早い、大人っぽいアクセサリー。
ほかにも、まだまだたくさん。
私生活ではあまり会うことはないけれど、俺の知る彼女が好きそうなものたち。
「うーん…」
迷うように人差し指を上と下の唇で挟む。
「あ」と小さく声を上げ、桜色の唇から指が離れた。
「私は」
秋山さんがほしいです。
end.
秋山は直ちゃんのためになんでもしちゃったら良い。
きらり輝くニセモノの星々は、夕暮れの空に輝いては消える。
そして、今日もまた「あぁ、もうすぐクリスマスだな」と思うのであった。
ふと隣を歩く少女が足を止め、空を見上げた。
「もうすぐ、クリスマスですね」
瞳に映る、大きな大きなクリスマスツリー。
点いては消える灯火が、彼女の瞳の中を泳いだ。
その目から逸らせなくなる前に、ツリーに目を向ける。
商店街の飾り付けは、大都会で見るLED電球の集まりとはかけ離れたもの。
けれどそれは、幼少時に飾り付けをしたツリーとどこか重なり。
次々と思い出す思い出に、見ていて飽きは来なかった。
「サンタさんはいるんでしょうか」
しばらく続いた沈黙を破る声。
その言葉には思わず耳を疑い、振り向いてしまった。
…まさか。まさか、な。
「さ、サンタ…さん、にプレゼント頼んだの?」
サンタさんってなんだ。
自分の口から出てきた“さん”付けのサンタクロース。
三十路間近の独身男である俺にとって、それは恥ずかしい言葉でしかない。
「はい。ダメ元ですが…」
「…そう、か」
子供の夢は壊してはならない。
実在したとしてもしないとしても、ここは何となくスルーするしかない。
早速話を逸らそうと、粒餡派かこし餡派かの話をしようとする。
が、一足先に直の口が開いてしまった。
「…サンタさんはいるんでしょうか」
二度目に聴いたその言葉はあまりにも切なくて。
その横顔があまりにも寂しそうで。
俺はその日、“サンタさん”になることを決めた。
そしてクリスマス当日。
日も暮れて夕食の匂いが町内を漂い出す時刻。
ドアベルの音に、直はエプロンで手を拭きながら玄関へと駆けた。
「どちらさまですかー?」
ドアを開ける。
すると直は、元から丸い瞳をさらに丸くさせて見開いた。
驚きのあまり、開いた口が閉じない。
それでもどうにか口を動かし、声を出した。
「どちらさま、でしょうか」
黒目がちな瞳に映るのは、赤い服に白い髭を蓄えた。
この時期大量発生する、俗に言うサンタクロースだった。
「…サンタクロースだ」
「あ、秋山さん」
聞き覚えのある声に、正体はすぐに分かった。
だが、サンタクロース兼秋山は少し慌てた様子で否定する。
「ちがう。サンタクロースだ」
「秋山さんでしょ」
よくよく見れば一目でわかる。
モデルのように高い背も、栄養不足と疑われる細さも。
赤い帽子から覗く栗色も、白い髭に隠れた陶磁器のような肌も。
私を見守る優しい瞳も。
それは見間違えることはない。
秋山さんのものだった。
それにしても。
…どうしてこんな格好をしているのでしょう。
不思議に思いながら見つめていると、階段の下から人間のざわめき。
「ままー、サンタさんがいるよー」
声がした方へ目を向けると、そこには母親と息子の姿。
きらきら瞳を輝かせる息子とは逆に、母親の眼差しは冷めたもの。
ほっておいたら赤いランプにパンダみたいなお顔の車を呼ばれそう。
珍しく冷静に考え、大人しく玄関のドアを開ける。
「…とにかく、中に入って下さい」
「お邪魔します」
浅く一礼を交わし、中に招き入れようとする。
「しまった」
だが、サンタさん十八番のパンパンに膨れた白い袋が玄関にて突っかかってしまった。
壁と秋山の間を潜り抜けた直は、秋山の後ろに回りその袋を押した。
こんなにも何が入っているのであろう。
とても気になった。
けれど、とにかく今は玄関に詰まったコレをどうにかしなくちゃ。
「すまないな」
「いえいえ。秋山さんにはいつもお世話になっていますからね」
「…だから、俺は」
「秋山さんでしょ」
こういうのを、苦虫を噛んだような顔と言うのだろう。
悔しそうな、気まずそうな表情の秋山。
とりあえず秋山の手を引き、部屋の奥へと招き入れた。
しまった、な。
彼女があんなことを言うから、てっきり信じているのかと思っていたが。
それじゃあ、こんな格好してきた俺ってなに。恥ずかしいだけかよ。
想像していたより喜ばれなくて。
どちらかと言えば苦笑いを浮かべられてしまって。
恥やら後悔やら。次々と襲ってくる何かに、頭は下がるばかり。
そんな秋山を知ってか知らずか。
前を歩く直が口を開けた。
「秋山さんがこうやって来てくれて、とっても嬉しいです」
暗い廊下を抜けた先。
明るいリビングが二人を迎え入れる。
そして止まる、直の足。
「でも、さすがにサンタさんがいないことくらい知っています」
「じゃあどうして、この間は」
“サンタさんはいるんでしょうか”って言ったの?
尋ねるより先に、直が口を開く。
「でも、夢があるかなぁって」
キラキラした瞳で語る姿は、凛々しくけれど子供のようで。
理由は分からないが、恥やら後悔やらはどこかへ行き。
やっぱり彼女の言うサンタさんになりたいと思った。
「君は、何がほしい?」
肩から白い布袋をおろす。
中で様々なものがぶつかり合い、おもちゃ箱のような音がした。
「君が好きそうなものを、色々買ってきた」
「それ…全部私のために!?」
驚いたように目を丸くさせ、こちらを見上げてくる直。
“悪い”という思いもあるが、それ以上に胸が高鳴っているのだろう。
きらきらした瞳は、ちらちらと布袋の方へと視線を向けていた。
「…それで、何がほしいの」
うさぎのぬいぐるみ。
春のようなブランケット。
遠い国のマグカップ。
彼女には少し早い、大人っぽいアクセサリー。
ほかにも、まだまだたくさん。
私生活ではあまり会うことはないけれど、俺の知る彼女が好きそうなものたち。
「うーん…」
迷うように人差し指を上と下の唇で挟む。
「あ」と小さく声を上げ、桜色の唇から指が離れた。
「私は」
秋山さんがほしいです。
end.
秋山は直ちゃんのためになんでもしちゃったら良い。
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