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八雲で八晴です。
さて、今年も残りあと数時間。
最後の最後でぐだぐだしたお話をお楽しみください!
八雲/八晴(恋人未満)
さて、今年も残りあと数時間。
最後の最後でぐだぐだしたお話をお楽しみください!
八雲/八晴(恋人未満)
「八雲くん、これテーブルに運んでくれる?」
「…あぁ」
台所で過ぎるのどかな時間。
ベビーピンクのエプロンを纏う晴香は、どこか楽しそう。
本人は自覚していないだろうが、口の端が上がりっぱなしで。
───その姿も笑顔も、僕しか見ることのできない特権だ。
12月31日、年の終わりである大晦日。
この特別な日に、八雲は晴香に家にいた。
「12月31日って…空いてる?」
いつものように本を読んでいるとき。
顔色を窺うように聞いてきたのは晴香だった。
「31日か…」
思い出すでもない。
親しい友人がいるわけでもなく、ましてや恋人がいるわけでもない。
家族は…あの家に、水を差すようなことはしたくはない。
「空いてはいるが…なんだ?」
あくまで視線は紙の上の文字羅列。
この問いかけ。
なんとなく先が読め、鼓動が速くなったような気がした。
「じ、じゃあ…!」
乗り出す身体。
机の上に置かれたペットボトルが、音を立て転がり落ちた。
「12月31日、私の家に来ない…?」
と言うのが今までの流れ。
断る理由もなく、むしろ願ったり叶ったりな訳で。
しぶしぶを装い、八雲は承諾したのであった。
胸の内でガッツポーズする自分がいたのは、誰にも秘密だ。
サラダの乗った皿をテーブルに置き、一息つく。
そして、台所でからあげを揚げる晴香の姿を盗み見た。
僕は彼女が好きだ。
呪われた僕が恋なんて許されないことは知っている。
止めようにも、この思いが留まることはなく。
好きだと言う気持ちが、晴香の存在が、僕の中で大きくなっていた。
「八雲くーん!お醤油切れちゃったから買ってってくれる…?」
「…わかった」
恋は盲目。
扱き使われている八雲が、この言葉の意味を知るのはまだまだ先のこと…
「一緒に、カウントダウンしようねっ」
そう、約束したのはいつのことだったか。
軽い夕食を食べ終えた晴香が一升瓶を片手にきたときは、さすがにヤバいと思った。
大晦日なんだから、せめてワインとかシャンパンとか。
おしゃれなものにすれば良いのに、何故そこで日本酒なんだ。
言いたいことは沢山あった。止めようとした。
だが「大丈夫大丈夫」の一点張りに、引いてしまったのが別れ目。
「んぅー…」
「………」
現在、一升瓶を抱えて眠る晴香に僕は何も出来ないでいた。
桃色に火照った頬に警戒心ゼロの幸せそうな笑顔。
はだけたパジャマから覗く、白くて柔らかそうな胸元。
薄い布越しに分かる、形の良い尻。
そして…
「…ん」
呼吸の合間に漏れる、悩ましい声。
見れば見るほどに心は奪われ、湧き上がるは下心。
彼女の勧めで酒でも飲んでいたら、襲わないでいられただろうか。
胸を張って言おう。襲わなかった自信はない。
だが、酒を飲まなかった今。
この状態はただの生殺しでしかなかった。
「くそっ…」
下着をつけていないのか、寝返りを打つ度に揺れる胸元。
クッションを抱え、顔を埋める。
頬を押す綿の柔らかさ。
悔しさから顔を埋めたというのに、晴香の胸をつい想像してしまう。
「C…」
あのときは流してしまったが、どれくらいの大きさなのだろうか。
どれくらい、柔らかいのだろうか。
知らぬ間にクッションを揉む右手を、思わず嫌悪してしまった。
「あぁ、もう」
頭の中は「どうしよう」でいっぱい。
耳に届くバラエティー番組の笑い声が、酷く憎く思えた。
ふとテレビに目を向けると、年が変わるまであと数分だということに気付く。
…もうそんな時間か。
時間も忘れ、随分と悩んでしまったらしい。
「…もうすぐカウントダウンだぞ」
「…んー」
肩を揺らす。
視線は晴香の胸元へ行ってしまう。
慌てて剥がし、顔を覗き込んだ。
「…おい」
頬をペチペチ叩くと、これにはさすがの晴香も怒り手を振り下ろしてきた。
脳天に弱々しいチョップが決まる。
「…いい加減に」
「やだぁー、八雲くんがぎゅーってしてくれないと起きないー!」
しろよ。と言おうとした口が塞がらない。
「は?」
やっと出てきた言葉は、間の抜けたものだった。
「だーかーら、八雲君がぎゅーってしてくれないと起きたくなーい!」
起きたかと思えばコレ。
コイツは、完全に酔っぱらっている…
求めるように両手をいっぱいいっぱい伸ばしてくる。
「ぎゅーってな…」
こっちは色々と限界が近いんだ。
そんな状態で“ぎゅー”なんて出来るわけがないだろ。
言いたいのは山々だが、内容が内容なだけに胸の内で消えてしまった。
晴香はというと両手を差し出した状態のまま。
仕方ないと髪を掻き、床に膝をついた。
四肢で晴香を閉じこめるように手も突く。
…別にへんなことをしようとしている訳じゃない。
ただ純粋に、彼女を起こそうとしているだけだ。…多分。
それでも最後の一歩が踏み出せず、八雲は肩を落とした。
僕はいつから、こんなヘタレになったんだ。
仕方ないと晴香の背に腕を回し起こそうとする。
このときも極力胸に当たらないようにとしている自分にため息が出た。
そんな、一瞬の出来事であった。
「っ!」
「えっへっへ、つーかまえたっ!」
真っ暗になる目前。
何が起きたのだ。何が、どうなったのだ。
頭上から聞こえる晴香の鼻歌。
顔面に触れる、否押し付けられているそれは良い匂いがして、柔らかくて…
「おっ、おい!」
さっきまでの下心はどこへやら。
思わず上げた裏返った声に、正直呆れた。
「やん、くすぐったいー」
擽ったそうに身を捩るも、晴香の腕の力は増すばかり。
そっちが押し付けてきているんだろ!
叫びたいのは山々。けれど口からはモゴモゴとしかしか出てこなかった。
「八雲くん、あったかいね」
耳元に触れる吐息。
それに一々反応してしまう自分が情けなかった。
コイツが酔ってなければ。
僕の方が有利な立場ならば。
このときが、どれだけ至福の時だったんだろう。
段々と呂律が回らなくなる晴香。
やけに静かになったと思い、ちらりと顔を上げた。
晴香の胸越しに見えるのは、気持ちよさそうに目を閉じる晴香。
「寝た、のか…?」
天使のようなその寝顔に、先ほどまでの悪態は見えない。
トクントクンと緩く動く鼓動に、自らのそれも同調していった。
酒臭さの中に、確かにある彼女の甘い匂い。
それを肺一杯吸い込み、顔を埋めた。
「…良いお年を」
その年。僕が、彼女の胸元で年を越したことは誰も知らない。
end.
今年最後のお話がこれって…orz
真面目にやろうとするとふざけちゃう人間なのです。
ふざけちゃうときは、もっとふざけちゃって怒られる人間なのです。
一年間お世話になった皆さまに感謝の気持ちを込めて。
良いお年を!
「…あぁ」
台所で過ぎるのどかな時間。
ベビーピンクのエプロンを纏う晴香は、どこか楽しそう。
本人は自覚していないだろうが、口の端が上がりっぱなしで。
───その姿も笑顔も、僕しか見ることのできない特権だ。
12月31日、年の終わりである大晦日。
この特別な日に、八雲は晴香に家にいた。
「12月31日って…空いてる?」
いつものように本を読んでいるとき。
顔色を窺うように聞いてきたのは晴香だった。
「31日か…」
思い出すでもない。
親しい友人がいるわけでもなく、ましてや恋人がいるわけでもない。
家族は…あの家に、水を差すようなことはしたくはない。
「空いてはいるが…なんだ?」
あくまで視線は紙の上の文字羅列。
この問いかけ。
なんとなく先が読め、鼓動が速くなったような気がした。
「じ、じゃあ…!」
乗り出す身体。
机の上に置かれたペットボトルが、音を立て転がり落ちた。
「12月31日、私の家に来ない…?」
と言うのが今までの流れ。
断る理由もなく、むしろ願ったり叶ったりな訳で。
しぶしぶを装い、八雲は承諾したのであった。
胸の内でガッツポーズする自分がいたのは、誰にも秘密だ。
サラダの乗った皿をテーブルに置き、一息つく。
そして、台所でからあげを揚げる晴香の姿を盗み見た。
僕は彼女が好きだ。
呪われた僕が恋なんて許されないことは知っている。
止めようにも、この思いが留まることはなく。
好きだと言う気持ちが、晴香の存在が、僕の中で大きくなっていた。
「八雲くーん!お醤油切れちゃったから買ってってくれる…?」
「…わかった」
恋は盲目。
扱き使われている八雲が、この言葉の意味を知るのはまだまだ先のこと…
「一緒に、カウントダウンしようねっ」
そう、約束したのはいつのことだったか。
軽い夕食を食べ終えた晴香が一升瓶を片手にきたときは、さすがにヤバいと思った。
大晦日なんだから、せめてワインとかシャンパンとか。
おしゃれなものにすれば良いのに、何故そこで日本酒なんだ。
言いたいことは沢山あった。止めようとした。
だが「大丈夫大丈夫」の一点張りに、引いてしまったのが別れ目。
「んぅー…」
「………」
現在、一升瓶を抱えて眠る晴香に僕は何も出来ないでいた。
桃色に火照った頬に警戒心ゼロの幸せそうな笑顔。
はだけたパジャマから覗く、白くて柔らかそうな胸元。
薄い布越しに分かる、形の良い尻。
そして…
「…ん」
呼吸の合間に漏れる、悩ましい声。
見れば見るほどに心は奪われ、湧き上がるは下心。
彼女の勧めで酒でも飲んでいたら、襲わないでいられただろうか。
胸を張って言おう。襲わなかった自信はない。
だが、酒を飲まなかった今。
この状態はただの生殺しでしかなかった。
「くそっ…」
下着をつけていないのか、寝返りを打つ度に揺れる胸元。
クッションを抱え、顔を埋める。
頬を押す綿の柔らかさ。
悔しさから顔を埋めたというのに、晴香の胸をつい想像してしまう。
「C…」
あのときは流してしまったが、どれくらいの大きさなのだろうか。
どれくらい、柔らかいのだろうか。
知らぬ間にクッションを揉む右手を、思わず嫌悪してしまった。
「あぁ、もう」
頭の中は「どうしよう」でいっぱい。
耳に届くバラエティー番組の笑い声が、酷く憎く思えた。
ふとテレビに目を向けると、年が変わるまであと数分だということに気付く。
…もうそんな時間か。
時間も忘れ、随分と悩んでしまったらしい。
「…もうすぐカウントダウンだぞ」
「…んー」
肩を揺らす。
視線は晴香の胸元へ行ってしまう。
慌てて剥がし、顔を覗き込んだ。
「…おい」
頬をペチペチ叩くと、これにはさすがの晴香も怒り手を振り下ろしてきた。
脳天に弱々しいチョップが決まる。
「…いい加減に」
「やだぁー、八雲くんがぎゅーってしてくれないと起きないー!」
しろよ。と言おうとした口が塞がらない。
「は?」
やっと出てきた言葉は、間の抜けたものだった。
「だーかーら、八雲君がぎゅーってしてくれないと起きたくなーい!」
起きたかと思えばコレ。
コイツは、完全に酔っぱらっている…
求めるように両手をいっぱいいっぱい伸ばしてくる。
「ぎゅーってな…」
こっちは色々と限界が近いんだ。
そんな状態で“ぎゅー”なんて出来るわけがないだろ。
言いたいのは山々だが、内容が内容なだけに胸の内で消えてしまった。
晴香はというと両手を差し出した状態のまま。
仕方ないと髪を掻き、床に膝をついた。
四肢で晴香を閉じこめるように手も突く。
…別にへんなことをしようとしている訳じゃない。
ただ純粋に、彼女を起こそうとしているだけだ。…多分。
それでも最後の一歩が踏み出せず、八雲は肩を落とした。
僕はいつから、こんなヘタレになったんだ。
仕方ないと晴香の背に腕を回し起こそうとする。
このときも極力胸に当たらないようにとしている自分にため息が出た。
そんな、一瞬の出来事であった。
「っ!」
「えっへっへ、つーかまえたっ!」
真っ暗になる目前。
何が起きたのだ。何が、どうなったのだ。
頭上から聞こえる晴香の鼻歌。
顔面に触れる、否押し付けられているそれは良い匂いがして、柔らかくて…
「おっ、おい!」
さっきまでの下心はどこへやら。
思わず上げた裏返った声に、正直呆れた。
「やん、くすぐったいー」
擽ったそうに身を捩るも、晴香の腕の力は増すばかり。
そっちが押し付けてきているんだろ!
叫びたいのは山々。けれど口からはモゴモゴとしかしか出てこなかった。
「八雲くん、あったかいね」
耳元に触れる吐息。
それに一々反応してしまう自分が情けなかった。
コイツが酔ってなければ。
僕の方が有利な立場ならば。
このときが、どれだけ至福の時だったんだろう。
段々と呂律が回らなくなる晴香。
やけに静かになったと思い、ちらりと顔を上げた。
晴香の胸越しに見えるのは、気持ちよさそうに目を閉じる晴香。
「寝た、のか…?」
天使のようなその寝顔に、先ほどまでの悪態は見えない。
トクントクンと緩く動く鼓動に、自らのそれも同調していった。
酒臭さの中に、確かにある彼女の甘い匂い。
それを肺一杯吸い込み、顔を埋めた。
「…良いお年を」
その年。僕が、彼女の胸元で年を越したことは誰も知らない。
end.
今年最後のお話がこれって…orz
真面目にやろうとするとふざけちゃう人間なのです。
ふざけちゃうときは、もっとふざけちゃって怒られる人間なのです。
一年間お世話になった皆さまに感謝の気持ちを込めて。
良いお年を!
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