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八雲で八晴です。そして昨日のつづき。

あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします…!
そして、年始早々ぐだぐだしちゃいました…!


八雲/八晴(恋人未満)

───眩しい。



瞼の裏から光が射し込んでくる。

血塗られたように赤い視界を解くために、晴香は重い瞼を持ち上げた。






目を擦りながら焦点を会わせると、電球とご対面。

白い蛍光灯は、朝日に負けながらも己を主張していた。
…どうやら付けっ放しで寝てしまったよう。



やっちゃったなぁと少しの反省をしながら、大きな欠伸を一つ。
大きく息を吸った鼻が、独特の匂いを拾った。

なんだろうと不思議に思い、目を横に向ける。
するとそこには、一升瓶がごろりと転がっていた。


あぁ、そういえば昨夜はコレを飲んだんだっけ。

誰と?何故?

疑問は確かに浮かんだ。
けれど脳を叩くような痛みに負け、晴香は考えるのを放棄してしまう。


「うぅー…」


一度自覚してしまえば、気付かなかったことには出来ない。

頭に脳に、身体に響く鈍痛。
視界が回る。
吐き気もする。


とにかく呼吸だけでも落ち着かせようと、晴香は胸元に手を置いた。



…正確には、置こうとした。



「?」

手のひらは胸に届く前にボサボサの、毛玉のような塊にぶつかった。
なんだろうと思いながらも深くは考えず、それを撫でてみる。

正体は分からない。
わからないけれど、それが暖かいものだと言うことはわかった。

宙を見上げながら、早朝の肌寒さに暖を求め、正体不明のそれを引き寄せた。


「…っ」


突如聞こえる唸り声。
思わず目を見開くが、睡魔に襲われる瞼は下がる一方。

まぁいいか。なんてのんきに、もう一度それを抱きしめた。


「うっ」

「………」


今度はしかと聞こえた。

しかもすごい近く。

そう、胸元の辺りで…



「………」



嫌な予感は当たるもの。

恐る恐る下ろした視線の先に見えたものに、晴香は絶句した。



「……やっと、起きたな」


「きゃあああっ!!」


絶たれた声はどこへやら。
一度戻った声は、普段の叫び声の何十倍にも響いた。



それを胸元で聞きながら、耳を塞ぐ八雲はうるさいと言いたげ。


うるさいのは認めよう。

だが、それよりもまず…


「どうして八雲くんがここにいるの!?」


どうして私の部屋にいるの。

どうして私の…胸元にいるの。


頭痛の酷い頭に、大声はガンガンと響いた。
くらくらする視界の中、どうにか八雲を見下ろす。

「覚えてないのか?」

上目遣いに見上げてくる八雲に、自然と鼓動は速まる。

「…昨日の君は最悪だった」

鼓動、聞こえないかな。
なんて心配をするのをよそに、八雲は淡々と話し出す。

「君は酔っ払った挙げ句、僕を抱き締めたまま眠りについたんだ」

一行で終わる説明。
それだけでも、心を落ち着かせるには充分だった。

そこで、未だに八雲を抱き締めていることに気付き慌てて離す。

「ご、ごめんなさい…」

けれど八雲が離れていくことはない。
床の上、晴香の胸元に顔を埋めたまま固まったままだ。

「どうしたの…?」

恥ずかしい気持ちでいっぱいだけど、精一杯の平常心を装う。
アルコールが抜け切れていないのか、顔が燃えるように熱い。

八雲は最後までこちらに目を向けず、こう言った。


「柔らかいんだな」

「えっ」

はじめは何のことだか理解出来なかった。
が、理解してからは酷かった。

自分でもよく覚えてはいないが、正気を取り戻したとき。
八雲に何故か正座で「ごめんなさい」と謝られていた。

「どうして八雲くんがここにいるの?」

「今日は何月何日だ」

赤く腫れた頬を撫でながら、訪ねる八雲。

何を言っているのだろうと思いながら「12月」と言い掛けて止まる。
壁に掛けた2010年度カレンダーに、今日はない。


「1月1日…」

そうだ、すべて思い出した。

一人で年を越して数年。
八雲と出会ってまた数年。

一人で年を越すのも、一人で年を越す八雲を見るのも辛く。
一緒に年を越そうと思って、家に誘ったんだった。

その内に、友達以上恋人未満の関係が進むことを期待して。



「その顔だと思い出したみたいだな」

「ご、ごめんなさい…」

「わかれば良いんだ」

「…だからと言って、胸を揉んでいいわけじゃないと思うんだけど」

八雲の言い方にカチンとし、思わず顔を上げて噛みつく。

「っ……君は」

何かを言いたそうにしているが、口は酸素不足の金魚のよう。
しばらく開いたり閉じたりしていたが、悔しそうに一文字に結ばれた。

「……言っておくが、僕は揉んでない」

「一晩、人の胸に顔埋めてたのはどこの誰よ」

「あれは不可抗力だっ!」

声を大々にして言う八雲の顔は、新年早々真っ赤に染まっていた。

「それに」

それだけ言うと再び黙り込んでしまう。
諭すように見つめていると、諦めたのか小さな声でこう言った。



「一晩中、堪えた僕の身にもなれ」

鼻の下を掻く姿は純情な少年のよう。
あの皮肉屋で、人を寄せ付けない奴がこんな表情を持っているだなんて。

「…触ろうにも、触れなかったんだぞ」

「八雲くん」

床に手をつき乗り出す。
ほんの少しだけ、八雲が逃げるように仰け反った。


「八雲くんって今流行りのヘタレ?」

露骨に嫌な顔をされる。
まぁ“ヘタレ”と言われて喜ぶ人間なんて滅多にいないのだろうけれど。


「君を、傷つけたくなかった」

真面目な顔をして告白されるが、やっぱり笑ってしまう。

「そういうのをヘタレって言うんだよ」

八雲には睨まれたが、口から漏れる笑い声が途切れることはなかった。






「じゃあ、触らせろ」

「へ?」

腹を抱える晴香は、八雲の言葉に思わず耳を疑った。
顔を上げると、すぐそこまで八雲が迫っているところだった。

「ちょ、ちょっと待って…!」

「一晩君に付き合ってやったんだから、交代だ」


ニヤリとつり上がる口元。

怪しく、卑しく動く指。



「限界が近いんだから、大人しく触られてろ」


なんて命令だ!

だが晴香に、自棄になっている八雲を止められるはずもなく。


新年早々、新たな八雲を見た。






end.



新年早々ぐだぐた。

これは、今年はぐだぐだな一年だよってことなんだろうか…
いや、今年も、か。

なにはともあれ、今年も一年よろしくお願いします!
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