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八雲で高校生パロディ、高校生日記です。
学生限定、制服デートのお話。
ちょっとでも関係を進めようとしましたが、やっぱり恋人未満。
八雲/高校生日記 35話
学生限定、制服デートのお話。
ちょっとでも関係を進めようとしましたが、やっぱり恋人未満。
八雲/高校生日記 35話
「………」
八雲はしかめっ面で店先に立つ看板を眺めた。
「一度でいいから八雲君と行ってみたかったんだ」
カラオケ!
立ち止まる八雲のことなど知らずと言った様子で、晴香は手を引く。
「待て、歌える曲なんて僕には」
「お願い!全部私が出すから…」
「……そうじゃなくて、僕といっても楽しくないぞ」
「私はそれでも、ううん、八雲君と一緒にいれたらそれだけで嬉しいよ」
さすがに異性にそこまで言われて断れる男なんていない。
八雲は、晴香に引きずられるようにして店内に入った。
なぜ、こんなことをしているのか。
それは数十分前まで遡る────
午後12時過ぎ。
試験も終わり午前中に帰宅することができた平日。
それなのに、晴香の顔は浮かない。
三つ目の曲がり角で友達と別れた晴香は、歩きながら鞄を漁っていた。
「やっぱりないなぁ…」
鍵がない。
今日は一心さんが留守にしているため、鍵を渡されていた。
鍵をなくしたというのに落ち着いているのは、鍵の居場所に心覚えがあるから。
多分、昨日渡されてから机の上に置きっぱなしである。
「まぁ、八雲君もいるだろうし大丈夫だよね」
そう言うとファスナーを閉め、寺の参道を駆け足で上がっていった。
「………」
玄関の前に着くとそこにはすでに八雲がいた。
壁に寄りかかって座り、こちらを睨むように見上げている。
「や、やぁ!」
八雲がわざわざ帰りを待ってくれている訳がない。
「そんなところでどうしたの?」
嫌な予感がしながらも、晴香は訪ねることにした。
案の定、八雲は言いにくそうに髪を掻く。
「もしかして…鍵、忘れたの?」
恐る恐る晴香が聞くと、八雲はあっさり頷いた。
あの八雲がまさかこんな失態を起こすとは。
人の失敗を笑うのは失礼なのは承知。
けれど晴香は堪えきれず、思わず声に出して笑ってしまった。
「…いいから早く開けろ」
八雲はそっぽを向き、後ろ手で薄い引き戸を叩いた。
「残念。私も忘れちゃったの」
「…君は本当に役立たずだな」
「それはお互い様ですぅーっ」
いーっだ!
「それより困ったな」
「……何が?」
気持ち悪い顔をするな。
くらいの返事がくるのを期待していたが、何も反応してくれずつまらない。
晴香はちょっとだけ口をへの字に歪めた。
「家に入れない」
「窓とか…縁側とか、開いてないの?」
「こんなときに限って締めていきやがった」
そう言うと八雲は戸に深く寄りかかる。
固く結われた口が学ランの襟に隠れてしまった。
そんな学ラン姿の八雲を見ていて、晴香はいいことを思い付いた。
「じゃあさ、じゃあさ!」
思わず上がる口角。
八雲を振り返ると、苦虫を噛んだような表情で晴香を見ていた。
「…何よその顔は」
「その気持ち悪い顔は、嫌な予感がする」
「ちょっと、気持ち悪いってねぇ…!」
きゃんきゃん吠える晴香に対し、八雲は無表情で耳を塞ぐ。
八雲が大きな欠伸をしてやっと、晴香は黙り込んだ。
やっぱり、八雲君が私の話を真面目に聴いてくれるわけが…
「……で、いいことって何だ?」
とっさに顔を上げるとそっぽを向きながらも、聴く姿勢でいてくれる八雲がいた。
八雲の言葉に感動し、思わず涙がぽろり。
ごしごしと目元を袖で擦り、晴香はニコリと笑った。
「制服デート、しようよ!」
八雲は思わず噴き出しそうになった。
バクバクと心臓が騒ぎ、呼吸が苦しくなるのをそれのせいにし晴香を見上げる。
「せ、せいふくでーと…?」
征服?清福?
変換間違いだったとしても、後ろについたデートは変わらないだろう…
「あ、デートって言っても町にお出かけするだけだからねっ!」
勘違いしないでよね!
必死になって弁解する晴香の顔はリンゴのように赤く染まっていた。
「そういうことか」
理解してほっとする反面、残念がる自分もいて口元隠すように顎を撫でる。
このまま心臓が落ち着くまで待とうとしたが、晴香の視線が痛く顔を上げた。
言葉通りモジモジと身体を捻りながら、小首を傾げる。
「そ、それで……どう、かな…?」
下から見ていると言うのに、上目遣いに見えるその瞳に再び心臓が暴れる。
「生憎、暇で暇で仕方ない」
ちらりと盗み見ると明らかに緊張した趣の晴香がスカートを握りしめていた。
「……付き合ってやる」
髪を掻き回しながら立ち上がった八雲に、晴香は思わず飛びついてしまった。
そして現在に至る。
八雲としてはデートと言うからには、公園で散歩をしたり。
カフェでお茶したり、映画を見たりするのかと思いきや…
そのデートコースは所謂、最近の若者のデートコースで。
最近の若者に着いていけない八雲は、疲れきっていた。
だが、その合間合間に見せる晴香の笑顔が八雲の疲れを吹き飛ばしていた。
「次はどこに行こうか?」
バナナクレープを頬張りながら、晴香は指折り数える。
「カラオケ、ゲームセンター、ショッピング…」
段々とデートではなく、友達との遊び感覚になっているんじゃないか。
イチゴクレープを頬張りながら、八雲は心の中で呟いた。
「八雲君は行きたいところとかある?」
「…別に」
突然顔を覗き込まれ、とっさに横を向く。
「あっ、そうだ!」
そう言い晴香が連れてったのは、ゲームセンターだった。
何か忘れ物でもしたのかと聞くより先に、八雲はカーテンの向こうに押し込まれた。
…この機械は────
「………」
「プリクラ、撮ろっ!」
そう言うと八雲の返事も待たず、お金を入れた。
起動する機械を前に、八雲は逃げだそうとするも晴香に捕まる。
「僕はいい、遠慮する」
「えー、ここまで来たんだから良いじゃない」
「写真は嫌いなんだ!」
写真に残るのは。
自分の瞳を見るのは、嫌なんだ。
「せっかくのきれいな瞳なのに…」
「…!」
「写真に残さないのはもったいないよ!」
声を張り上げると、グーでボタンを押した。
カウントダウンを始める機械に、無理矢理正面を向かせられる。
「こうなったら意地でも撮るもん!」
「ば、ばかやめろっ!」
逃げられまいと腕に絡んできた身体に、八雲は写真のことなど忘れてしまった。
end.
続きます。
八雲はしかめっ面で店先に立つ看板を眺めた。
「一度でいいから八雲君と行ってみたかったんだ」
カラオケ!
立ち止まる八雲のことなど知らずと言った様子で、晴香は手を引く。
「待て、歌える曲なんて僕には」
「お願い!全部私が出すから…」
「……そうじゃなくて、僕といっても楽しくないぞ」
「私はそれでも、ううん、八雲君と一緒にいれたらそれだけで嬉しいよ」
さすがに異性にそこまで言われて断れる男なんていない。
八雲は、晴香に引きずられるようにして店内に入った。
なぜ、こんなことをしているのか。
それは数十分前まで遡る────
午後12時過ぎ。
試験も終わり午前中に帰宅することができた平日。
それなのに、晴香の顔は浮かない。
三つ目の曲がり角で友達と別れた晴香は、歩きながら鞄を漁っていた。
「やっぱりないなぁ…」
鍵がない。
今日は一心さんが留守にしているため、鍵を渡されていた。
鍵をなくしたというのに落ち着いているのは、鍵の居場所に心覚えがあるから。
多分、昨日渡されてから机の上に置きっぱなしである。
「まぁ、八雲君もいるだろうし大丈夫だよね」
そう言うとファスナーを閉め、寺の参道を駆け足で上がっていった。
「………」
玄関の前に着くとそこにはすでに八雲がいた。
壁に寄りかかって座り、こちらを睨むように見上げている。
「や、やぁ!」
八雲がわざわざ帰りを待ってくれている訳がない。
「そんなところでどうしたの?」
嫌な予感がしながらも、晴香は訪ねることにした。
案の定、八雲は言いにくそうに髪を掻く。
「もしかして…鍵、忘れたの?」
恐る恐る晴香が聞くと、八雲はあっさり頷いた。
あの八雲がまさかこんな失態を起こすとは。
人の失敗を笑うのは失礼なのは承知。
けれど晴香は堪えきれず、思わず声に出して笑ってしまった。
「…いいから早く開けろ」
八雲はそっぽを向き、後ろ手で薄い引き戸を叩いた。
「残念。私も忘れちゃったの」
「…君は本当に役立たずだな」
「それはお互い様ですぅーっ」
いーっだ!
「それより困ったな」
「……何が?」
気持ち悪い顔をするな。
くらいの返事がくるのを期待していたが、何も反応してくれずつまらない。
晴香はちょっとだけ口をへの字に歪めた。
「家に入れない」
「窓とか…縁側とか、開いてないの?」
「こんなときに限って締めていきやがった」
そう言うと八雲は戸に深く寄りかかる。
固く結われた口が学ランの襟に隠れてしまった。
そんな学ラン姿の八雲を見ていて、晴香はいいことを思い付いた。
「じゃあさ、じゃあさ!」
思わず上がる口角。
八雲を振り返ると、苦虫を噛んだような表情で晴香を見ていた。
「…何よその顔は」
「その気持ち悪い顔は、嫌な予感がする」
「ちょっと、気持ち悪いってねぇ…!」
きゃんきゃん吠える晴香に対し、八雲は無表情で耳を塞ぐ。
八雲が大きな欠伸をしてやっと、晴香は黙り込んだ。
やっぱり、八雲君が私の話を真面目に聴いてくれるわけが…
「……で、いいことって何だ?」
とっさに顔を上げるとそっぽを向きながらも、聴く姿勢でいてくれる八雲がいた。
八雲の言葉に感動し、思わず涙がぽろり。
ごしごしと目元を袖で擦り、晴香はニコリと笑った。
「制服デート、しようよ!」
八雲は思わず噴き出しそうになった。
バクバクと心臓が騒ぎ、呼吸が苦しくなるのをそれのせいにし晴香を見上げる。
「せ、せいふくでーと…?」
征服?清福?
変換間違いだったとしても、後ろについたデートは変わらないだろう…
「あ、デートって言っても町にお出かけするだけだからねっ!」
勘違いしないでよね!
必死になって弁解する晴香の顔はリンゴのように赤く染まっていた。
「そういうことか」
理解してほっとする反面、残念がる自分もいて口元隠すように顎を撫でる。
このまま心臓が落ち着くまで待とうとしたが、晴香の視線が痛く顔を上げた。
言葉通りモジモジと身体を捻りながら、小首を傾げる。
「そ、それで……どう、かな…?」
下から見ていると言うのに、上目遣いに見えるその瞳に再び心臓が暴れる。
「生憎、暇で暇で仕方ない」
ちらりと盗み見ると明らかに緊張した趣の晴香がスカートを握りしめていた。
「……付き合ってやる」
髪を掻き回しながら立ち上がった八雲に、晴香は思わず飛びついてしまった。
そして現在に至る。
八雲としてはデートと言うからには、公園で散歩をしたり。
カフェでお茶したり、映画を見たりするのかと思いきや…
そのデートコースは所謂、最近の若者のデートコースで。
最近の若者に着いていけない八雲は、疲れきっていた。
だが、その合間合間に見せる晴香の笑顔が八雲の疲れを吹き飛ばしていた。
「次はどこに行こうか?」
バナナクレープを頬張りながら、晴香は指折り数える。
「カラオケ、ゲームセンター、ショッピング…」
段々とデートではなく、友達との遊び感覚になっているんじゃないか。
イチゴクレープを頬張りながら、八雲は心の中で呟いた。
「八雲君は行きたいところとかある?」
「…別に」
突然顔を覗き込まれ、とっさに横を向く。
「あっ、そうだ!」
そう言い晴香が連れてったのは、ゲームセンターだった。
何か忘れ物でもしたのかと聞くより先に、八雲はカーテンの向こうに押し込まれた。
…この機械は────
「………」
「プリクラ、撮ろっ!」
そう言うと八雲の返事も待たず、お金を入れた。
起動する機械を前に、八雲は逃げだそうとするも晴香に捕まる。
「僕はいい、遠慮する」
「えー、ここまで来たんだから良いじゃない」
「写真は嫌いなんだ!」
写真に残るのは。
自分の瞳を見るのは、嫌なんだ。
「せっかくのきれいな瞳なのに…」
「…!」
「写真に残さないのはもったいないよ!」
声を張り上げると、グーでボタンを押した。
カウントダウンを始める機械に、無理矢理正面を向かせられる。
「こうなったら意地でも撮るもん!」
「ば、ばかやめろっ!」
逃げられまいと腕に絡んできた身体に、八雲は写真のことなど忘れてしまった。
end.
続きます。
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