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八雲で赤頭巾ちゃんパロです。
エイプリルフールですね!
…でも、今日のお話はエイプリルフールのお話ではないのですが…
とりあえず、本館が獣館になっているのでコチラも獣話を。
八雲/赤頭巾ちゃんパロディ 20話
エイプリルフールですね!
…でも、今日のお話はエイプリルフールのお話ではないのですが…
とりあえず、本館が獣館になっているのでコチラも獣話を。
八雲/赤頭巾ちゃんパロディ 20話
「あ……」
ぽつりと晴香は呟いた。
視線の先には夜空にぷかりと浮かんだ丸い月。
四角い窓の額の中。
きらきら光るお星さまと一緒に、「夜だよ」と謡っていた。
「夜だ…」
口にして、改めて現実を知り飛び起きた。
上にのしかかるようにして寝ていた八雲が、ベッドの下にずり落ちた。
「っ……急になんだ、君は」
「いま何時!?」
慌てふためく晴香とは逆に、八雲はのん気に欠伸をしながら窓の外に目を向ける。
ベッドの上と床の上。
いつもよりちょっと高い位置にいる晴香は、真正面にある八雲の顔にドキドキしていた。
いつも眠たそうに細められた瞳に、月光が射す。
眼差しは私を越えた窓の向こうにあるはずなのに…
まるで見つめられているような…
「何か用事でもあるのか?」
「へっ!?」
突然、こちらを向かれ思わず下を向く。
「よ、用事ってわけじゃないんだけど…」
見なくても感じる視線に、つつき合う人差し指がくるりと絡み合った。
「…お父さん…とお姉ちゃんが、最近物騒だから早く帰ってきなさいって」
「僕が守る」
そんな台詞とともに手を握られたものだから、鼓動は高まるばかり。
顔赤くなってないかな、とか。
手に汗掻いちゃってないかな、とか。
心配事が積み重なる中、晴香は口を動かした。
「き、気持ちは嬉しいんだけど…!門限、作られちゃって…」
「何時だ?」
「……7時」
これには八雲も驚き、晴香を凝視する。
見つめられた晴香はますます縮こまり、今にも顔から蒸気が出そう。
八雲が手を離したときには、晴香は倒れそうなくらい顔を赤くしていた。
「今から出れば、ぎりぎり間に合う」
「え?」
顔を上げたそこには、コートを羽織る八雲の姿。
椅子に掛かっていた赤い頭巾をこちらに投げると、マフラーを首周りに巻いた。
クリスマスに、私があげた手作りのマフラー…
「行くぞ」
「う、うん!」
晴香は急いで頭巾を被り、空のバスケットを手に八雲の後を追った。
昼は太陽に照らされ明るい森。
けれど日が沈み、空が暗くなると森は一変。
月だけでは世界を照らすことは不可能で、今もどこかで陰が蠢く。
ふと、手の甲にコツコツと当たっているのに気が付いた。
なんだろうと横目で右手を見てみると、手を振る度に八雲の手がぶつかっていた。
近付きすぎたかな、と反省し半歩左にずれる。
だが、八雲も着いてきてしまい振り出しに戻ってしまった。
なんだろう?
ずっと右手に向いていた視線を上げて、八雲を見上げる。
するとこちらを横目で見下ろす八雲と、視線がぴたりと合った。
「あっ」
そのとき気が付いた。
無言で右手を八雲の左手にさり気なく絡める。
指と指との間に、相手の指を挟み合う…いわゆる恋人繋ぎ。
正解。
「!」
…と言わんばかりに握られる手の平に、言葉に出来ない嬉しさが溢れる。
思わず手の平を握り返した晴香は、八雲を見上げる。
だが八雲はそっぽを向いていて、再度眼差しが絡まれることも口を開くこともない。
何も言わなくたって分かる。
八雲にだけ生えた尾が揺れているのを見て、晴香はお互い様だと笑った。
最初は二人、歩くペースを合わせて並んで歩いていた。
合わせると言っても、八雲が歩調を遅くしてくれているだけだけど。
だが、時が経つにつれて段々と遅くなり…
最後は晴香が引っ張るようにして、家の側で止まった。
「わざわざ送ってくれてありがとう」
木々の向こうに街の明かりが覗く。
あと数歩歩けば、森を抜けてしまう。
これ以上行っては、狼である八雲に危険が及ぶ。
それを知っているから、晴香はここで足を止めた。
「…暇だったからだ」
さっきは手を繋ぎたがってたくせに。
素直になれなくて、妙な意地を張っている。
それを知っている晴香は、小さく笑った。
本当はもっと一緒にいたい。
けれど私はシンデレラ。
時間はすぐそこまで来ている。
「…手、離してくれる?」
「………」
繋いだままの右手をそっと上げる。
聞こえているはずなのに、八雲は離さない。
ただじっと、繋がれた左手を見つめている。
「ね、お願い」
「………」
晴香の言葉が届いたのか、八雲は手の力を緩めた。
するりと抜けた指の間に夜風が吹き込み、とても冷たかった。
「今日もすごい楽しかったよ」
「………」
「でも今日のパンケーキは甘すぎちゃったね」
「………」
「次はマドレーヌ作ってきてあげる」
「………」
「……じゃあ、ね」
何も返さない八雲に、晴香は踵を返す。
弱々しくもしっかりと、赤い布地を引っ張られた。
頭に被っていた頭巾を引っ張られ、肩に落ちる赤頭巾。
「おおかみ、さん…?」
「……離れたく、ない」
葉の揺れる音にかき消されそうな声。
弱々しくも確かに晴香の耳に届いた涙声。
「…ごめん、ね」
頭巾を掴む手に触れる。
指を解き、変わりに自らのそれを絡めた。
「明日もちゃんと会い行くから」
晴香を正面から見上げる。
八雲は顔を上げず、俯いたまま。
「雨が降っても風が強くても、絶対に行くから…」
子供みたいなわがまま。
けれど八雲の気持ちは良くわかる。
だって、私だって八雲と離れたくないから…
でも、家族に心配をかけさせたくない。
ただでさえ迷惑を掛けているんだ…
だから────
「どうせ君は迷子になるんだろう?」
息を吐く音とともに聞こえてきた声。
いつの間にか下を向いていた頭を上げると、そこには意地悪な顔をした八雲がいた。
「迷子になって泣いて喚いて…探す僕の身にもなれ」
次々と出て来る皮肉に、晴香に笑顔が戻った。
「だから、そういう日は僕が迎えに行くから……待ってろ」
「うんっ!」
大きく頷いた晴香は、八雲の頬に唇を押しつけた。
突然のことに八雲は驚き、目を見開き瞬きを繰り返す。
だがすぐにいつもの眠たそうな顔に戻りため息を吐く。
「唇じゃないのか?」
「も、文句があるならもうしてあげないもんっ」
「ふっ、冗談だ」
顔を赤くして怒る晴香の頭上に、ぽんと手を置く。
前髪を掻き分け出てきた額に、八雲はキスを落とした。
弾けたリップ音に頬を染めながら、晴香は八雲を弾き飛ばした。
「じ、じゃあまたね!」
「あぁ」
軽く手を挙げる。
それを見た晴香は、駆け足で森を抜けた。
街を照らすは街灯。
人工灯の眩しさに目を細め、森の隣の自宅に帰った。
「ただいまー」
「あら、晴香が早く帰って来るだなんて珍しい」
「もう、門限作ったのは誰よ」
からかうように笑う母から逃げるように、部屋に飛び込んだ。
電気を付け、バスケットを片付けながら額を指で撫でる。
ふと、窓の向こうに人影があるのに気が付いた。
木に隠れ、こちらを見つめる八雲の姿。
「狼さんだ!」
窓に駆け寄った晴香は、窓を開け身を乗り出した。
思わず名前を呼びそうになったが寸のところで塞ぎ、無言で手を振る。
八雲も振り替えしてくれたのが嬉しくて、晴香は大きく手を振った。
しばらくそうしていたが、部屋の戸が開く音で止まってしまう。
「何してるの?」
「お、お姉ちゃん」
戸の前に立つ姉、綾香の姿。
ちらりと森の方に目を向けたが、そこにはもう八雲の姿はなかった。
ほっと胸を撫で下ろす晴香の隣に、綾香が立つ。
「お月さまを見ていただけだよ、お姉ちゃん」
「……そう」
綾香もしばらく外を眺め、それから窓を閉めた。
やっと気を緩めることの出来た晴香に、綾香は言った。
「イチャイチャするなら、もっと奥でしなさいよ」
end.
たまには野生本能を抑えた、甘えん坊な狼さんを。
普段の狼さんなら「門限は破るためにある」的なことを言って返さなかったに違いない。
真夜中フルコースになってたに違いない。
…あれ、もしかしてこっちの方が皆さん望んでました?(´・ω・`)
ぽつりと晴香は呟いた。
視線の先には夜空にぷかりと浮かんだ丸い月。
四角い窓の額の中。
きらきら光るお星さまと一緒に、「夜だよ」と謡っていた。
「夜だ…」
口にして、改めて現実を知り飛び起きた。
上にのしかかるようにして寝ていた八雲が、ベッドの下にずり落ちた。
「っ……急になんだ、君は」
「いま何時!?」
慌てふためく晴香とは逆に、八雲はのん気に欠伸をしながら窓の外に目を向ける。
ベッドの上と床の上。
いつもよりちょっと高い位置にいる晴香は、真正面にある八雲の顔にドキドキしていた。
いつも眠たそうに細められた瞳に、月光が射す。
眼差しは私を越えた窓の向こうにあるはずなのに…
まるで見つめられているような…
「何か用事でもあるのか?」
「へっ!?」
突然、こちらを向かれ思わず下を向く。
「よ、用事ってわけじゃないんだけど…」
見なくても感じる視線に、つつき合う人差し指がくるりと絡み合った。
「…お父さん…とお姉ちゃんが、最近物騒だから早く帰ってきなさいって」
「僕が守る」
そんな台詞とともに手を握られたものだから、鼓動は高まるばかり。
顔赤くなってないかな、とか。
手に汗掻いちゃってないかな、とか。
心配事が積み重なる中、晴香は口を動かした。
「き、気持ちは嬉しいんだけど…!門限、作られちゃって…」
「何時だ?」
「……7時」
これには八雲も驚き、晴香を凝視する。
見つめられた晴香はますます縮こまり、今にも顔から蒸気が出そう。
八雲が手を離したときには、晴香は倒れそうなくらい顔を赤くしていた。
「今から出れば、ぎりぎり間に合う」
「え?」
顔を上げたそこには、コートを羽織る八雲の姿。
椅子に掛かっていた赤い頭巾をこちらに投げると、マフラーを首周りに巻いた。
クリスマスに、私があげた手作りのマフラー…
「行くぞ」
「う、うん!」
晴香は急いで頭巾を被り、空のバスケットを手に八雲の後を追った。
昼は太陽に照らされ明るい森。
けれど日が沈み、空が暗くなると森は一変。
月だけでは世界を照らすことは不可能で、今もどこかで陰が蠢く。
ふと、手の甲にコツコツと当たっているのに気が付いた。
なんだろうと横目で右手を見てみると、手を振る度に八雲の手がぶつかっていた。
近付きすぎたかな、と反省し半歩左にずれる。
だが、八雲も着いてきてしまい振り出しに戻ってしまった。
なんだろう?
ずっと右手に向いていた視線を上げて、八雲を見上げる。
するとこちらを横目で見下ろす八雲と、視線がぴたりと合った。
「あっ」
そのとき気が付いた。
無言で右手を八雲の左手にさり気なく絡める。
指と指との間に、相手の指を挟み合う…いわゆる恋人繋ぎ。
正解。
「!」
…と言わんばかりに握られる手の平に、言葉に出来ない嬉しさが溢れる。
思わず手の平を握り返した晴香は、八雲を見上げる。
だが八雲はそっぽを向いていて、再度眼差しが絡まれることも口を開くこともない。
何も言わなくたって分かる。
八雲にだけ生えた尾が揺れているのを見て、晴香はお互い様だと笑った。
最初は二人、歩くペースを合わせて並んで歩いていた。
合わせると言っても、八雲が歩調を遅くしてくれているだけだけど。
だが、時が経つにつれて段々と遅くなり…
最後は晴香が引っ張るようにして、家の側で止まった。
「わざわざ送ってくれてありがとう」
木々の向こうに街の明かりが覗く。
あと数歩歩けば、森を抜けてしまう。
これ以上行っては、狼である八雲に危険が及ぶ。
それを知っているから、晴香はここで足を止めた。
「…暇だったからだ」
さっきは手を繋ぎたがってたくせに。
素直になれなくて、妙な意地を張っている。
それを知っている晴香は、小さく笑った。
本当はもっと一緒にいたい。
けれど私はシンデレラ。
時間はすぐそこまで来ている。
「…手、離してくれる?」
「………」
繋いだままの右手をそっと上げる。
聞こえているはずなのに、八雲は離さない。
ただじっと、繋がれた左手を見つめている。
「ね、お願い」
「………」
晴香の言葉が届いたのか、八雲は手の力を緩めた。
するりと抜けた指の間に夜風が吹き込み、とても冷たかった。
「今日もすごい楽しかったよ」
「………」
「でも今日のパンケーキは甘すぎちゃったね」
「………」
「次はマドレーヌ作ってきてあげる」
「………」
「……じゃあ、ね」
何も返さない八雲に、晴香は踵を返す。
弱々しくもしっかりと、赤い布地を引っ張られた。
頭に被っていた頭巾を引っ張られ、肩に落ちる赤頭巾。
「おおかみ、さん…?」
「……離れたく、ない」
葉の揺れる音にかき消されそうな声。
弱々しくも確かに晴香の耳に届いた涙声。
「…ごめん、ね」
頭巾を掴む手に触れる。
指を解き、変わりに自らのそれを絡めた。
「明日もちゃんと会い行くから」
晴香を正面から見上げる。
八雲は顔を上げず、俯いたまま。
「雨が降っても風が強くても、絶対に行くから…」
子供みたいなわがまま。
けれど八雲の気持ちは良くわかる。
だって、私だって八雲と離れたくないから…
でも、家族に心配をかけさせたくない。
ただでさえ迷惑を掛けているんだ…
だから────
「どうせ君は迷子になるんだろう?」
息を吐く音とともに聞こえてきた声。
いつの間にか下を向いていた頭を上げると、そこには意地悪な顔をした八雲がいた。
「迷子になって泣いて喚いて…探す僕の身にもなれ」
次々と出て来る皮肉に、晴香に笑顔が戻った。
「だから、そういう日は僕が迎えに行くから……待ってろ」
「うんっ!」
大きく頷いた晴香は、八雲の頬に唇を押しつけた。
突然のことに八雲は驚き、目を見開き瞬きを繰り返す。
だがすぐにいつもの眠たそうな顔に戻りため息を吐く。
「唇じゃないのか?」
「も、文句があるならもうしてあげないもんっ」
「ふっ、冗談だ」
顔を赤くして怒る晴香の頭上に、ぽんと手を置く。
前髪を掻き分け出てきた額に、八雲はキスを落とした。
弾けたリップ音に頬を染めながら、晴香は八雲を弾き飛ばした。
「じ、じゃあまたね!」
「あぁ」
軽く手を挙げる。
それを見た晴香は、駆け足で森を抜けた。
街を照らすは街灯。
人工灯の眩しさに目を細め、森の隣の自宅に帰った。
「ただいまー」
「あら、晴香が早く帰って来るだなんて珍しい」
「もう、門限作ったのは誰よ」
からかうように笑う母から逃げるように、部屋に飛び込んだ。
電気を付け、バスケットを片付けながら額を指で撫でる。
ふと、窓の向こうに人影があるのに気が付いた。
木に隠れ、こちらを見つめる八雲の姿。
「狼さんだ!」
窓に駆け寄った晴香は、窓を開け身を乗り出した。
思わず名前を呼びそうになったが寸のところで塞ぎ、無言で手を振る。
八雲も振り替えしてくれたのが嬉しくて、晴香は大きく手を振った。
しばらくそうしていたが、部屋の戸が開く音で止まってしまう。
「何してるの?」
「お、お姉ちゃん」
戸の前に立つ姉、綾香の姿。
ちらりと森の方に目を向けたが、そこにはもう八雲の姿はなかった。
ほっと胸を撫で下ろす晴香の隣に、綾香が立つ。
「お月さまを見ていただけだよ、お姉ちゃん」
「……そう」
綾香もしばらく外を眺め、それから窓を閉めた。
やっと気を緩めることの出来た晴香に、綾香は言った。
「イチャイチャするなら、もっと奥でしなさいよ」
end.
たまには野生本能を抑えた、甘えん坊な狼さんを。
普段の狼さんなら「門限は破るためにある」的なことを言って返さなかったに違いない。
真夜中フルコースになってたに違いない。
…あれ、もしかしてこっちの方が皆さん望んでました?(´・ω・`)
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