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八雲で一人暮らしパロディです。
また新しいパロディ(というよりシリーズ)を始めました。
「もしも八雲が一人暮らしをしていたら!」です。
あんまりここで喋ってもあれなので…この辺りで!
八雲/一人暮らしシリーズ 1話
また新しいパロディ(というよりシリーズ)を始めました。
「もしも八雲が一人暮らしをしていたら!」です。
あんまりここで喋ってもあれなので…この辺りで!
八雲/一人暮らしシリーズ 1話
八雲が部室棟に住んでいることが大学側にバレた。
そりゃ年がら年中あの部室に居ては、不審に思う者も出てくるだろう。
恨みがあるのか、はたまた単に親切心で報告したのか。
それを知るすべなどない。
とにかく部室から出ていくよう、大学側から直接通告されたのだった。
それは、桜が舞い散る春の日のことだった。
午後の講義が終わった晴香は軽い足取りで部室に向かっていた。
部室というより休憩室と呼ぶに相応しい、映画研究同好会。
そこは晴香にとっては楽園で、八雲にとっては住居で。
何はともあれ、二人にとって快適な場所であった。
歩くテンポに合わせて揺れるビニール袋。
中にはここに来る前に購買部で買った、新作スイーツが二つ。
狭いビニールの中で肩身を寄せている。
ひとつは私ので、もうひとつは八雲のもの。
どうせ「そんなものばかり食べてるから太るんだ」とか言われるのだろう。
けれどすぐに、何だかんだ言いながらも頬張る彼の姿が思い浮かんだ。
その姿を想像した晴香は、口角が上がるのを必死で抑えた。
部室まで、八雲まであと少し。
最後の曲がり角を曲がる。
そこで晴香が見たものは、映画研究同好会のドアの前に立つ講師の姿だった。
また依頼か何かかな。
とっさに建物の陰に隠れて聞き耳を立てる。
晴香の耳に入ってきたのは“出ていけ”という冷たい言葉だった。
それから数日後。
退学の危機はなんとか免れたが、八雲はしばらくの間停学することになってしまった。
八雲の口から直接聞いたわけではないが、部室を私物化し、住み込んでいたことが原因らしい。
当たり前と言えば当たり前で、それは常識的に見ても正しい判断であった。
けれど、理由はどうあれ長らく住んでいた場所を離れるというのは誰だって寂しいもの。
最初のうちは晴香も心配していたが、相手はあの八雲だということを忘れていた。
当の本人は気にした様子もなく、今日もまたいつもの皮肉が飛んできた。
晴香は持ち込んだファッション誌に目を通していた。
誰もが目移りしてしまうパステルカラーの新作が並ぶ中、晴香の神経は部屋の隅に向かう。
大学側は宣告しつつも、気に掛けてくれたのか片付ける猶予をくれた。
猶予を受け取った八雲は、坦々と部室内に置かれた私物を纏めている。
…同好会自体は晴香が所属しているおかげもあってか、廃部は免れた。
そのため、ポスターやちょっとしたお茶のセットは残しておける。
なので八雲が片付けている私物は、衣類や本などと正直言って少ない。
どこからか持ってきたボストンバックに納まりそうな勢いに胸を撫で下ろす。
少しの余裕から、晴香は肩の力を抜いた。
そして思うはただ一つ。
よくこれだけで生活してきたな…
これなら、大学に来る前にスーパーで貰ってきたダンボールは必要なさそうだ。
使わないなら貰ってっちゃおうかな。
壁に立て掛けられているダンボールを横目に見ながら、晴香は訪ねた。
「ねぇ、これからどうするの?」
「どうするもこうするもない」
額の汗を一拭いした八雲の横顔。
焦る様子が見られない顔からは、本心を垣間見ることは出来なかった。
いつも通りの顔。いつも通りの調子。
その表情は本当のものなのだろうか。
考え出すと止まらない。すべてが悪い方悪い方へといってしまう。
直視することが出来なくなった晴香は、静かに目を伏せた。
「住むとこ…あるの?」
出ていけと告げられた日。
いつものように、始まるはずであった他愛のない日常。
あの日からずっと気になっていた、八雲の次なる“すみか”────
後藤さんの家にお世話になるのかな。
そう思い晴香が訪ねてみても、返事はきっぱりNO。
いくら暖かい家族が待っていてくれても、あの場所に長居はしたくないらしい。
それは視えてしまうからか、照れくさいからか。
訪ねてもどうせ答えてくれないだろうから、聞くのはやめた。
しばらく待っても「住むとこ決まってるの?」に対して返事が返ってこない。
それだけでなく、皮肉すら返ってこない。
これは住むところが決まっていないのかな?
期待が募る。
ドキドキと鼓動が高まる胸を押さる。
体を巡る血液が煮え立ったように、全身が熱い。
顔、赤くなってないかな。
意を決した晴香は勇気を振り絞り、汗ばんだ手を握った。
「住むとこないんだったら…!」
「停学中に」
晴香の言葉を遮るように、八雲が言う。
それから晴香の言葉も待たず、続けて言った。
「停学中に、部屋を借りるつもりだ」
後ろ姿からはどんな顔をしているのか窺えない。
それを聞いた晴香は、膝の上に手を下ろした。
すとんと落ちた腕は、諦めからか。
「そっか」
一言だけそう返すと、机に放置された雑誌を見下ろした。
捲ったページは、都内のお花見スポットを一覧に表していた。
…ほっとした反面、心のどこかで落ち込む自分がいる。
言えなかった言葉を口の中に閉じ込め、お茶と一緒に胃へと流し込んだ。
ふうと息を吐く。少しだが心が落ち着いた。
いやなものが出ていった。
顔を上げた晴香は、勢い良く八雲の背中に人差し指を突きつけた。
「住む場所が決まったら、絶対に教えてよ!」
「はいはい」
「引っ越しのお手伝いしてあげるんだから」
「君が来たら逆に仕事が増える」
「もうっ!」
ほんと素直じゃないんだから!
頬を膨らまして腕を組み、怒ったんだよとアピール。
けれどそんなお遊びに八雲が付き合ってくれる訳無く…
せっかくの浮かれた気分を惨めな気分にされた。
けれどそのおかげで冷静さが帰ってきた。
腕を解き八雲を見つめる。
「勝手に、いなくなったりしないでね」
「……わかってる」
最後まで顔を見せてはくれなかった。
けれどその一言で。
“わかってる”の一言で。
どれだけ安心出来たのか。
八雲は知るよしもないのだろう。
end.
一人暮らし八雲シリーズ第一話でした!
そしてこんなときにプチスランプ…
話のネタではなく、文章の書き方がわからなくなってきた…
いつか読み返したときに書き直してやりたいです。
お読み頂きありがとうございました!
宜しければ、感想をくださると嬉しいです!
そりゃ年がら年中あの部室に居ては、不審に思う者も出てくるだろう。
恨みがあるのか、はたまた単に親切心で報告したのか。
それを知るすべなどない。
とにかく部室から出ていくよう、大学側から直接通告されたのだった。
それは、桜が舞い散る春の日のことだった。
午後の講義が終わった晴香は軽い足取りで部室に向かっていた。
部室というより休憩室と呼ぶに相応しい、映画研究同好会。
そこは晴香にとっては楽園で、八雲にとっては住居で。
何はともあれ、二人にとって快適な場所であった。
歩くテンポに合わせて揺れるビニール袋。
中にはここに来る前に購買部で買った、新作スイーツが二つ。
狭いビニールの中で肩身を寄せている。
ひとつは私ので、もうひとつは八雲のもの。
どうせ「そんなものばかり食べてるから太るんだ」とか言われるのだろう。
けれどすぐに、何だかんだ言いながらも頬張る彼の姿が思い浮かんだ。
その姿を想像した晴香は、口角が上がるのを必死で抑えた。
部室まで、八雲まであと少し。
最後の曲がり角を曲がる。
そこで晴香が見たものは、映画研究同好会のドアの前に立つ講師の姿だった。
また依頼か何かかな。
とっさに建物の陰に隠れて聞き耳を立てる。
晴香の耳に入ってきたのは“出ていけ”という冷たい言葉だった。
それから数日後。
退学の危機はなんとか免れたが、八雲はしばらくの間停学することになってしまった。
八雲の口から直接聞いたわけではないが、部室を私物化し、住み込んでいたことが原因らしい。
当たり前と言えば当たり前で、それは常識的に見ても正しい判断であった。
けれど、理由はどうあれ長らく住んでいた場所を離れるというのは誰だって寂しいもの。
最初のうちは晴香も心配していたが、相手はあの八雲だということを忘れていた。
当の本人は気にした様子もなく、今日もまたいつもの皮肉が飛んできた。
晴香は持ち込んだファッション誌に目を通していた。
誰もが目移りしてしまうパステルカラーの新作が並ぶ中、晴香の神経は部屋の隅に向かう。
大学側は宣告しつつも、気に掛けてくれたのか片付ける猶予をくれた。
猶予を受け取った八雲は、坦々と部室内に置かれた私物を纏めている。
…同好会自体は晴香が所属しているおかげもあってか、廃部は免れた。
そのため、ポスターやちょっとしたお茶のセットは残しておける。
なので八雲が片付けている私物は、衣類や本などと正直言って少ない。
どこからか持ってきたボストンバックに納まりそうな勢いに胸を撫で下ろす。
少しの余裕から、晴香は肩の力を抜いた。
そして思うはただ一つ。
よくこれだけで生活してきたな…
これなら、大学に来る前にスーパーで貰ってきたダンボールは必要なさそうだ。
使わないなら貰ってっちゃおうかな。
壁に立て掛けられているダンボールを横目に見ながら、晴香は訪ねた。
「ねぇ、これからどうするの?」
「どうするもこうするもない」
額の汗を一拭いした八雲の横顔。
焦る様子が見られない顔からは、本心を垣間見ることは出来なかった。
いつも通りの顔。いつも通りの調子。
その表情は本当のものなのだろうか。
考え出すと止まらない。すべてが悪い方悪い方へといってしまう。
直視することが出来なくなった晴香は、静かに目を伏せた。
「住むとこ…あるの?」
出ていけと告げられた日。
いつものように、始まるはずであった他愛のない日常。
あの日からずっと気になっていた、八雲の次なる“すみか”────
後藤さんの家にお世話になるのかな。
そう思い晴香が訪ねてみても、返事はきっぱりNO。
いくら暖かい家族が待っていてくれても、あの場所に長居はしたくないらしい。
それは視えてしまうからか、照れくさいからか。
訪ねてもどうせ答えてくれないだろうから、聞くのはやめた。
しばらく待っても「住むとこ決まってるの?」に対して返事が返ってこない。
それだけでなく、皮肉すら返ってこない。
これは住むところが決まっていないのかな?
期待が募る。
ドキドキと鼓動が高まる胸を押さる。
体を巡る血液が煮え立ったように、全身が熱い。
顔、赤くなってないかな。
意を決した晴香は勇気を振り絞り、汗ばんだ手を握った。
「住むとこないんだったら…!」
「停学中に」
晴香の言葉を遮るように、八雲が言う。
それから晴香の言葉も待たず、続けて言った。
「停学中に、部屋を借りるつもりだ」
後ろ姿からはどんな顔をしているのか窺えない。
それを聞いた晴香は、膝の上に手を下ろした。
すとんと落ちた腕は、諦めからか。
「そっか」
一言だけそう返すと、机に放置された雑誌を見下ろした。
捲ったページは、都内のお花見スポットを一覧に表していた。
…ほっとした反面、心のどこかで落ち込む自分がいる。
言えなかった言葉を口の中に閉じ込め、お茶と一緒に胃へと流し込んだ。
ふうと息を吐く。少しだが心が落ち着いた。
いやなものが出ていった。
顔を上げた晴香は、勢い良く八雲の背中に人差し指を突きつけた。
「住む場所が決まったら、絶対に教えてよ!」
「はいはい」
「引っ越しのお手伝いしてあげるんだから」
「君が来たら逆に仕事が増える」
「もうっ!」
ほんと素直じゃないんだから!
頬を膨らまして腕を組み、怒ったんだよとアピール。
けれどそんなお遊びに八雲が付き合ってくれる訳無く…
せっかくの浮かれた気分を惨めな気分にされた。
けれどそのおかげで冷静さが帰ってきた。
腕を解き八雲を見つめる。
「勝手に、いなくなったりしないでね」
「……わかってる」
最後まで顔を見せてはくれなかった。
けれどその一言で。
“わかってる”の一言で。
どれだけ安心出来たのか。
八雲は知るよしもないのだろう。
end.
一人暮らし八雲シリーズ第一話でした!
そしてこんなときにプチスランプ…
話のネタではなく、文章の書き方がわからなくなってきた…
いつか読み返したときに書き直してやりたいです。
お読み頂きありがとうございました!
宜しければ、感想をくださると嬉しいです!
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