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八雲で八晴です。
アナログ放送終了まであと少しですね…!
我が家のテレビは…デジタル化、してないようです(^p^)
買い替えねば。
八雲/八晴(恋人未満)
アナログ放送終了まであと少しですね…!
我が家のテレビは…デジタル化、してないようです(^p^)
買い替えねば。
八雲/八晴(恋人未満)
「!」
斉藤八雲は正面から歩いてくる人物に見覚えがあった。
大きな麦藁帽を頭に、よいしょよいしょと大きな荷物を運んでいる。
一歩一歩歩む度に揺れる白地のワンピースは、奮発して買ったのだと数日前に聞いた。
向こうは、気付くであろうか。
ちょっとした期待を胸に、八雲は歩くテンポを落とした。
「おい」
「………」
「おい!」
「?」
二度ほど呼び止めてやっと、晴香は足を止める。
「…君の目は節穴か?」
「あ、八雲君!」
すれ違っても晴香は気づかなかった。
それほどまでに荷物を運ぶのに一生懸命だったらしい。
ここで擦れ違ったのが後藤さんだったなら、話しかけることはしなかっただろうに。
呼び止めた自分に、自分自身驚いた。
「…それは何だ」
呼び止めたからには用事があるのだろう。
そんな目で見つめられ、特に用事のない八雲は堪えきれず話を逸らす。
「ついに私も地デジ対応だよ!」
じゃじゃんと胸を張り、手にした大きな箱を見せつけられる。
ああそういえば、あと数日でアナログ放送が終了するんだっけ。
テレビを持っていない者には関係のない話で、忘れていた。
でも、終了間際に買うだなんて…
「まだ対応してなかったなんて…やっぱり君はのろまだな」
購入の遅さに、八雲は鼻で笑いながら言う。
反抗の一つでもするかと思ったが、晴香の顔はどこか浮かない。
「どうした?」
ため息を吐く晴香に堪えきれず訪ねる。
面倒事に巻き込まれるのは御免だが、何故か聞かずにはいられなかった。
「それが…工事に来てくれるのが一ヶ月後らしくて」
「………」
八雲は苦笑いを浮かべる。
何となく想像は出来る。
まだ大丈夫と言っているうちに、彼女のようにギリギリで購入する人が多いのだろう。
「テレビ、見れなくなっちゃうなって…」
テレビが見れなくなるだけで、なぜそんなにも悲しむのか不思議でならない。
ギリギリになってまで買わなかったコイツがいけないのだと分かってる。
けれど、悲しそうな顔を俯かせる姿を見ていると、何かが胸に突っかかる。
ガリガリと寝癖だらけの髪をかき回す。
晴香の横を通りすぎ際、ダンボールに手にかけた。
「行くぞ」
「えっ?」
気付かない晴香は、不思議そうに小首を傾げる。
それに舌を鳴らし、見せつけるように右手に持った箱を少しだけ持ち上げた。
「あ!」
「言っておくが、僕は涼みに行くだけだからな」
強調して言い聞かせる八雲に、晴香は笑みを浮かべて頷いた。
「待って待って!お願いだから、ちょっと待って…!」
「嫌だ」
「その、いろいろと準備が…」
「僕は気にしない」
ドアと八雲に挟まれた晴香は、まだ焼けることを知らない腕を突っ張っる。
けれど八雲の体はぴくりとも動かない。
逆に手の中から鍵を取られてしまった。
「いいからそこを退け。君の部屋が汚くても、僕は気にしない」
「私が気にするのよ、ばかっ!!」
ドアに張り付く晴香を引き剥がし、八雲は無理矢理に押し入った。
家の中は晴香が言うほど汚くはない。
ただお世辞にもきれいとは言えず、色々な意味で生活感の溢れる部屋だった。
数日前の台風の影響か、部屋に干された洗濯物のせいでそう見えるのかもしれない。
まあ、雑誌も数冊転がってはいるけれど。
「あ」
「ちょっ…!」
八雲の視線の先にある部屋干し中の洗濯物に、晴香は飛び付く。
見てしまった洗濯物に、八雲も気まずそうに頬を掻いた。
「……見ちゃった?」
「靴下なら、見た」
嘘。本当は全部見た。
これでも一般的な男。
今まで興味がない風を装ってはいた。
だが、目の前に淡い色の下着が干してあったら、目を止めてしまうのは当たり前。
男の悲しい性というものだ。
上下セットのものを買ってるんだなとか、白や縞柄が多かったなとか。
感想はたくさんあったが、取り合えず見ていない体を装うことにした。
いつまでも疑いを持ち掛けてくる晴香に嫌気がさし、テレビの設置に掛かる。
「涼みに行くだけだ」と言っておきながら、自然な流れでテレビを設置している。
これはもしや彼女の戦略なのでは、と疑ったが彼女は馬鹿だ。
そんな頭脳、あるわけがない。
今更止めるのも面倒くさいと思い、八雲は止まり掛けた手を動かした。
「電化製品強いんだね」「これくらい誰だって出来る」
「麦茶をどーぞ!」「ココアを出すようなことはしなくなったんだな」
と他愛のない会話の間に「下着は何色だった?」と問われ、思わず口が滑りそうになる。
そのうち晴香も諦めたらしく、大人しく片付けを始めた。
「……終わった」
いくら室内で冷房が効いているとはいえ、汗はかいた。
額に浮かんだそれを巻いた袖で拭うと、声を聞いた晴香が来る。
「もう終わったの?」
晴香は「もう」と言っているが、窓の外は真っ暗。
けれどまあ、彼女にとっては早い方なのだろう。
「わあ!きれいに映ってる!」
テレビを付けた晴香は、画面に映ったニュース番組にきゃっきゃっと子犬のようにはしゃぐ。
いつの間に着替えたのか。ホットパンツとキャミソールの姿に直視出来ない。
ただでさえ暑く、慣れない作業に頭がクラクラしているのだ。
これ以上刺激を受ける前に、帰らなくては。
立ち上がろうとした八雲に、晴香は「そうだ!」と手を叩く。
「何かお礼しなくちゃ!」
何が良い?と何故か瞳を輝かせて問いつめられる。
逃げた先にあったダンボール箱に背中をぶつけた。
「…べ、別に何もいらない」
「それじゃあ私の気が済まないの」
ああこの馬鹿。そんな格好で前屈みになるな馬鹿。
どこに視線を向けるべきか。迷う八雲に、晴香は追い討ちを掛けた。
「八雲、君…?」
細い手首を掴む手のひらから伝わる汗の感触が、妙に生々しい。
気付いたときには、目前に驚いた顔の晴香がいた。
「夕飯…で、良い」
「うん、わかった!」
腕に頼を掛けて作っちゃうんだから!
無邪気に笑いながら去っていく晴香に、深いため息を吐く。
積もりに積もった感情は、虚しさだけを残して消えてった。
「僕は一体、あいつに何をしようとしたんだ…」
晴香から解放された体は、ずるずると床の上に滑り落ちる。
瞼の上に置いた腕からは、ツンとした汗くささに混じって柑橘類の匂いがした。
「びっ、くりしたぁー…」
しゃがみ込んだ晴香は、両手で顔を包む。
手のひらは汗ばみ、頬は燃えるように熱い。
「キス…されるかと思っちゃった」
唇を押す指先の感触は、少しの期待に濡れていた。
end.
八雲は何だかんだと言いながら、面倒見がいいですよね!晴香ちゃん限定で!
ほっとけないという理由の延長線上の先に、愛があるのではないでしょうか。
地デジ化まであと二日!
さよならアナログ。おつかれさま。
斉藤八雲は正面から歩いてくる人物に見覚えがあった。
大きな麦藁帽を頭に、よいしょよいしょと大きな荷物を運んでいる。
一歩一歩歩む度に揺れる白地のワンピースは、奮発して買ったのだと数日前に聞いた。
向こうは、気付くであろうか。
ちょっとした期待を胸に、八雲は歩くテンポを落とした。
「おい」
「………」
「おい!」
「?」
二度ほど呼び止めてやっと、晴香は足を止める。
「…君の目は節穴か?」
「あ、八雲君!」
すれ違っても晴香は気づかなかった。
それほどまでに荷物を運ぶのに一生懸命だったらしい。
ここで擦れ違ったのが後藤さんだったなら、話しかけることはしなかっただろうに。
呼び止めた自分に、自分自身驚いた。
「…それは何だ」
呼び止めたからには用事があるのだろう。
そんな目で見つめられ、特に用事のない八雲は堪えきれず話を逸らす。
「ついに私も地デジ対応だよ!」
じゃじゃんと胸を張り、手にした大きな箱を見せつけられる。
ああそういえば、あと数日でアナログ放送が終了するんだっけ。
テレビを持っていない者には関係のない話で、忘れていた。
でも、終了間際に買うだなんて…
「まだ対応してなかったなんて…やっぱり君はのろまだな」
購入の遅さに、八雲は鼻で笑いながら言う。
反抗の一つでもするかと思ったが、晴香の顔はどこか浮かない。
「どうした?」
ため息を吐く晴香に堪えきれず訪ねる。
面倒事に巻き込まれるのは御免だが、何故か聞かずにはいられなかった。
「それが…工事に来てくれるのが一ヶ月後らしくて」
「………」
八雲は苦笑いを浮かべる。
何となく想像は出来る。
まだ大丈夫と言っているうちに、彼女のようにギリギリで購入する人が多いのだろう。
「テレビ、見れなくなっちゃうなって…」
テレビが見れなくなるだけで、なぜそんなにも悲しむのか不思議でならない。
ギリギリになってまで買わなかったコイツがいけないのだと分かってる。
けれど、悲しそうな顔を俯かせる姿を見ていると、何かが胸に突っかかる。
ガリガリと寝癖だらけの髪をかき回す。
晴香の横を通りすぎ際、ダンボールに手にかけた。
「行くぞ」
「えっ?」
気付かない晴香は、不思議そうに小首を傾げる。
それに舌を鳴らし、見せつけるように右手に持った箱を少しだけ持ち上げた。
「あ!」
「言っておくが、僕は涼みに行くだけだからな」
強調して言い聞かせる八雲に、晴香は笑みを浮かべて頷いた。
「待って待って!お願いだから、ちょっと待って…!」
「嫌だ」
「その、いろいろと準備が…」
「僕は気にしない」
ドアと八雲に挟まれた晴香は、まだ焼けることを知らない腕を突っ張っる。
けれど八雲の体はぴくりとも動かない。
逆に手の中から鍵を取られてしまった。
「いいからそこを退け。君の部屋が汚くても、僕は気にしない」
「私が気にするのよ、ばかっ!!」
ドアに張り付く晴香を引き剥がし、八雲は無理矢理に押し入った。
家の中は晴香が言うほど汚くはない。
ただお世辞にもきれいとは言えず、色々な意味で生活感の溢れる部屋だった。
数日前の台風の影響か、部屋に干された洗濯物のせいでそう見えるのかもしれない。
まあ、雑誌も数冊転がってはいるけれど。
「あ」
「ちょっ…!」
八雲の視線の先にある部屋干し中の洗濯物に、晴香は飛び付く。
見てしまった洗濯物に、八雲も気まずそうに頬を掻いた。
「……見ちゃった?」
「靴下なら、見た」
嘘。本当は全部見た。
これでも一般的な男。
今まで興味がない風を装ってはいた。
だが、目の前に淡い色の下着が干してあったら、目を止めてしまうのは当たり前。
男の悲しい性というものだ。
上下セットのものを買ってるんだなとか、白や縞柄が多かったなとか。
感想はたくさんあったが、取り合えず見ていない体を装うことにした。
いつまでも疑いを持ち掛けてくる晴香に嫌気がさし、テレビの設置に掛かる。
「涼みに行くだけだ」と言っておきながら、自然な流れでテレビを設置している。
これはもしや彼女の戦略なのでは、と疑ったが彼女は馬鹿だ。
そんな頭脳、あるわけがない。
今更止めるのも面倒くさいと思い、八雲は止まり掛けた手を動かした。
「電化製品強いんだね」「これくらい誰だって出来る」
「麦茶をどーぞ!」「ココアを出すようなことはしなくなったんだな」
と他愛のない会話の間に「下着は何色だった?」と問われ、思わず口が滑りそうになる。
そのうち晴香も諦めたらしく、大人しく片付けを始めた。
「……終わった」
いくら室内で冷房が効いているとはいえ、汗はかいた。
額に浮かんだそれを巻いた袖で拭うと、声を聞いた晴香が来る。
「もう終わったの?」
晴香は「もう」と言っているが、窓の外は真っ暗。
けれどまあ、彼女にとっては早い方なのだろう。
「わあ!きれいに映ってる!」
テレビを付けた晴香は、画面に映ったニュース番組にきゃっきゃっと子犬のようにはしゃぐ。
いつの間に着替えたのか。ホットパンツとキャミソールの姿に直視出来ない。
ただでさえ暑く、慣れない作業に頭がクラクラしているのだ。
これ以上刺激を受ける前に、帰らなくては。
立ち上がろうとした八雲に、晴香は「そうだ!」と手を叩く。
「何かお礼しなくちゃ!」
何が良い?と何故か瞳を輝かせて問いつめられる。
逃げた先にあったダンボール箱に背中をぶつけた。
「…べ、別に何もいらない」
「それじゃあ私の気が済まないの」
ああこの馬鹿。そんな格好で前屈みになるな馬鹿。
どこに視線を向けるべきか。迷う八雲に、晴香は追い討ちを掛けた。
「八雲、君…?」
細い手首を掴む手のひらから伝わる汗の感触が、妙に生々しい。
気付いたときには、目前に驚いた顔の晴香がいた。
「夕飯…で、良い」
「うん、わかった!」
腕に頼を掛けて作っちゃうんだから!
無邪気に笑いながら去っていく晴香に、深いため息を吐く。
積もりに積もった感情は、虚しさだけを残して消えてった。
「僕は一体、あいつに何をしようとしたんだ…」
晴香から解放された体は、ずるずると床の上に滑り落ちる。
瞼の上に置いた腕からは、ツンとした汗くささに混じって柑橘類の匂いがした。
「びっ、くりしたぁー…」
しゃがみ込んだ晴香は、両手で顔を包む。
手のひらは汗ばみ、頬は燃えるように熱い。
「キス…されるかと思っちゃった」
唇を押す指先の感触は、少しの期待に濡れていた。
end.
八雲は何だかんだと言いながら、面倒見がいいですよね!晴香ちゃん限定で!
ほっとけないという理由の延長線上の先に、愛があるのではないでしょうか。
地デジ化まであと二日!
さよならアナログ。おつかれさま。
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