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八雲でパロディ、高校生日記です。

彼らは夏休みに入ったのですかね?
夏は青い彼らにわいわいがやがやさせたくなります。

見方に寄っては、しもっかったりなんたり。


八雲/高校生日記37

第三ボタンまで開けられた胸板には、じわじわと貼り付くような嫌な汗。

運動をしたからでも、ひやりとするような嫌な思いをしたわけでもない。

これは一番嫌いな汗に分類される、暑さからくるもの。



きれいに磨かれた縁側の上は、始めこそは冷たく居心地が良かった。
だが、今となっては肌と床とが汗でぺたぺたくっ付いて気持ちが悪い。

さすがは太陽が真上にくる時間帯。
じりじりと肌が焼けるのが分かるほど、日差しも強かった。

移動しようとも思ったが、動くのが面倒くさいという思いが強い。
それに、ここはこの家の中でも一番涼しく、静かな場所でもある。

一番涼しい冷房機のある部屋にはあの自称姉が陣取り、自分の部屋には居候が。
三日と続かない宿題に励んでいる。

八雲は思春期の娘に追われる父のように、この場所に避難しているのでもあった。


せめてでもと、ごろりと転がり軒下の影に移動する。
ときどき吹く風は開け放った縁側を越え、無人の部屋を通り、襖から廊下に出ていく。
僅かな風でも響く風鈴の音色は、耳から体を冷やしていった。


このまま日が沈むまでここにいよう。

重い瞼に無理はさせず、自身に身を任せた。



────そのときだ。


瞼の裏が暗くなり、ずしりと下腹部が重たくなった。
とっさに身を丸くしようとするも、膝に何かがぶつかりそれを拒む。


何だこれはと瞼を開けると、視界いっぱいにきらきら輝くグリーンが広がった。

「ばーん」

ぴゅっと何とも間の抜けた音が近くで聞こえる。
かと思えば、続けて目に液体が入り込み、八雲は慌てて目を閉じた。

だが時すでに遅し。
目がひりひりと滲みて痛い。
ごしごしと目をこすってやっと、異物を取り除いた。

「あははっ」

頭上から降ってくる笑い声。
聞き覚えのある声に眉を寄せ、まだ痛い目で馬乗りになる女を睨み付けた。

「おはよう、八雲君っ。ご気分はいかがですか?」

「最悪の目覚めだ」

そこには予想通り、居候、小沢晴香が無邪気に笑っていた。


「君は何をしている」

「水鉄砲だよ」

手にしているのは、可愛らしい拳銃の形をした緑の透明プラスチック。
晴香の細い指が引き金を引くと、ぴゅっと中身が飛び出してきた。

そうかなるほど。先ほどの正体はこれだったか。
いやいや違う。聞きたいのはそうじゃなくて。

「どうしてこんなことをしているんだ!」

腹の上の晴香を怒鳴る。
唾が飛んだらしく「汚い」と喚く晴香に、声を荒げることさえくだらなく感じた。

「いいから早くそこを退け」

「はぁい」

密着していて熱いものなど、人肌以外にない。
ぎゅうぎゅう詰めのエレベーターや、満員電車が良い例。

互いに熱を発しているからなのか、もしくは晴香が乗っている場所が原因なのか。
熱くなる身体に、頭がくらくらと重たくなる。

意識はしないようにしていたが、下腹部に押し当てられた柔らかいものは非常に不味い。
思春期特有のアレで、ただでさえ過敏になっているというのに。


胸板越しに見える浮いた腰に、ほっと胸を撫で下ろす。
しかしすぐに衝動は帰ってきた。

「うっ……!」

「隙あり!」

顔に再び、水鉄砲による攻撃をされる。
だが、八雲はそれどころではなかった。

腹の上で「大勝利ー!」とはしゃぐ晴香の動きに、顔を青くする。

「うっ…ご、くな!」

刑事ドラマの真似事ではないが、晴香から水鉄砲を奪い突きつける。
さすがの晴香も観念したようで両手を上げる。

それを見て、ほっと胸を撫で下ろしたのもつかの間。
あの晴香には似合わない素早い動きで、自らの腰に手を回す。
そして、八雲が手にしたものと色違いのそれを、八雲の額に突きつけた。

「おあいこね」

くすりと艶っぽい笑みに何故か苛立ちを感じ、衝動的に引き金を引く。
晴香は八雲の上から飛び退き、撃たれた水の弾はワイシャツに染みを作った。

「くそっ」

裸足のまま庭に飛び降りる晴香。
反動を付けて飛び起きた八雲は、下半身に生じた違和感すらも忘れ、後を追い庭に出る。

太陽の下に晒された砂の地面は、真夏のビーチのように熱い。
だが、この熱い戦いには敵わなかった。

「降参するなら今のうちだ」

「それはこっちの台詞よ」

銃を構え、距離を取る二人は刑事ドラマさながら。
手元を飾るカラフルなプラスチックを除けば。


先に動いたのは晴香だった。
背を向け走り出す晴香の後を、八雲は追いかける。
そう広くはない庭。晴香はすぐに足を止めた。

「ふっふっふっ」

魔女のように怪しく笑う晴香の手には、緑色のホース。
見覚えのあるそれは、庭の隅の蛇口に繋がっていた。

「それは反則だろ」

「そんなルールなんてないもん」

「…まあいい」

珍しく諦めの早い八雲を不思議に思うも深くは考えず、晴香はハンドルを回す。
けれど、ホースの先からは待てども待てどもお目当てのものは出てこなかった。

「あれ?」

三センチにも満たない狭い穴を覗き込む。
光を閉ざしたトンネルの先には、闇しか待ってはいなかった。

頭にクエスチョンマークを浮かべ、首を傾げる晴香に八雲はクッと喉を鳴らして笑う。
人を見下したように笑う八雲に、晴香は自然と不機嫌な顔になった。

「足元を見ろ」

「足元?」

家用の薄手のショートパンツから伸びる足。
擦りむいた膝小僧を越えたもっと先。
裸足の足が踏む緑色のロープ状のものに、晴香は見覚えがあった。

「あっ!」

通りで水が出なかったわけだ。自らホースに足で栓をしていた。
我ながら初歩的なミスをしてしまったなと、晴香は足を退けた。

八雲は何となく予想していた。
晴香は何も考えていなかった。

ホースは晴香の手の中。
輪切りに切られたホースの口は目の前。

水は容赦なく、晴香の顔目掛けて吹き出した。

「ぶっは」

手を離すも、ホースは宙づ踊り頭から水を被る。
いち早く予想していた八雲は、木の陰に隠れたため被害はない。

「相変わらず君はトラブルメーカーだな」

「良いから早く止めて!」

生きた蛇のように、地上に出てきたミミズのようにホースが足元をのた打ちまわる。
乾いた土は水を吸い込み、深みのある色に変化した。

その上を裸の足が踊るようにステップを踏む。

面白半分に眺めていたが、溢れ続ける水を見てハンドルを締めに行った。

「あーあ、びしょびしょ…」

「自業自得だ」

ろ────と続くはずだった言葉。消えた一文字の代わりに、すっと息をのむか細い音が出た。

「八雲君?」

白いブラウスの裾を括り絞る晴香は、きょとんと不思議そうな顔。
どうしたの、と泥まみれの足で近付く。
だが、八雲も後ろに下がってしまい、距離は一向に縮まない。


「……どうして」

背中が塀にぶつかってやっと、重い口を開けた。

「どうして何も着けてない!」

顔を上げた八雲は真っ赤だった。

開いた口から吐き出された言葉に、晴香は首を傾げる。
そして、明らかに八雲が目を逸らしている場所に気付きひっと息をのんだ。

「きゃあ!」

「ばか、足元…っ!」

すってんころりん。
足元のホースに躓いた晴香は、泥を撒き散らしながら八雲の上に倒れてしまった。

「くっ…」

「いたた…大丈夫、八雲君?」

覗き込むも、八雲の顔は何故か青い。

どこか悪いとこでも打ったのだろうか。
心配になった晴香が触れようとしたが、それは弾かれてしまった。

ふらふらと千鳥足で水道に向かうと、バケツ一杯に溜まった冷水を頭から被った。

「ちょ…何してるの!?」

「風呂に、入ってくるだけだ…」

駆け寄る晴香の手を払い、濡れた身体のまま部屋に上がっていく。
八雲が歩いた後に出来た、泥まみれの足跡にぎょっとし呼び止める。

「一心さんに怒られちゃうよ?」

「…今は、それどころじゃない」

それだけ告げると、八雲はおぼつかない足取りで襖を閉めた。






end.



服を着たまま水浴び…!
晴香ちゃんには是非ともやってもらいたいです。
それを告げても良いけど、告げずに遠目で眺めているむっつりでもいいと思います。
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すごいです!!
スっごくたのしかったです^^!!
ここの小説は八雲と晴香の性格が良くかかれてあって 原作でもやってそうな((殴
ものばかりで楽しく読ませてもらっています!

これからもがんばってください。
翠燕 2011/08/16(Tue)18:13:54 編集
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