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八雲で27歳設定のお話。
なんかいろいろとややこしい設定です。
この間の空麗爛さんちの絵茶で出た、八雲27歳の話。
ついでに言うと、お話500個めでした…!!
どんどんぱふぱふー!!
八雲/八晴(27歳、恋人未満)
なんかいろいろとややこしい設定です。
この間の空麗爛さんちの絵茶で出た、八雲27歳の話。
ついでに言うと、お話500個めでした…!!
どんどんぱふぱふー!!
八雲/八晴(27歳、恋人未満)
彼と私の関係に名前を付けるならば、神様は一体なんて名付けるだろう。
小沢晴香は、台所で調理をしていた。
今晩の夕食はカレーライス。昨日作って残った、二日目カレー。
よく煮込まれ美味しいのに、彼はあまり好きじゃないらしく「手抜き料理」とずっと昔に言われたのを思い出す。
それからと言うもの、この家の二日目カレーは、カツカレーかカレーうどんなのだ。
今日は、仕事帰りに買ってきた3割引のチキンカツをふんだんに乗せたカツカレーの予定。
私だって仕事がある。スーパーで買ってきたものを使ったって、罰を受けることはない。
それは八雲も理解してくれているようで、何も文句は言ってこない。
「元はと言えば、八雲君が原因だもん」
カレーを煮込む鍋に蓋を被せた晴香は、スーツを着替えに自室に向かった。
一つ屋根の下、賃貸のマンションで八雲と私は暮らしている。
大学を卒業した後、惹かれ合うように同居を始めた。
最初は、友達以上恋人未満の関係が進むのではないか、と毎日のように思っていた。
どきどきしていたのが今でも懐かしい。
けれど進むことなく、5年経った今でも、関係が変わることはなかった。
「本当…何やってるんだろうなぁ」
回りの友達はどんどん結婚していき、幸せな家庭を築いている。
会う度に「まだ結婚してないの」と言われ、八雲との関係を切ることを進められては苦笑している。
いつかは、この関係が終わるだろうと思っていた。
結婚するなり、どちらかに恋人が出来るなり。
なのに、待てども待てどもその日は来なかった。
「早くしないと、誰かに取られちゃうんだから」
自分で言うのもあれだけど、もてないわけじゃない。
何度かアプローチされたし、合コンに参加すれば誘われる。
けれど、すべて断ってきた。
それは何のため?
答えはわかっている。
心のどこかで期待してるのだ。八雲が声を掛けてくれるのを。
「八雲君が先に出てっちゃったら、元も子もないけど」
スーツを放り投げ、下着姿のままベッドに倒れ込む。
堅いベッドのバネがぎしりと軋んだ。
私たちは部屋も別。
このマンションを借りるとき、どうして部屋の数があるマンションを選んでしまったんだろう。
お互いに仕事を持っている今。
顔を合わせるのは朝と夜の二回だけ。
八雲と出会って過ごした、あの頃よりも少ないだろう。
「八雲…」
その名を呟いたら、なぜだか悲しくなった。
腹を抱えるように丸くなり、冷たい布団をぎゅっと抱きしめる。
「私…もう27だよ」
隠せる範囲だけど、シワだって出来てきた。
肌も、あの頃よりは調子が悪い。
「……ばか」
「誰が馬鹿なんだ?」
返事が返ってくることに驚きながらも、晴香は目を伏せる。
「八雲君が、馬鹿なの」
「意味が分からない」
八雲の言い分には、十分納得できる。
私にも意味が分からない。
入るぞ、と断ってから部屋に入ってくる八雲に、また胸が痛んだ。
「電気もつけないで、なんて格好をしてる」
君の方が馬鹿だろ。鼻で笑う八雲は、あの頃と変わらない。
少しは丸くなったような気もするが、私に対する態度はまったく変わらない。
「火、付けっぱなしだったぞ」
「煮込んでたんですー」
「…焦げるほど?」
「………」
逃げ道を探して布団を被る。
降ってくるため息に、呆れる顔の姿が目に浮かぶ。
「八雲君は!…女の子がこんな格好してるのに、なんとも思わないの?」
「どこに女の子がいる」
「………」
今すぐ押し倒して、熱いキスでもしてやろうか。
けれど、熱いキスの仕方なんて恋愛ドラマの中の世界。
どうすればいいのか分からなければ、そんな勇気は晴香になかった。
「もういい」
起きあがり、部屋着を身に纏う。
最初は可愛らしいパジャマを着ていたが、今は着やすさ第一のスウェット。
女らしさと言うのも、年々薄れている気がして悲しくなった。
「あとで、話がある」
部屋を出ていく寸前、ぼそりと聞こえた声に、少しだけ胸が高鳴った。
「昇級した」
八雲の“話したいこと”は、それだった。
夕飯であるカツカレーを食べているとき、他愛のない会話の狭間で八雲が言った。
「…へ、えー!おめでとう!」
想像もしていなかったことと、期待していたものとは違った落胆にタイムラグが生じる。
しばらくの間、止まってしまい慌てて口を動かした。
「ご馳走用意しなくちゃね!あ、でも今日はカツカレーで我慢してね」
ああでも、冷蔵庫に桃の缶詰があったんだった。いま取ってくるから。
そう言い立ち上がる晴香の腕を、八雲は掴み引き留めた。
「話はまだ終わってない」
あまりにも真剣な声に、振り返ることすら叶わず、佇むことしか出来ない。
静寂に包まれた部屋の中を、時計の動く音が響く。
「言うのが遅れたが…」
先に喋りだしたのは八雲だった。
けれど、また静寂。
急かすつもりはなかったけれど、堪えきれなくなり振り返る。
八雲は防ごうとしたが遅かった。
「八雲君、顔真っ赤…!」
晴香は瞳を丸くする。
まだ何もしていないのに、まだ何も告げていないのに。
八雲の顔は、真っ赤に染まっていた。
同居してから出来た妙な溝のせいで見ることの減った、人間味溢れる表情。
久しぶりに見る赤い顔に見惚れていると、腕を引かれ何の前触れもなく抱きしめられる。
後から思えば、“勢い”だったのかもしれない。
そんな顔を見られたくない、という。
「結婚、しよう」
そして、これもまた私の“勢い”だった。
「はい」
次にみた八雲は、誰がどう見ても驚いていた。
冷静を取り戻した私も、驚いていた。
しばらくの間、二人見つめ合い、私は「ぷっ」と。彼は「くっ」と噴き出す。
「遅すぎるわよ、ばか八雲」
「だったら君から言えばよかっただろ」
「こういうのは男の人から言うものなの」
「君のその古臭い考えが駄目なんだ」
「古臭いってなによ!」
きっと私は、彼に負けないほど顔が赤いだろう。
けれど、それ以上に幸せそうな顔をしているに決まっている。
目の前にいる、彼がしているような。
思ってみれば、ちゃんと向かい合って話したのは何ヶ月ぶりだろう。
八雲の顔を見たのも、何ヶ月ぶりだろう。
ちょっと見ない間に、八雲の目の下には隈が出来ていた。
「あともう一つ言い忘れてた」
「何?」
「君が好きだ」
end.
27歳設定…良いっ!
でも恋人期間もなしに結婚は無理がありすぎましたかね…?
でも、恋人期間もなしに、夫婦設定とか書くのが楽しそうです!
27にして、初々しいとかもう…!!
そういうコトを知らない年なわけないですし、分かっているけどなかなか出来ないとか…
もうその辺りが気になっちゃう。
シリーズ化したい…!
小沢晴香は、台所で調理をしていた。
今晩の夕食はカレーライス。昨日作って残った、二日目カレー。
よく煮込まれ美味しいのに、彼はあまり好きじゃないらしく「手抜き料理」とずっと昔に言われたのを思い出す。
それからと言うもの、この家の二日目カレーは、カツカレーかカレーうどんなのだ。
今日は、仕事帰りに買ってきた3割引のチキンカツをふんだんに乗せたカツカレーの予定。
私だって仕事がある。スーパーで買ってきたものを使ったって、罰を受けることはない。
それは八雲も理解してくれているようで、何も文句は言ってこない。
「元はと言えば、八雲君が原因だもん」
カレーを煮込む鍋に蓋を被せた晴香は、スーツを着替えに自室に向かった。
一つ屋根の下、賃貸のマンションで八雲と私は暮らしている。
大学を卒業した後、惹かれ合うように同居を始めた。
最初は、友達以上恋人未満の関係が進むのではないか、と毎日のように思っていた。
どきどきしていたのが今でも懐かしい。
けれど進むことなく、5年経った今でも、関係が変わることはなかった。
「本当…何やってるんだろうなぁ」
回りの友達はどんどん結婚していき、幸せな家庭を築いている。
会う度に「まだ結婚してないの」と言われ、八雲との関係を切ることを進められては苦笑している。
いつかは、この関係が終わるだろうと思っていた。
結婚するなり、どちらかに恋人が出来るなり。
なのに、待てども待てどもその日は来なかった。
「早くしないと、誰かに取られちゃうんだから」
自分で言うのもあれだけど、もてないわけじゃない。
何度かアプローチされたし、合コンに参加すれば誘われる。
けれど、すべて断ってきた。
それは何のため?
答えはわかっている。
心のどこかで期待してるのだ。八雲が声を掛けてくれるのを。
「八雲君が先に出てっちゃったら、元も子もないけど」
スーツを放り投げ、下着姿のままベッドに倒れ込む。
堅いベッドのバネがぎしりと軋んだ。
私たちは部屋も別。
このマンションを借りるとき、どうして部屋の数があるマンションを選んでしまったんだろう。
お互いに仕事を持っている今。
顔を合わせるのは朝と夜の二回だけ。
八雲と出会って過ごした、あの頃よりも少ないだろう。
「八雲…」
その名を呟いたら、なぜだか悲しくなった。
腹を抱えるように丸くなり、冷たい布団をぎゅっと抱きしめる。
「私…もう27だよ」
隠せる範囲だけど、シワだって出来てきた。
肌も、あの頃よりは調子が悪い。
「……ばか」
「誰が馬鹿なんだ?」
返事が返ってくることに驚きながらも、晴香は目を伏せる。
「八雲君が、馬鹿なの」
「意味が分からない」
八雲の言い分には、十分納得できる。
私にも意味が分からない。
入るぞ、と断ってから部屋に入ってくる八雲に、また胸が痛んだ。
「電気もつけないで、なんて格好をしてる」
君の方が馬鹿だろ。鼻で笑う八雲は、あの頃と変わらない。
少しは丸くなったような気もするが、私に対する態度はまったく変わらない。
「火、付けっぱなしだったぞ」
「煮込んでたんですー」
「…焦げるほど?」
「………」
逃げ道を探して布団を被る。
降ってくるため息に、呆れる顔の姿が目に浮かぶ。
「八雲君は!…女の子がこんな格好してるのに、なんとも思わないの?」
「どこに女の子がいる」
「………」
今すぐ押し倒して、熱いキスでもしてやろうか。
けれど、熱いキスの仕方なんて恋愛ドラマの中の世界。
どうすればいいのか分からなければ、そんな勇気は晴香になかった。
「もういい」
起きあがり、部屋着を身に纏う。
最初は可愛らしいパジャマを着ていたが、今は着やすさ第一のスウェット。
女らしさと言うのも、年々薄れている気がして悲しくなった。
「あとで、話がある」
部屋を出ていく寸前、ぼそりと聞こえた声に、少しだけ胸が高鳴った。
「昇級した」
八雲の“話したいこと”は、それだった。
夕飯であるカツカレーを食べているとき、他愛のない会話の狭間で八雲が言った。
「…へ、えー!おめでとう!」
想像もしていなかったことと、期待していたものとは違った落胆にタイムラグが生じる。
しばらくの間、止まってしまい慌てて口を動かした。
「ご馳走用意しなくちゃね!あ、でも今日はカツカレーで我慢してね」
ああでも、冷蔵庫に桃の缶詰があったんだった。いま取ってくるから。
そう言い立ち上がる晴香の腕を、八雲は掴み引き留めた。
「話はまだ終わってない」
あまりにも真剣な声に、振り返ることすら叶わず、佇むことしか出来ない。
静寂に包まれた部屋の中を、時計の動く音が響く。
「言うのが遅れたが…」
先に喋りだしたのは八雲だった。
けれど、また静寂。
急かすつもりはなかったけれど、堪えきれなくなり振り返る。
八雲は防ごうとしたが遅かった。
「八雲君、顔真っ赤…!」
晴香は瞳を丸くする。
まだ何もしていないのに、まだ何も告げていないのに。
八雲の顔は、真っ赤に染まっていた。
同居してから出来た妙な溝のせいで見ることの減った、人間味溢れる表情。
久しぶりに見る赤い顔に見惚れていると、腕を引かれ何の前触れもなく抱きしめられる。
後から思えば、“勢い”だったのかもしれない。
そんな顔を見られたくない、という。
「結婚、しよう」
そして、これもまた私の“勢い”だった。
「はい」
次にみた八雲は、誰がどう見ても驚いていた。
冷静を取り戻した私も、驚いていた。
しばらくの間、二人見つめ合い、私は「ぷっ」と。彼は「くっ」と噴き出す。
「遅すぎるわよ、ばか八雲」
「だったら君から言えばよかっただろ」
「こういうのは男の人から言うものなの」
「君のその古臭い考えが駄目なんだ」
「古臭いってなによ!」
きっと私は、彼に負けないほど顔が赤いだろう。
けれど、それ以上に幸せそうな顔をしているに決まっている。
目の前にいる、彼がしているような。
思ってみれば、ちゃんと向かい合って話したのは何ヶ月ぶりだろう。
八雲の顔を見たのも、何ヶ月ぶりだろう。
ちょっと見ない間に、八雲の目の下には隈が出来ていた。
「あともう一つ言い忘れてた」
「何?」
「君が好きだ」
end.
27歳設定…良いっ!
でも恋人期間もなしに結婚は無理がありすぎましたかね…?
でも、恋人期間もなしに、夫婦設定とか書くのが楽しそうです!
27にして、初々しいとかもう…!!
そういうコトを知らない年なわけないですし、分かっているけどなかなか出来ないとか…
もうその辺りが気になっちゃう。
シリーズ化したい…!
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