忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

八雲で八晴。

暑い日々が続きますね!
そんなわけでプールに行こうよ!なお話です。

八雲/八晴

寺へと続く石造りの階段を、小沢晴香は軽快な音を立て上がっていた。
帽子を被っているにも係わらず、首筋には玉の汗が浮かんでいる。

焼けた肌には、日焼け止めクリームが塗ってある。
だが、効果は100パーセントではない。

「また焼けちゃうかな」
袖のある服を選ぶべきだった。と、今更になって後悔しても遅い。
日に焼けるのを少しでも防ごうと、晴香は母屋に向かって走り出した。



今、この家には八雲と奈緒が寝泊まりしている。
後藤さんが家を長期間空けるとのことで、八雲は留守番を任されたのである。

そして昨日。
珍しくメールが来たかと思えば、プールに行かないかと誘われた。

最初は滅多にないお誘いにベッドの上で転がり回ったが、よくよく考え頂を垂らす。

インドアな八雲のこと。
プールに行くのが面倒くさく、私に押しつけたのであろう。

けれど、久しぶりに奈緒とも遊びたい。
それに断る理由もない。
ベッドに寝転がったまま、晴香はイエスと返事をしたのだった。


少し日が落ちてからプールに向かおうか。

「それとも、暑いからこそ早めに行った方がいいのかな?」

いくら涼みに行くからと言って、プールまでは徒歩。
熱中症で倒れたりなんかしたら元も子もない。

「八雲君に相談してみよっと」

チャイム一度鳴らしてから、晴香は横開きのドアをスライドさせた。

「おじゃましまーす」

大きな声で、奥に向かって声を掛ける。
許可も取らず勝手に入ってきてしまったが、部屋に上がることはさすがに出来ない。
待てども待てども返事はなかった。

心配になった晴香は、もう一度声を掛けてから、急ぎ足で部屋に向かう。
戸を開けた先にいたのは、積み木遊びをする奈緒と、その後ろに座る八雲の姿だった。

「どうしたの?」

その異様な様子に声を掛けると、八雲に手を引かれて廊下に連れ出された。

「プールが休みだったんだ」

挨拶もなしに語られる真相。

「いつもなら大人しく引いてくれるのに…今日は機嫌が悪くなった」

助けてくれ。と口にはしないが、困ったように眉を八の字に懇願されてはしょうがない。

襖の隙間から奈緒の様子を伺い、一呼吸入れてから奈緒に心の中で声を掛けた。

「こんにちは、奈緒ちゃん」

「お姉ちゃん」

晴香の顔を見て、表情が明るくなったのも一瞬。
すぐに眉尻を垂らし口を一文字に結んでしまう。

こういう顔は八雲にそっくりだな、と思いながら晴香は奈緒の隣に腰掛けた。

「残念だね」

「…お姉ちゃんとプール、楽しみにしてたの」

「だから、今度僕が連れていってやると言って」

「お姉ちゃんがいい」

八雲の眉間に皺が寄る。
晴香は苦笑を浮かべ、奈緒と向き合った。

「そっかー、お姉ちゃんとが良いんだ」

困惑しながらも、その顔はどこか嬉しさに満ち溢れている。
こんなかわいい子に、そんなことを言われてはしょうがない。

「そうだ!今日はここに泊まってくから、明日は一番にプールに行こう?」

「!」

血のつながった兄妹が、ぱっと顔を上げる。
兄は嫌そうにしかめた顔で。妹は今日初めて見た笑顔で。

「ほんとう!?」

「うん、だから今日はお家で遊ぼうね」

こくこくと大きく頷いた奈緒が、積み上げた積み木を倒す勢いで飛びついてきた。
誰かさんに似た寝癖のついた髪からは、太陽の匂いがした。

「おい」

八雲に肩を掴まれ、晴香は振り返る。
露わになった肩に、その手は妙に汗ばんでいた。

「一人くらい泊まれるでしょ?」

「僕が言いたいのはそうじゃない」

「じゃ、後藤さんに了承を得ればいい?」

携帯を取り出そうとする腕を、八雲は慌てて止める。

「…なによ」

「………」

パクパクと酸素不足の金魚のように、口を閉じたり開けたり。
結局、最後は髪を掻き「わかった」とだけ口にして居間を出て行ってしまった。

「へんな八雲君」

「ねぇねぇ、お姉ちゃん」

八雲を目で追う晴香に、奈緒はおずおずと話しかける。


「お願いがあるの…」






八雲が居間に戻ってきたのは、それから一時間後のことだった。


「お兄ちゃーん!」

「あ、八雲君」

「……!?」

一度庭に目を向け、それから疑うように目を見開いて二度見する。

「なっ、…にをしているんだ!」

危うく手にした本を落とすところだった。

「何ってプールだよ」

当たり前のように返す晴香は、奈緒と顔を見合わせ笑う。


見慣れた簡素な庭には、見慣れないプールが出ていた。

プールと言っても、大人が二〜三人入るか入らないかの家庭用プール。
しかも深さも臑まで無いという、幼児向けのプールだ。

奈緒にだって、それは小さいように見えた。


「…何をしているんだ、君たちは」

プールで遊んでいる、というのは百本譲って認めよう。
ちょっと昼寝をしていたこの一時間の間に、何が起きたと言うのだろう。

「奈緒ちゃんがね、どうしてもプールに入りたいって言うから」

「そのプールはどうした」

「お父さんが、昔買ってくれたの」

奈緒の小さな手のひらが、水面をぱしゃりと叩いた。

「………」

お父さん、というのは一心であろう。このプールの対象年齢からして。
僕が家を出ていた間に、叔父さんはこんなものを奈緒に買っていたのか。

過去に浸り、伏せた目にきらりと輝く水滴が飛んできた。
それは濃い目のジーンズに、さらに濃い染みを作った。


「ほーら、いくよー!」

奈緒がまた水面を叩いたのかと思いきや、それは晴香が叩いて出来たものだった。

太陽の下、小さなプールの中。
幼い少女と遊ぶ姿は、母親のようにも見える。

どうしたらあそこまで楽しめるのだろう。
不思議に思いながらも、八雲は口の端をくいと上げた。

「馬鹿みたいに暴れるな。近所で「あの家には暴れ牛がいる」と噂される」

「暴れ牛ってなによ!」

「見たままのことを言っただけだ」

きゃんきゃん吠える晴香に肩を竦ませ、縁側に腰掛ける。

開いた文字だらけの紙は、太陽光を反射させ読む気を奪った。
けれで本は閉じないで、静かに栞を抜いた。






end.



もっとこう…水着にどきっみたいな話が書きたかったです。
自分ち、子供用プール、水着でお座りなシチュが書きたかったのに…

最近は何をかっこつけたいのか、良い話に持っていこうとしすぎな気がします。
しかも良い話書けないから、中途半端になってしまうorz

ええい、リベンジしてやるっ!
あまあまぎゃぐえっち書いてやる!
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
[577]  [576]  [575]  [574]  [573]  [572]  [571]  [570]  [569]  [568]  [567
カレンダー
09 2025/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
朝田よる
性別:
非公開
ブログ内検索
最新コメント
[05/23 ひなき]
[09/13 murasame]
[07/19 delia]
[06/27 delia]
[05/20 delia]
忍者ブログ [PR]