×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
八雲で八晴!
お久しぶりなサラリーマン八雲のお話です。
リーマンな八雲を書くことよりも、奥さんな晴香ちゃんを書く方が楽しかったですv
八雲/サラリーマンパロ
お久しぶりなサラリーマン八雲のお話です。
リーマンな八雲を書くことよりも、奥さんな晴香ちゃんを書く方が楽しかったですv
八雲/サラリーマンパロ
「ただいま」
今日も残業。
終電ぎりぎりに帰宅した八雲を玄関で迎えたのは、今にも眠ってしまいそうな晴香だった。
「…先に寝ててもよかったんだぞ」
大きな欠伸をする姿は、眠気と戦う幼子のよう。
こいつが僕と同じ年だなんて今でも信じられない。
「えー…っとね、三分待ったら寝ようと思ってたの」
にへらと力のない笑顔に仕事の疲れが一気に減る。
八雲が口元を緩めたことに晴香も笑顔を見せ、ぶかぶかに余った袖に口を埋めた。
色違いで買った淡いピンクのパジャマは少し大きい。
サイズよりも“色違い”で選んだらしく、嬉しそうに話していたのを思い出す。
いつもは巻いてあるズボンの裾が解け、ずるずると引きずられている。
裾から覗いた白い指先と桜色の爪に、この世のものとは思えない神秘的なものを感じた。
八雲が気付くと晴香は目を細めたまま、その場で寝てしまいそうで、鞄を晴香に預けた。
鞄の重さに耐えきれず、前のめりに傾く体。
とっさに肩を掴んで防いだ八雲は、安堵の息を吐いた。
「君は先に寝ていろ」
「うん…」
ふらふらと千鳥足で廊下を歩く晴香の肩を後ろから支え、寝室に向かう。
右へ左へ壁にぶつかりそうになる度、八雲は晴香の進路を変えた。
それが本心ではなく、楽しんでわざとしていたことに気付いたのは、それからすぐのことだった。
「あ。ごはん、あたためなくちゃ」
肩を掴んで捕まえていたはずなのに。
猫が人の手をすり抜けるように、晴香は八雲の手の中から逃げた。
けれど、やっぱり足元は不安定。
右へ右へと傾いて行く晴香の肩を、八雲は再び支えた。
「それくらい僕がやる」
「でも、八雲君はお風呂に入らなくちゃでしょ?」
寝ぼけていると思えば、芯はしっかりしている。
言動が子供らしくても、立派な妻の姿に八雲は感心した。
「わかったら八雲君はお風呂ね」
ツンと鼻をつつかれる。
呆れる八雲をよそに、晴香は遅い夕食の支度を始めた。
睡魔からテンションがおかしいことになってはいるが、この調子ならば大丈夫であろう。
それこそ子供じゃないんだ。
自らの限界を分かっているはず。
離れた場所で観察をする八雲。
晴香を信用し、風呂に入ろうとした八雲の目の前で、晴香の手からコップが滑り落ちた。
「っ!」
飛び散るであろうガラスの破片から晴香を守ろうと慌てて駆け出す。
けれど右手から離れたコップは、見事左手でキャッチされた。
「危ない危ない」
そして、何事もなかったように、食事の支度を再開。
駆け出しかけた八雲は、ギャグ漫画のワンシーンのように顔面から転んだ。
「わっ!大丈夫?」
「……大丈夫だ」
鼻血が出ていないことを確認した八雲は、逃げるように風呂場に向かった。
風呂から上がった八雲が一番見たのは、脱衣場で膝を抱える晴香の姿だった。
髪を拭こうと手にしたタオルを腰に巻き、爪先で晴香の肩を押す。
「んぅ」
頭をゆっくり上げた晴香は、色違いのパジャマを胸に抱きしめていた。
秋の空に浮かぶ、薄い雲が掛かったような空色のパジャマ。
どうやら着替えを持ってきたまま寝ていたようだ。
「はい」
よいしょと立ち上がり、濡れたままの手にパジャマを渡す。
「寝てろと言っただろ」
こんな所ではなく、もちろんベッドで。
「さっき来たばかりだもん」
「それは君が寝てたからだ」
「寝てませーん。起きてましたよー、だ」
どの口がそんな言葉を言っている。
寝ぼけた晴香に呆れた八雲は、濡れたままの髪を掻いた。
言い返さない八雲に勝利を感じた晴香は、にこにこと笑みを浮かべる。
開いたままの風呂場への戸から、常時漏れる熱気に、眠気を誘われる。
でも寝てはだめ。
愛情をたっぷり込めて作った夕飯の感想を早く聞きたい。
朦朧とする意識の中、晴香は八雲の腕に手を伸ばす。
「……着替えるから早く出ていけ」
気まずそうに出てきた言葉に、晴香は一気に目覚める。
それから逃げるように、ふらつく足に力を入れて、脱衣場をあとにした。
八雲が脱衣場から出ていくと、リビングにはまだ晴香がいた。
あれほど先に寝ていろと言ったのに。
呆れる感情の他に、苛立ちを感じている自分がいることに気が付く。
「おい」
ソファーの上で膝を抱える晴香の肩に手を乗せる。
焦点の合わない瞳がこちらを見上げてくる。
「何度も言わせるな。いいから寝ろ」
「ごはん…」
「あとは僕一人でできる」
とは言うもの、テーブルの上の夕飯は、すでに温められて並んでいた。
「うん」
「…いい子だ」
とろんと垂れた瞳に誘われて、つい頭を撫でてしまう。
その姿は飼い主に従順な犬そのもの。
気持ちがいいのか、晴香も目を細めて頬を染めた。
「………」
少しでも気を抜いたら、情けなく開いた唇に自らのそれを押しつけてしまいそう。
そうして己の欲望に身を任せ、抵抗出来ない身体に沢山の痕を残すであろう。
さっきは犬に例えたが、目の前で無防備な姿を現されてはウサギに見えてくる。
となると、僕は狼か何かか。
苦笑を浮かべた八雲は、最後にぽんと叩くように頭に手を置き、ソファから離れた。
「もう少しだけ、ここにいてもいい?」
八雲と晴香の間に生まれた時差の影響により、少し遅れて言葉が届く。
振り返ると、ソファーの背もたれから顔だけ出した晴香と目が合った。
その姿は小動物が巣穴から頭を覗かせる姿を連想させる。
八雲が黙って晴香を見ていると、恥ずかしそうに頬を染め、目元まで沈んでいってしまった。
それから少しの時間を置き、ひょこりと目元だけ現した晴香は、八雲を見つめ返す。
「もっと八雲君を見ていたいの」
と口にしてからすぐに、慌てて弁解する。
「ほら、今日はあんまり一緒じゃなかったし!」
けれども出てくるのは十人中八人は認めるであろうのろけた理由。
何も言わない八雲に、言い知れぬ恐怖を抱いた晴香は、背もたれに沈んでいった。
頭の天辺だけが、公園にある小山のようにひょこりと姿を現していた。
「眠たくなったら、素直に寝ろ」
数秒のタイムラグの後、もぐら叩きのもぐらのように勢い良く飛び出す。
八雲はすでに食事を始めていた。
ソファーの上から降りない晴香に、何を言うこともない。
「おいしい」
渋るように出てきたその一言を聞けて、笑顔を見せたのは言うまでもない。
身体を半回転させた晴香は、ローテーブルに置いてある本に手を伸ばす。
明日は何を作ろうか。
ソファーにだらしなく身を沈め、遠慮がちに足をばたばた動かした。
濡れた手をズボンで拭きながら、八雲は晴香の顔を覗き込む。
ちょっと前までは、ソファーの向こうで暴れていたのに。
寝る支度をしている間に随分と静かになった。
想像は付いたが、予想通り晴香は瞼を降ろし、ぐっすりと眠りに着いていた。
長い睫が四方八方に跳ねているのを見て、晴香がどれだけ眠気と戦ってきたのかを知る。
「困った奥さんだ」
普段は奥さんなんて滅多に言ってやらない。
晴香が寝ているのを良いことに、頬をつつくと甘菓子のように凹んだ。
けれど、ふざけないでと怒る声も、照れくさそうに笑う声も。
返事は返ってこなかった。
一人で起きていてもつまらない。
頬から顎へ、顎から首へ。
ラインをなぞるも、パジャマの襟が不埒なことは許さないと邪魔をした。
「……寝るか」
欠伸が出てやっと、晴香の肌から手を離した。
腹の上に開いたまま乗った料理本をローテーブルに置く。
背中と膝裏に手を差し入れ、よいしょと抱き上げた。
落とさないようにと身を寄せる。
冷えきっているかと思った身体は、予想外にも暖かかった。
end.
一時期、私の中でとてもブームだったお姫様だっこ!
原作でも、晴香ちゃんをお姫様だっこするシーンが出てくるのを期待しています。
最初は、帰ってくるまで起きてるのが奥さんの仕事、という使命に駆られていたけれど。
段々と今日はあまり八雲に会ってない…って理由になってくと良いです…!
八雲は八雲で、迎えてくれるのは嬉しいけれど夜更かしする晴香が倒れないか不安でならない…と。
はっ…!新たなネタげっとだぜ!
今日も残業。
終電ぎりぎりに帰宅した八雲を玄関で迎えたのは、今にも眠ってしまいそうな晴香だった。
「…先に寝ててもよかったんだぞ」
大きな欠伸をする姿は、眠気と戦う幼子のよう。
こいつが僕と同じ年だなんて今でも信じられない。
「えー…っとね、三分待ったら寝ようと思ってたの」
にへらと力のない笑顔に仕事の疲れが一気に減る。
八雲が口元を緩めたことに晴香も笑顔を見せ、ぶかぶかに余った袖に口を埋めた。
色違いで買った淡いピンクのパジャマは少し大きい。
サイズよりも“色違い”で選んだらしく、嬉しそうに話していたのを思い出す。
いつもは巻いてあるズボンの裾が解け、ずるずると引きずられている。
裾から覗いた白い指先と桜色の爪に、この世のものとは思えない神秘的なものを感じた。
八雲が気付くと晴香は目を細めたまま、その場で寝てしまいそうで、鞄を晴香に預けた。
鞄の重さに耐えきれず、前のめりに傾く体。
とっさに肩を掴んで防いだ八雲は、安堵の息を吐いた。
「君は先に寝ていろ」
「うん…」
ふらふらと千鳥足で廊下を歩く晴香の肩を後ろから支え、寝室に向かう。
右へ左へ壁にぶつかりそうになる度、八雲は晴香の進路を変えた。
それが本心ではなく、楽しんでわざとしていたことに気付いたのは、それからすぐのことだった。
「あ。ごはん、あたためなくちゃ」
肩を掴んで捕まえていたはずなのに。
猫が人の手をすり抜けるように、晴香は八雲の手の中から逃げた。
けれど、やっぱり足元は不安定。
右へ右へと傾いて行く晴香の肩を、八雲は再び支えた。
「それくらい僕がやる」
「でも、八雲君はお風呂に入らなくちゃでしょ?」
寝ぼけていると思えば、芯はしっかりしている。
言動が子供らしくても、立派な妻の姿に八雲は感心した。
「わかったら八雲君はお風呂ね」
ツンと鼻をつつかれる。
呆れる八雲をよそに、晴香は遅い夕食の支度を始めた。
睡魔からテンションがおかしいことになってはいるが、この調子ならば大丈夫であろう。
それこそ子供じゃないんだ。
自らの限界を分かっているはず。
離れた場所で観察をする八雲。
晴香を信用し、風呂に入ろうとした八雲の目の前で、晴香の手からコップが滑り落ちた。
「っ!」
飛び散るであろうガラスの破片から晴香を守ろうと慌てて駆け出す。
けれど右手から離れたコップは、見事左手でキャッチされた。
「危ない危ない」
そして、何事もなかったように、食事の支度を再開。
駆け出しかけた八雲は、ギャグ漫画のワンシーンのように顔面から転んだ。
「わっ!大丈夫?」
「……大丈夫だ」
鼻血が出ていないことを確認した八雲は、逃げるように風呂場に向かった。
風呂から上がった八雲が一番見たのは、脱衣場で膝を抱える晴香の姿だった。
髪を拭こうと手にしたタオルを腰に巻き、爪先で晴香の肩を押す。
「んぅ」
頭をゆっくり上げた晴香は、色違いのパジャマを胸に抱きしめていた。
秋の空に浮かぶ、薄い雲が掛かったような空色のパジャマ。
どうやら着替えを持ってきたまま寝ていたようだ。
「はい」
よいしょと立ち上がり、濡れたままの手にパジャマを渡す。
「寝てろと言っただろ」
こんな所ではなく、もちろんベッドで。
「さっき来たばかりだもん」
「それは君が寝てたからだ」
「寝てませーん。起きてましたよー、だ」
どの口がそんな言葉を言っている。
寝ぼけた晴香に呆れた八雲は、濡れたままの髪を掻いた。
言い返さない八雲に勝利を感じた晴香は、にこにこと笑みを浮かべる。
開いたままの風呂場への戸から、常時漏れる熱気に、眠気を誘われる。
でも寝てはだめ。
愛情をたっぷり込めて作った夕飯の感想を早く聞きたい。
朦朧とする意識の中、晴香は八雲の腕に手を伸ばす。
「……着替えるから早く出ていけ」
気まずそうに出てきた言葉に、晴香は一気に目覚める。
それから逃げるように、ふらつく足に力を入れて、脱衣場をあとにした。
八雲が脱衣場から出ていくと、リビングにはまだ晴香がいた。
あれほど先に寝ていろと言ったのに。
呆れる感情の他に、苛立ちを感じている自分がいることに気が付く。
「おい」
ソファーの上で膝を抱える晴香の肩に手を乗せる。
焦点の合わない瞳がこちらを見上げてくる。
「何度も言わせるな。いいから寝ろ」
「ごはん…」
「あとは僕一人でできる」
とは言うもの、テーブルの上の夕飯は、すでに温められて並んでいた。
「うん」
「…いい子だ」
とろんと垂れた瞳に誘われて、つい頭を撫でてしまう。
その姿は飼い主に従順な犬そのもの。
気持ちがいいのか、晴香も目を細めて頬を染めた。
「………」
少しでも気を抜いたら、情けなく開いた唇に自らのそれを押しつけてしまいそう。
そうして己の欲望に身を任せ、抵抗出来ない身体に沢山の痕を残すであろう。
さっきは犬に例えたが、目の前で無防備な姿を現されてはウサギに見えてくる。
となると、僕は狼か何かか。
苦笑を浮かべた八雲は、最後にぽんと叩くように頭に手を置き、ソファから離れた。
「もう少しだけ、ここにいてもいい?」
八雲と晴香の間に生まれた時差の影響により、少し遅れて言葉が届く。
振り返ると、ソファーの背もたれから顔だけ出した晴香と目が合った。
その姿は小動物が巣穴から頭を覗かせる姿を連想させる。
八雲が黙って晴香を見ていると、恥ずかしそうに頬を染め、目元まで沈んでいってしまった。
それから少しの時間を置き、ひょこりと目元だけ現した晴香は、八雲を見つめ返す。
「もっと八雲君を見ていたいの」
と口にしてからすぐに、慌てて弁解する。
「ほら、今日はあんまり一緒じゃなかったし!」
けれども出てくるのは十人中八人は認めるであろうのろけた理由。
何も言わない八雲に、言い知れぬ恐怖を抱いた晴香は、背もたれに沈んでいった。
頭の天辺だけが、公園にある小山のようにひょこりと姿を現していた。
「眠たくなったら、素直に寝ろ」
数秒のタイムラグの後、もぐら叩きのもぐらのように勢い良く飛び出す。
八雲はすでに食事を始めていた。
ソファーの上から降りない晴香に、何を言うこともない。
「おいしい」
渋るように出てきたその一言を聞けて、笑顔を見せたのは言うまでもない。
身体を半回転させた晴香は、ローテーブルに置いてある本に手を伸ばす。
明日は何を作ろうか。
ソファーにだらしなく身を沈め、遠慮がちに足をばたばた動かした。
濡れた手をズボンで拭きながら、八雲は晴香の顔を覗き込む。
ちょっと前までは、ソファーの向こうで暴れていたのに。
寝る支度をしている間に随分と静かになった。
想像は付いたが、予想通り晴香は瞼を降ろし、ぐっすりと眠りに着いていた。
長い睫が四方八方に跳ねているのを見て、晴香がどれだけ眠気と戦ってきたのかを知る。
「困った奥さんだ」
普段は奥さんなんて滅多に言ってやらない。
晴香が寝ているのを良いことに、頬をつつくと甘菓子のように凹んだ。
けれど、ふざけないでと怒る声も、照れくさそうに笑う声も。
返事は返ってこなかった。
一人で起きていてもつまらない。
頬から顎へ、顎から首へ。
ラインをなぞるも、パジャマの襟が不埒なことは許さないと邪魔をした。
「……寝るか」
欠伸が出てやっと、晴香の肌から手を離した。
腹の上に開いたまま乗った料理本をローテーブルに置く。
背中と膝裏に手を差し入れ、よいしょと抱き上げた。
落とさないようにと身を寄せる。
冷えきっているかと思った身体は、予想外にも暖かかった。
end.
一時期、私の中でとてもブームだったお姫様だっこ!
原作でも、晴香ちゃんをお姫様だっこするシーンが出てくるのを期待しています。
最初は、帰ってくるまで起きてるのが奥さんの仕事、という使命に駆られていたけれど。
段々と今日はあまり八雲に会ってない…って理由になってくと良いです…!
八雲は八雲で、迎えてくれるのは嬉しいけれど夜更かしする晴香が倒れないか不安でならない…と。
はっ…!新たなネタげっとだぜ!
PR
この記事にコメントする