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八雲で赤ずきんちゃんパロです!

作品中だと暑いそうですが、今日はとても寒いです!
この間はどんぴしゃで台風が来たのに。

いったい、秋はどこに言ってしまったのでしょうね…
食欲運動芸術読書、その他もろもろの秋。カムバック。


八雲/赤ずきん

ここ一週間の間に、気温はぐんと下がり、ぎらぎら五月蝿い夏は遠い山の向こうに去っていった。
北から吹く風はどこかつんと冷めたく、夏の青々とした葉は段々と色付き始める。

季節が巡り、日に日に寒さを増すこの森にも、ついに秋がやってきた。

しかし、それは私の早とちりであった。



お天道さまの気分は、時に気まぐれ。

真上から射す強い日差しに目を細めた晴香は、太陽を一瞥してうなだれた。
首にはじんわりと汗が次から次へ浮かび上がってくる。

「暑い…」

バスケットの縁に掛けたタオルでそれらを拭い、肩に陣取る頭巾を恨めしそうに睨んだ。

この赤い頭巾とは、晴れの日も雨の日も、台風の日だって一緒に過ごしてきた。

始めてのおつかいの日…
森に住む狼さんと始めて出会ったあの日から、片時も離れたことなどない。
赤い色が好きというのもあるけれど、これを身につけていると、母親が傍にいるような安心感に包まれるのだ。

目を閉じ、瞼の裏に姿を思い描く。
しかし浮かび上がったのは、とんがった耳とけむくじゃらの尾を持つ狼さんの姿だった。

疑問に思った晴香は首を傾げたが、林の向こうの見覚えある後ろ姿に、それらは中断された。


ふさふさ尻尾に白いシャツ。小鳥のお家に丁度良いもじゃもじゃ髪にとんがりお耳。
見間違えるわけがない。それはまさしく、森に住む一匹狼の八雲だった。

「狼さーん!」

晴香は手を上げると左右に大きく振り、駆け寄る。
それに気付いた八雲はぴくり耳を動かし、大きな尾で弧を描きながら振り返る。

「転ぶなよ」

口では注意しながらも、表情はどこか柔らかい。
すでに転んだときのことを計算して、両手を開いている。

その腕に飛び込んでやろう。

しかしあと少しのところで、足は止まってしまった。


「………」

八雲が不快気な表情でこちらを見ている。
だが晴香は、八雲の首に巻かれたものを見て近付く気が失せていた。

「マフラーはまだ早いよ!」

遅れて「…です」と付け足す。

晴香が悲鳴を上げた通りに、八雲の首にはマフラーが巻かれていた。
彼の左目と同じ、真っ赤な毛糸の手編みのマフラー。
以前、八雲に贈った思い出のマフラーだ。

冒頭で述べた通り、今日は夏が戻ってきたごとくに暑い。
使ってくれるのは嬉しいが、さすがに今日の気温ではない。

「外してください」

「…別に、何を身に着けようが僕の勝手だろ」

「見ているこっちが暑くなります!」

「ならば見なければいいだろう?」

「狼さんに会いに来たんですから、見ないわけにはいきません」

驚いたように目を見開いたのは一瞬。
八雲は拗ねたようにマフラーに口を埋めた。

「……せっかく使えると思ったのに」

マフラーに口を埋めたままぼそりと口にする。
聞き逃した晴香はもう一度言うよう求めたが、八雲は口を尖らせ黙り込む。

外そうとしない八雲に嫌気がさし、強行作戦を取ることにした。

ぐいと八雲に近付き、マフラーに手を伸ばす。
身長差から頭より上にあるマフラーは、腕をいっぱいいっぱいに伸ばしても簡単には取れなかった。

「はなせ!」

その間にも八雲は後ろに下がり逃げようとする。

あまり物に執着することのない八雲は、晴香が欲しがるものを素直に与えてきた。
森で見つけたというドングリ。名のない一輪の黄色い花。へんなかたちの石ころ。

だから、八雲にしては珍しいその行動に晴香は小首を傾げた。

が、深く考えている余裕など晴香にはなかった。


思い返して見れば、自棄になっていたのかもしれない。


晴香は八雲目掛けて飛びついた。
そして首に腕を回し、もう離さないと言わんばかりに腕に力を込める。
足がぶらぶらと宙に浮かんでいたが気にしない。

「狼さん、つーかまえたっ!」

耳元で大声を出されては堪らない。
顔を歪めた八雲は、耳を塞ぎたかったが腕が上がらなかった。

「…目的は僕じゃなくてマフラーなんじゃないか?」

「んふふー」

マフラーに顔を埋めているため表情はわからない。
八雲は晴香の尻に、あるはずのない尻尾が揺れているのを感じた。

「急にどうしたんだ」

「狼さんがマフラー使ってくれてるの、久しぶりに見たから…」

「見たから?」

「嬉しくなっちゃった」

そう言うと晴香は、宙に浮いた足をばたつかせる。
体力にはあまり自信はないが、辛いとは思わなかった。

「重たくないのに」

「うん?」

「なんでこんなに柔らかいんだろうな」

堅い胸板に感じる、二つの山。
それはそれはこの世のものとは思えないほどに柔らかかった。

「……ばか!」

それに気付いた晴香は顔を赤らめ、首に回した腕を解く。
だが、宙に浮いた足はいつまで経っても地上に降り立つことはない。

「僕も、つかまえた」

「はっ、はなして!」

「形勢逆転だな」

暴れる晴香をものともしない。
赤い頭巾に顔を埋め、八雲は緩む口元を隠した。

晴香が大人しくなった頃。というより、諦めた頃。
ふと、鼻にくるつんとした臭いに、人より敏感な鼻が反応した。
くんくんと臭いを嗅ぎ、赤い頭巾を掻き分け、奥へ奥へと顔を埋める。

その様子に不思議がっていたが、あっと声を上げた途端にばたばたと暴れ出した。

「やっ、…だ、だめです!」

止めない八雲に、晴香は寝癖だらけの髪を握る。
その程度の反抗には慣れっこの八雲は、気にも止めずに奥へ行こうとする。
しかし、すぐに鼻先が白い壁にぶつかりそれ以上は進めなくなった。

「あせ、汗かいてるからぁ」

だめだめ、と言葉にならない声で何度も訴える。

晴香から出された解答に、なるほどと納得しそれから怪しく笑った。
いやいやと涙目で首を振る晴香に、思わず身体が疼いた。

そんな八雲のことなど知らず、晴香は肩を大きく上下させ安堵の息を吐きかける。
しかし、粘着質なものが首に触れ、ひゅと息をのんだ。

「暑いなら、その頭巾を脱いでしまえば良い」

胸元のリボンを解かれ、頭巾が肩からずり落ちる。
そして、再び晴香の首を撫でる、熱い粘着物。

唾液が絡まるくちゅという音と、噛まれてやっとそれが舌だということに気が付いた。
八雲は、汗を掻いている晴香の首を舐めていたのだ。

「やぁっ…!…きたな、い」

「僕はこの臭い、好きだけどな」

離れさせようと肩を押す両の手を捕まえる。

その間も舌は止まらない。
肩から白い首筋をゆっくり舐め、辿り着いた耳たぶをかぷと甘噛み。

爪先立ちになった足が、小刻みに震えているのが見えた。

ときどき漏れ出る甘い声に、堪えながら八雲は首を舐め続ける。
そのしょっぱさが彼女のものなのか、僕のものなのか分からなくなってきた。

解いてやった腕はいつの間にか首に回され“よわいところ”を掠める度に力が籠もるのが分かった。

「汗のにおいって、どうしてそそるんだろうな」

片手でブラウスのボタンを外しながら尋ねてみる。
しかし晴香は息を荒げるだけで何も答えてはくれなかった。

堪えるように眉を寄せ、八雲が触れる度に身体を揺らす。
身体に力が入らず寄りかかってきた晴香を支え直し、太股の間に足を差し入れると、また身体を揺らした。

マフラーに顔を埋めているためにそれ以上の表情は分からない。
しかし息が荒いのと、耳まで真っ赤に染まっていることは分かった。


「あぁそうか」

晴香の顎に指を掛け、無理矢理に上を向かせて笑う。



「してるときを思い出すから、か」


そして八雲は、今日始めて晴香と唇を合わせた。






end.



書き終えてから、外にいることを思い出しましたorz まさかの野外。
で、でもこのあと童話でもお約束の、猟師さん(後藤さん)の乱入がね!

……あれ、でも、赤ずきんって狼に食べられちゃってから猟師が来るんでしたっけ…?(゜-゜*)

狼八雲はにおいフェチという新たな設定がうまれました。獣だけに。
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