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八雲で八晴!

アクセス推移がなくなって、楽になったといえば楽になったのですが…
やっぱり物足りなさがありますね。
どんな作品が人気があるのかな、とわからなくなっちゃったので趣味に突っ走りそうで不安です。
あと、お話何個書いたかもわからなくなっちゃった!大変!


八雲/八晴(友人設定)

そろそろ寝ようか。


暗くなった窓の外を見てそう思い、読んでいた本を静かに閉じた。

時刻を確認すると、あと少しで日付が変わる頃。
明日は朝から用事があるわけでもなかったが、あいつに起こされるのだろう。
睡眠時間が減ることを恐れた八雲は、大人しく寝ようと立ち上がった。


少し前までは虫の声が聴こえていたというのに、随分と静かな夜になった。
静かな夜は嫌いだ。聞きたくないものまで聞こえてしまう。

今日も寂しい夜に集まった、奴らの声が聞こえてしまうのだろうか。

八雲は目を伏せ、耳を澄ました。


ほら、聞こえる。


悲痛に歪む呻き声。

がさがさと草木を揺らすいやな風。

誰かを求めて叫ぶ声。

すぐ近くまで迫る足音。

ドアが勢い良く開く音───


「八雲君っ!!」

あまりにも突然の来訪に、色々な意味で心臓が止まるかと思った。

「君は…」

声が裏返りそうになる。

なぜこんな時間に、こんなところへ、そんな格好で来ているのだ。
聞きたいことはたくさんあった。
しかし晴香はそれどころではない。青い顔をしていて今にも倒れてしまいそう。
上下に大きく揺れる肩に、八雲はとりあえず落ち着けと言った。
もちろん自分自身にも。


晴香の深呼吸に合わせて自らも深呼吸。そして晴香を盗み見た。

寝間着にカーディガンを羽織っただけの、遊びに来るにはラフ過ぎる服装。
外は寒いというのに顔は青いままで、気のせいか瞳が潤っているように見える。

布団から慌てて出てきましたと言わんばかりの格好に、八雲は眉間に皺を寄せた。

「何の用だ」

「…お願い。今日はここに泊めて」

「は?」

唐突過ぎるお願いに思わず聞き返してしまう。
そんな八雲の手を取り晴香は懇願した。

「帰りたくないの。ここにいたいの」

涙混じりの鼻声に、ごくりと唾液を飲み込む。
続けざまに投下された爆弾は八雲の心臓をフル稼働させるには充分だった。

「お願い、八雲君…っ」

「わかった、から!…何があった?」

始めは酔っているのかと思った。しかしそうじゃない。
八雲の目には晴香が怯えているように見えた。

肩を押し、話すように宥めてやると晴香は少しずつ語り出す。

「…出たの」

「出た?」

この怯え様。八雲の背筋にいやなものが走る。

「出たって…まさか…」

「ゴキ──」

「それ以上は言わなくていい」

とっさに晴香の口を塞ぐ。
八雲は呆れてものも言えず、ため息を吐いた。

「そんなことか」

真夜中に、無防備な格好で、男の部屋へ、帰りたくないの台詞付きで。
少しでも変な期待をしてしまった数分前の自分を殴りに行きたくなった。

ふごふごと何か言いたそうにしているから、塞いでいた口を解放してやる。

「そんなことってねぇ!」

晴香は八雲に、いかに奴が恐ろしいものなのか熱く語る。
はいはいと生半可な返事にまた腹を立てていると、八雲が出かける準備をしていることに気が付いた。

緑のコートを羽織った八雲は、財布と携帯をポケットに押し込んだ。

「このままここに居座られる方が迷惑だ」

いつだったか八雲にプレゼントしたマフラーと手袋が投げられる。
それをキャッチし顔を上げると八雲はすでに部屋の外にいた。
緩む口元をきゅっと結び、晴香はあとを追いかけた。






他人から見たら、今の僕たちはどのように見られているのか。

真夜中。夜の繁華街を出歩くやんちゃなカップル。
コンビニに立ち寄り、生活品コーナーで話し合う若い男女。

そんな風に見えているのであろう。
現に、盗み見にも関わらず下心丸出しの店員がそこにはいたのだから。

そんな店員に、八雲は堂々と殺虫剤を押しつけてやったのだった。



「随分と便利なものがあるんだな」

説明書きを読みながら八雲はふむと関心していた。
泡が固まり、屍を見ずともさよなら出来るだなんて。

あの店員の顔にも掛けてやればよかった。
だがこんな時間に出歩く男女なんて勘違いされてもおかしくない。

改めて思うと急に恥ずかしくなり、興味もない成分表に目を向けた。

「八雲君、ほら上がって」

「あ、あぁ」

とりあえず顔の赤みは、寒いからということにした。



押されるようにして上がった晴香の部屋に、八雲は眉を寄せた。

この家に来たのは今日が初めてではない。
何度か上がらせてもらったことがあるが、彼女らしい、清潔感のある部屋だったはず。
しかし目の前に広がる部屋に、以前見た部屋の面影はない。

奴と奮闘した気配がぷんぷん残る部屋に、八雲は苦笑いを浮かべた。

「い、いつもはこんなじゃないんだからねっ!」
「はいはい」

「大掃除してたら、出てきちゃったの!」

「はいはい」

「…信じてないでしょ!」

気のない返事に晴香はぷんぷん怒っているようだった。

足元の雑誌を手に取り部屋の中を見渡すが、奴の姿は見えなかった。
ふと玄関の外でこちらを窺う晴香と目が合い八雲は手招く。

「大丈夫だから出てこい

数秒のタイムラグの後、そろりそろりと出てくる晴香。
あいつは借りてきた猫か何かか。
パジャマにカーディガン、マフラーと手袋という妙ちきりんな格好に、猫の耳と尻尾が見えた。

「ほ、本当に何もいない?」

「何もいない」


アレには怯えるくせに、こんな時間には平気で男を家に上げるだなんて。


「ベッドの下とか!タンスの裏も見た?」

「見た」


…いや、僕が上がりこんだのか。

断ろうと思えば断れたんだ。

なのに僕はそれをしなかった。


「……過保護、なのか」

「やっ、八雲君!テーブルの下っ…!!」


テーブルの下にいた熊のキーホルダーに、八雲は雑誌を叩き付けた。






「本当にいたんだから!」

「あぁいたな。熊のキーホルダーが」

「ちがうもん!本当に出たんだから、ゴキブ──」

「それ以上は言わなくていい」

「…そんなことより、雑誌で叩こうとしたよね?」

「………」

「あれ一昨日買ったばかりなんだよ!殺虫剤買ったんだから、そっちを──」

「そういうことは熊のキーホルダーで腰を抜かす前に言え」



二人で過ごす夜は、まだまだ長い。






end.



八雲はG慣れしてそうです。
それに比べて晴香ちゃんは慣れてないイメージ。
ほら、寒い地域って出ないって言いますよね!

この後は腰を抜かした晴香ちゃんに、八雲が朝まで付き合わされるコースで!
ここで襲わねば男じゃないぞ!と応援しつつ、何も出来ないんだろうなとにやりします。
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