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八雲で八晴!
さて日記を見た方はお察しでしょうが今年最後の更新です。
今年最後はやまなちおちなし少し意味ありな、ほのぼのしたお話。
今年もお話を読んで下さりありがとうございました!
また来年も、なにとぞよろしくおねがいします。
八雲/八晴(恋人設定)
さて日記を見た方はお察しでしょうが今年最後の更新です。
今年最後はやまなちおちなし少し意味ありな、ほのぼのしたお話。
今年もお話を読んで下さりありがとうございました!
また来年も、なにとぞよろしくおねがいします。
八雲/八晴(恋人設定)
八雲は耳を疑った。
目の前に立つ晴香の頬はどこか赤く、聞こえてきた言葉が事実であることを物語る。
「だ、だからね。一緒に新年を迎えない…?」
それは彼女からのお誘いでもあり、はじめてのお泊まりでもあった。
そのときは性にも合わずガッツポーズをしそうになった。
だってそうだろう?
僕らの関係は触れるだけの優しいキス止まり。
次に進めることは彼女を知ることにも繋がる。
とても嬉しいことであり、長く待っていた甲斐があった。
しかしその日、つまり今日になって八雲は絶望した。
「はい、冷凍みかん」
隣には晴香がいる。十分幸せじゃないか。
ただし、新幹線に乗っていることを除いて。
「あと30分くらいで長野だって」
「あぁ…」
東京から二時間もかからないなんてすごいなぁ、なんて言いながら冷凍みかんを口にする。
八雲と比べ、至って晴香はのんきである。むしろ楽しそう。
そりゃそうだ。今から生まれ故郷である長野県戸隠、実家に帰るのだから。
“一緒に新年を迎えない?”───
をお誘いだと思っていた八雲は肩透かしを食らいすっかり落ち込んでいた。
我ながら情けないとは思いもしたが、所詮は僕も男。
言いようもない虚無感に、八雲は硬い背もたれに頭をうずめた。
長野県駅に着くと晴香の母親である恵子が軽自動車とともに待っていた。
二人して後部座席に乗り込むと早速からかわれ、晴香が頬を染める。
狭い公共の場から逃れたせいか、肩に乗った重たいものがすっと消えたような気がした。
「でも大晦日に揃って帰ってくるだなんて、夫婦みたいねぇ」
「も、もうお母さんってば!八雲君も困ってるよ!」
「あら?もしかして結婚報告も兼ねての帰省だったり?」
「そんなんじゃないから!」
八雲は流れ行く景色を眺めながら親と子の話に耳を傾けていた。
「で、実際のところどこまで進んだの?」
晴香が小さな声でうっと唸った。
一瞬こちらに視線が向けられるのを感じる。
晴香には事前につきあっていることは秘密に、と強く言われていた。
それは彼女の父親、一裕が深く関係しているのであろう。
彼女の父親に僕は嫌われている。
正確には僕自身ではなく、娘に近付く野蛮な男を嫌っているのであろう。
少しでも平和な年越しを、という晴香のお願いを八雲は断るわけにはいかなかった。
正直に言うと、八雲としても面倒事は避けたかった。
これ以上、彼女の父親に嫌われるのも。
「いっ、いやだなぁお母さん。私と八雲君はそーいうかんけーじゃないよ」
ねっ、と同意を求められたが八雲は無視をした。
そーいうかんけーじゃないことを否定したくもなかったし、巻き込まれたくなかった。
とりあえず欠伸をして「僕は寝る」とだけ返しておいた。
それから数十分。車は無事に晴香の実家に到着した。
家に上がって早々、一裕の醸し出す殺気に八雲は逃げるように頭を下げる。
「さて、晴香には御節料理作るのを手伝ってもらおうかしら」
「まだ出来てなかったの?」
「あなたたちを迎えに行ったせいで時間をロスしちゃったの」
はいはいと言いながら晴香は割烹着を身につける。
一裕と二人きりにされたくない八雲も手伝おうと立ち上がる。
「あ、八雲君には八雲君にしか出来ないお仕事をお願いしようかしら」
そう言って案内されたのは押し入れの前。
天袋から重箱を取ってほしいという、簡単なお仕事だった。
「やっぱり背が高いっていいわねぇ」
「そんなの、腰を痛めてなければ出来てた」
「あなたの場合、脚立がないと無理でしょ」
一裕が悔しそうに口を結ぶ。
「八雲君がお婿さんに来れば良いのに」
恵子の一言に一裕が鬼の形相で八雲を睨む。
とんだとばっちりを受けた八雲は自らの肩身の狭さに溜め息を吐いた。
しかしまあ、家族で過ごす時間というのは見ているだけでも楽しそうで。
酔いもまわり、家族団欒の中に引きずり込まれた八雲も、今はその中で時間を過ごしている。
家族団欒というのも悪くはない。そう思った。
酒の力恐るべしである。
年を越すまでは皆意識はあった。
カウントダウンもした。
除夜の鐘を聞きながら彼女の母親に煩悩がなんちゃらからかわれ、父親に睨まれもした。
しかし年を越してから数時間後である今。
意識があるのは僕だけかもしれない。
「ほら、しっかりしろ」
腕に絡みついている晴香の体を揺する。
ううんと涎を垂らす口元に、蛍光灯の光が反射してやらしく輝くのを見て見ぬふり。
くっついてきたときは焦ったが、一裕が酔いつぶれているの見て胸を撫で下ろした。
年越しそばをお代わりしようと、ざるに盛りつけられた蕎麦に手を伸ばす。
さすがと言うべきか、一裕が打つ蕎麦はとても美味しかった。
「あらあら、二人ともこんなところで寝ちゃって」
台所から帰ってきた恵子は、手を拭きながら八雲の正面に腰を下ろした。
「それで、この子とはどこまで進んだの?」
「…バレてましたか」
八雲は蕎麦を啜る。
酔いが回っているせいか、本心が偽り続けることに疲れてしまったのか。
あっさりと口は正直者になった。
「そんなの親なんだから分かるに決まってるわよ」
まあこの人は気付いてないでしょうけど。
笑いながら言うと、一裕の肩にブランケットを掛け直してやる。
「晴香ったら奥手っていうか、臆病っていうか…とにかく先に進まないでしょ!」
「えぇ、僕も困っています」
「もういっそのこと、押し倒しちゃいなさい!そして無理矢理やっちゃうのよ!」
一瞬、晴香の方へ目が行き、慌てて手元の器に目を向けた。
「…それを娘の彼氏に言いますか?」
「男なんてちょっと強引な方が良いのよ!」
根拠もないのに言い張る。どこか彼女に似ている気がした。
やっぱり親と子は似ているものなのだろうか。
そんな感性に浸っていると、体にしがみついた晴香がもぞもぞと身を動かした。
「やくもくん…」
「起きたか?」
眠たそうな眼で八雲を見上げる晴香。
恵子がやっちゃえやっちゃえと謎のコールをしていた。
「やくもくん…。…ねむい」
「………そうか」
どうやら母親が傍にいることに気付いていないのだろう。
瞼を閉じると、晴香はまたぎゅっと抱きついてきた。
「運ぶのも大変だし、今夜は家族水入らず隣の部屋で寝ましょうか」
よいしょと立ち上がり、恵子は引きずるようにして一裕を隣の部屋に運ぶ。
「ほら、晴香も運んで」
諭されるまま、晴香を抱き上げて隣の部屋に運ぶ。
隣の部屋では恵子が布団を敷いている途中だった。
晴香を部屋の隅に置こうとしたところで、ちょうど目を覚ました。
そして抱き上げられている現状を見て、慌てて降ろさせた。
「きょ、今日はこの部屋で寝るの?」
晴香が髪を耳にかけながら言う。
まだ酔いが醒めていないのか、足取りは不安なもの。
「たまには家族水入らずも良いでしょう?」
八雲が布団を敷くのを手伝うと若いっていいわねぇと言われた。
布団を敷いていてふと疑問に思い、尋ねる。
「四組、ですか?」
いま敷いている布団が四組もあったのだ。
さっき恵子は“家族水入らず”と言ったはず。
家族は、一裕、恵子、晴香の三人のはず…
だから返ってきた返事に八雲は目を見開いた。
「八雲君も家族みたいなものでしょう?」
答えたのは晴香だった。
恵子も同意見だったらしく、にこにこと笑みを浮かべている。
「あっ!で、でも勘違いしないでよお母さん!変な意味じゃなくてね、その」
一人秘密がバレたことを知らない晴香は慌てて弁解する。
その姿があまりにもおかしくて、八雲は声に出して笑った。
「まあ、来年くらいにはもう一人増えてるといいわね」
恵子の言葉に二人が頬を染めたのは言うまでもない。
end.
婿入り探偵シリーズでもよかったかなと思いましたが、ここは初々させたかったのです…!
みなさま、よいおとしを!
目の前に立つ晴香の頬はどこか赤く、聞こえてきた言葉が事実であることを物語る。
「だ、だからね。一緒に新年を迎えない…?」
それは彼女からのお誘いでもあり、はじめてのお泊まりでもあった。
そのときは性にも合わずガッツポーズをしそうになった。
だってそうだろう?
僕らの関係は触れるだけの優しいキス止まり。
次に進めることは彼女を知ることにも繋がる。
とても嬉しいことであり、長く待っていた甲斐があった。
しかしその日、つまり今日になって八雲は絶望した。
「はい、冷凍みかん」
隣には晴香がいる。十分幸せじゃないか。
ただし、新幹線に乗っていることを除いて。
「あと30分くらいで長野だって」
「あぁ…」
東京から二時間もかからないなんてすごいなぁ、なんて言いながら冷凍みかんを口にする。
八雲と比べ、至って晴香はのんきである。むしろ楽しそう。
そりゃそうだ。今から生まれ故郷である長野県戸隠、実家に帰るのだから。
“一緒に新年を迎えない?”───
をお誘いだと思っていた八雲は肩透かしを食らいすっかり落ち込んでいた。
我ながら情けないとは思いもしたが、所詮は僕も男。
言いようもない虚無感に、八雲は硬い背もたれに頭をうずめた。
長野県駅に着くと晴香の母親である恵子が軽自動車とともに待っていた。
二人して後部座席に乗り込むと早速からかわれ、晴香が頬を染める。
狭い公共の場から逃れたせいか、肩に乗った重たいものがすっと消えたような気がした。
「でも大晦日に揃って帰ってくるだなんて、夫婦みたいねぇ」
「も、もうお母さんってば!八雲君も困ってるよ!」
「あら?もしかして結婚報告も兼ねての帰省だったり?」
「そんなんじゃないから!」
八雲は流れ行く景色を眺めながら親と子の話に耳を傾けていた。
「で、実際のところどこまで進んだの?」
晴香が小さな声でうっと唸った。
一瞬こちらに視線が向けられるのを感じる。
晴香には事前につきあっていることは秘密に、と強く言われていた。
それは彼女の父親、一裕が深く関係しているのであろう。
彼女の父親に僕は嫌われている。
正確には僕自身ではなく、娘に近付く野蛮な男を嫌っているのであろう。
少しでも平和な年越しを、という晴香のお願いを八雲は断るわけにはいかなかった。
正直に言うと、八雲としても面倒事は避けたかった。
これ以上、彼女の父親に嫌われるのも。
「いっ、いやだなぁお母さん。私と八雲君はそーいうかんけーじゃないよ」
ねっ、と同意を求められたが八雲は無視をした。
そーいうかんけーじゃないことを否定したくもなかったし、巻き込まれたくなかった。
とりあえず欠伸をして「僕は寝る」とだけ返しておいた。
それから数十分。車は無事に晴香の実家に到着した。
家に上がって早々、一裕の醸し出す殺気に八雲は逃げるように頭を下げる。
「さて、晴香には御節料理作るのを手伝ってもらおうかしら」
「まだ出来てなかったの?」
「あなたたちを迎えに行ったせいで時間をロスしちゃったの」
はいはいと言いながら晴香は割烹着を身につける。
一裕と二人きりにされたくない八雲も手伝おうと立ち上がる。
「あ、八雲君には八雲君にしか出来ないお仕事をお願いしようかしら」
そう言って案内されたのは押し入れの前。
天袋から重箱を取ってほしいという、簡単なお仕事だった。
「やっぱり背が高いっていいわねぇ」
「そんなの、腰を痛めてなければ出来てた」
「あなたの場合、脚立がないと無理でしょ」
一裕が悔しそうに口を結ぶ。
「八雲君がお婿さんに来れば良いのに」
恵子の一言に一裕が鬼の形相で八雲を睨む。
とんだとばっちりを受けた八雲は自らの肩身の狭さに溜め息を吐いた。
しかしまあ、家族で過ごす時間というのは見ているだけでも楽しそうで。
酔いもまわり、家族団欒の中に引きずり込まれた八雲も、今はその中で時間を過ごしている。
家族団欒というのも悪くはない。そう思った。
酒の力恐るべしである。
年を越すまでは皆意識はあった。
カウントダウンもした。
除夜の鐘を聞きながら彼女の母親に煩悩がなんちゃらからかわれ、父親に睨まれもした。
しかし年を越してから数時間後である今。
意識があるのは僕だけかもしれない。
「ほら、しっかりしろ」
腕に絡みついている晴香の体を揺する。
ううんと涎を垂らす口元に、蛍光灯の光が反射してやらしく輝くのを見て見ぬふり。
くっついてきたときは焦ったが、一裕が酔いつぶれているの見て胸を撫で下ろした。
年越しそばをお代わりしようと、ざるに盛りつけられた蕎麦に手を伸ばす。
さすがと言うべきか、一裕が打つ蕎麦はとても美味しかった。
「あらあら、二人ともこんなところで寝ちゃって」
台所から帰ってきた恵子は、手を拭きながら八雲の正面に腰を下ろした。
「それで、この子とはどこまで進んだの?」
「…バレてましたか」
八雲は蕎麦を啜る。
酔いが回っているせいか、本心が偽り続けることに疲れてしまったのか。
あっさりと口は正直者になった。
「そんなの親なんだから分かるに決まってるわよ」
まあこの人は気付いてないでしょうけど。
笑いながら言うと、一裕の肩にブランケットを掛け直してやる。
「晴香ったら奥手っていうか、臆病っていうか…とにかく先に進まないでしょ!」
「えぇ、僕も困っています」
「もういっそのこと、押し倒しちゃいなさい!そして無理矢理やっちゃうのよ!」
一瞬、晴香の方へ目が行き、慌てて手元の器に目を向けた。
「…それを娘の彼氏に言いますか?」
「男なんてちょっと強引な方が良いのよ!」
根拠もないのに言い張る。どこか彼女に似ている気がした。
やっぱり親と子は似ているものなのだろうか。
そんな感性に浸っていると、体にしがみついた晴香がもぞもぞと身を動かした。
「やくもくん…」
「起きたか?」
眠たそうな眼で八雲を見上げる晴香。
恵子がやっちゃえやっちゃえと謎のコールをしていた。
「やくもくん…。…ねむい」
「………そうか」
どうやら母親が傍にいることに気付いていないのだろう。
瞼を閉じると、晴香はまたぎゅっと抱きついてきた。
「運ぶのも大変だし、今夜は家族水入らず隣の部屋で寝ましょうか」
よいしょと立ち上がり、恵子は引きずるようにして一裕を隣の部屋に運ぶ。
「ほら、晴香も運んで」
諭されるまま、晴香を抱き上げて隣の部屋に運ぶ。
隣の部屋では恵子が布団を敷いている途中だった。
晴香を部屋の隅に置こうとしたところで、ちょうど目を覚ました。
そして抱き上げられている現状を見て、慌てて降ろさせた。
「きょ、今日はこの部屋で寝るの?」
晴香が髪を耳にかけながら言う。
まだ酔いが醒めていないのか、足取りは不安なもの。
「たまには家族水入らずも良いでしょう?」
八雲が布団を敷くのを手伝うと若いっていいわねぇと言われた。
布団を敷いていてふと疑問に思い、尋ねる。
「四組、ですか?」
いま敷いている布団が四組もあったのだ。
さっき恵子は“家族水入らず”と言ったはず。
家族は、一裕、恵子、晴香の三人のはず…
だから返ってきた返事に八雲は目を見開いた。
「八雲君も家族みたいなものでしょう?」
答えたのは晴香だった。
恵子も同意見だったらしく、にこにこと笑みを浮かべている。
「あっ!で、でも勘違いしないでよお母さん!変な意味じゃなくてね、その」
一人秘密がバレたことを知らない晴香は慌てて弁解する。
その姿があまりにもおかしくて、八雲は声に出して笑った。
「まあ、来年くらいにはもう一人増えてるといいわね」
恵子の言葉に二人が頬を染めたのは言うまでもない。
end.
婿入り探偵シリーズでもよかったかなと思いましたが、ここは初々させたかったのです…!
みなさま、よいおとしを!
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