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八雲で赤頭巾。
二週連続で赤頭巾パロです。
きっと、次回も赤頭巾。
赤頭巾パロ。
二週連続で赤頭巾パロです。
きっと、次回も赤頭巾。
赤頭巾パロ。
しんしんと降り積もる雪の上を晴香は目的地目指して駆ける。
森に入ってしばらく進んだ先にある秘密の花園。
彼と私が出逢った、はじまりの場所。
そこにそびえ立つ樹齢何百年の一本桜の下。
八雲と晴香は待ち合わせの約束をしていた。
待ち合わせ場所に先に辿り着いたのは晴香だった。
時間にルーズな彼のことだから予想はしていたけれど。
バスケットから鏡を取り出した晴香は、髪型を整える。
ここまで走ってしまったため、早起きして整えてきた髪が台無しだ。
晴香でも迷わずに辿り着けるこの場所。
少し前までは八雲に家の裏まで迎えに来て貰っていた。
しかし先日、綾香に見つかり、それ以来この場所が二人の待ち合わせ場所となっていた。
「狼さん、まだかなぁ」
木に寄りかかりながら時計を確認する晴香。
雪の積もった花畑の上をウサギがぴょんぴょんと跳ねる。
何か思い当たったように声を漏らした晴香は、雪を蹴る足を見つめた。
「……八雲君、まだかな」
言い直した言葉に晴香は赤面する。
本人がいなくても、名前で呼ぶのはやっぱり恥ずかしい。
そのときウサギが草むらに飛び込む。
背後に気配を感じ振り返ると、そこには三角の耳とふさふさの尾を持つ八雲がいた。
「お、おはよう!」
聞かれちゃったかなと鼓動が速まったが、その心配はなかったよう。
相変わらずの眠たそうな目は、いつにも増して重たそうである。
「狼さん?」
不思議に思い声をかけると睨まれ、慌てて「八雲君」と言い直す。
練習しても頬はやっぱり朱色に染まった。
からかわれるかと思った晴香は俯くも、八雲は何も言わない。
やっぱりおかしい。
まじまじ八雲を見ていると、微かだが震えていることに気が付く。
「どうしたの?」
八雲は鼻をすすると素直に答えた。
「崖から落ちた」
「えっ」
「気を失っていたら、雪に埋まった」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って」
それから八雲に聞いたことも合わせ、整理するとこういうことだった。
昨夜、夜の散歩に出た八雲は崖の縁を歩いていたそう。
すると足元の雪が崩れ、そのまま崖の下まで滑り落ち意識を失ってしまい。
目が覚めると朝で、雪の中に埋まっていたそうだ。
大きな怪我をしていないことを確認し、晴香はほっと胸を撫で下ろす。
多少の擦り傷はあるようだが、命の心配はなさそう。
「八雲君って意外とドジなんだね」
名前で、敬語もなしで言ってやったのに八雲に睨まれる。
「僕のことはいい。今日はどこに行きたい?」
そう言って握られた手があまりにも冷たくて、晴香はぎょっとした。
思わず手を離すとまた八雲に睨まれた。
「ち、違うの!手…っ!」
「?」
八雲は自らの手を見る。
「何がおかしい?」
「ひゃぁっ!」
冷たい手で首に触られ、思わず晴香は声を漏らす。
けらけら笑う八雲にお返ししてやろうと、触れた八雲の首の熱さに晴香はまたぎょっとした。
「狼さん!」
頭を両手で挟み無理矢理引き寄せ、額と額をコツンと合わせる。
いつもはキスやらなにやら。
これ見よがしに襲ってくる八雲が、今日は別人のように大人しかった。
「熱があるじゃない…!」
晴香に手を引かれ辿り着いたのは彼女の家。
誰かに見られたらどうするんだという心配をよそに、八雲は風呂に押し込まれた。
「すごい匂いだ」
自らから放たれる石鹸の匂いに顔を歪め、風呂場から出る。
嗅覚の優れた八雲にとって、石鹸の匂いは強かった。
「……?」
入るときに脱いだシャツが無い。
…代わりに見知らぬジャージが畳まれており、八雲は眉を寄せる。
隣では洗濯機がごうんごうんと音を立てながら回っていた。
「これを着ろということか?」
とりあえずジャージに袖を通し、廊下に出る。
準備のいいことに下着まであり八雲は驚いた。
着慣れぬジャージの肌触りがざわざわとくすぐったい。
とにかくどこへ行けばいいものかと辺りを見渡した。
彼女の家に来るのははじめてではない。
しかし入ったことがあるのは彼女の部屋だけ。
しかも泥棒のように窓からの侵入。
それ以外の場所に立つことがなければ、立つ資格もない。
玄関から入ることすら初めての八雲は、見慣れぬ匂いに思わず身構えた。
そんな八雲に安堵をもたらしたのは、赤い頭巾を掛けた晴香だった。
「こっちこっち」
ドアからひょいと顔を出し手招きをする。
大人しく着いていった先は、嗅ぎ慣れた匂いで溢れる晴香の部屋だった。
けれど八雲はそわそわと落ち着かない。
晴香が首を傾げるとぼそっと八雲は訪ねた。
「君の家族はどうした」
「お昼のピーク時だから、みんなお店の方です」
「君は手伝わなくていいのか?」
「私が手伝うとますます仕事が増えちゃうので」
苦笑を浮かべる横顔がどこか寂しげに見えたのは気のせいか。
顔を上げた晴香はいつもの元気が取り柄の晴香だった。
「サイズが合ってたみたいでよかった!」
言いながら晴香はジャージのファスナーを上まで締める。
息苦しさに堪えながら、このジャージはなんだと目で訪ねる。
「狼さんがお風呂に入ってる間に買ってきたの!」
「な・ま・え」
「……もう!八雲君、がお風呂に入ってる間に買ってきましたっ!」
「僕のシャツはどうした」
「洗濯中です」
腕を引かれ無理矢理座らせられる。
途端に聞こえるごおという音に、八雲は尾を膨らました。
「な、なんだそれは!」
飛び起きた八雲は同じように座っていた晴香を睨む。
手にはドライヤーが握られている。
「そのままじゃ、ますます悪化する一方ですよ」
そこで自らが風邪をひいていることを思い出した。
風邪のひき始めなのか自覚がない。
少し体が重いような気もするがつらくはない。
さっきまで寒かった体も、シャワーを浴びたおかげですっかり暖まった。
「ドライヤーは怖くないよ、大丈夫だよ」
ちちちと舌を鳴らす晴香が、犬や猫を構う姿に見えるのは気のせいか。
大人しく座る八雲の尾に晴香は温かい風を送る。
毛の量が多いため、乾かすのに時間がかかった。
八雲は晴香の作ってくれたお粥を口にしながら、乾くのを待った。
「そういえば」
思い出したとぽんと手を叩く。
「狼さ…じゃなかった八雲君のポケットにこんなのが入ってたんだけど」
晴香は机の上から一輪の白い花を見せた。
明らかに八雲の表情が変わったのを見逃さない。
「これ、どうしたんですか?」
花を手に、八雲に躙り寄る。
後ろへ下がった八雲だがそう広くはない部屋。
すぐに背中が壁に付いた。
逃げ場を失った八雲は顔を背ける。
八雲と縁のない花。
八雲のこの聞かれたくないという表情。
かわいいものは虐めたくなる。
晴香の知らない感情が心の内からじわりじわりと染み渡り。
「かわいい!」
「!?」
ぎゅっと八雲を抱きしめた。
「狼さん狼さん、このお花はどうしたんですか?」
「……なまえ」
少し前の八雲とは大違い。
いつもはぴんと張った耳も弱気に垂れていた。
「教えて、八雲君?」
呼ばれた名前に含まれた甘い雰囲気に、八雲は頬を染める。
「…君にあげようと思って」
「もしかして、このお花を取るために崖に近付いたんですか?」
「………」
何も言わないのは肯定。
「大好き!」と飛びついてきた晴香の肩に、八雲はまた頬を染めた。
end.
続きます。
森に入ってしばらく進んだ先にある秘密の花園。
彼と私が出逢った、はじまりの場所。
そこにそびえ立つ樹齢何百年の一本桜の下。
八雲と晴香は待ち合わせの約束をしていた。
待ち合わせ場所に先に辿り着いたのは晴香だった。
時間にルーズな彼のことだから予想はしていたけれど。
バスケットから鏡を取り出した晴香は、髪型を整える。
ここまで走ってしまったため、早起きして整えてきた髪が台無しだ。
晴香でも迷わずに辿り着けるこの場所。
少し前までは八雲に家の裏まで迎えに来て貰っていた。
しかし先日、綾香に見つかり、それ以来この場所が二人の待ち合わせ場所となっていた。
「狼さん、まだかなぁ」
木に寄りかかりながら時計を確認する晴香。
雪の積もった花畑の上をウサギがぴょんぴょんと跳ねる。
何か思い当たったように声を漏らした晴香は、雪を蹴る足を見つめた。
「……八雲君、まだかな」
言い直した言葉に晴香は赤面する。
本人がいなくても、名前で呼ぶのはやっぱり恥ずかしい。
そのときウサギが草むらに飛び込む。
背後に気配を感じ振り返ると、そこには三角の耳とふさふさの尾を持つ八雲がいた。
「お、おはよう!」
聞かれちゃったかなと鼓動が速まったが、その心配はなかったよう。
相変わらずの眠たそうな目は、いつにも増して重たそうである。
「狼さん?」
不思議に思い声をかけると睨まれ、慌てて「八雲君」と言い直す。
練習しても頬はやっぱり朱色に染まった。
からかわれるかと思った晴香は俯くも、八雲は何も言わない。
やっぱりおかしい。
まじまじ八雲を見ていると、微かだが震えていることに気が付く。
「どうしたの?」
八雲は鼻をすすると素直に答えた。
「崖から落ちた」
「えっ」
「気を失っていたら、雪に埋まった」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って」
それから八雲に聞いたことも合わせ、整理するとこういうことだった。
昨夜、夜の散歩に出た八雲は崖の縁を歩いていたそう。
すると足元の雪が崩れ、そのまま崖の下まで滑り落ち意識を失ってしまい。
目が覚めると朝で、雪の中に埋まっていたそうだ。
大きな怪我をしていないことを確認し、晴香はほっと胸を撫で下ろす。
多少の擦り傷はあるようだが、命の心配はなさそう。
「八雲君って意外とドジなんだね」
名前で、敬語もなしで言ってやったのに八雲に睨まれる。
「僕のことはいい。今日はどこに行きたい?」
そう言って握られた手があまりにも冷たくて、晴香はぎょっとした。
思わず手を離すとまた八雲に睨まれた。
「ち、違うの!手…っ!」
「?」
八雲は自らの手を見る。
「何がおかしい?」
「ひゃぁっ!」
冷たい手で首に触られ、思わず晴香は声を漏らす。
けらけら笑う八雲にお返ししてやろうと、触れた八雲の首の熱さに晴香はまたぎょっとした。
「狼さん!」
頭を両手で挟み無理矢理引き寄せ、額と額をコツンと合わせる。
いつもはキスやらなにやら。
これ見よがしに襲ってくる八雲が、今日は別人のように大人しかった。
「熱があるじゃない…!」
晴香に手を引かれ辿り着いたのは彼女の家。
誰かに見られたらどうするんだという心配をよそに、八雲は風呂に押し込まれた。
「すごい匂いだ」
自らから放たれる石鹸の匂いに顔を歪め、風呂場から出る。
嗅覚の優れた八雲にとって、石鹸の匂いは強かった。
「……?」
入るときに脱いだシャツが無い。
…代わりに見知らぬジャージが畳まれており、八雲は眉を寄せる。
隣では洗濯機がごうんごうんと音を立てながら回っていた。
「これを着ろということか?」
とりあえずジャージに袖を通し、廊下に出る。
準備のいいことに下着まであり八雲は驚いた。
着慣れぬジャージの肌触りがざわざわとくすぐったい。
とにかくどこへ行けばいいものかと辺りを見渡した。
彼女の家に来るのははじめてではない。
しかし入ったことがあるのは彼女の部屋だけ。
しかも泥棒のように窓からの侵入。
それ以外の場所に立つことがなければ、立つ資格もない。
玄関から入ることすら初めての八雲は、見慣れぬ匂いに思わず身構えた。
そんな八雲に安堵をもたらしたのは、赤い頭巾を掛けた晴香だった。
「こっちこっち」
ドアからひょいと顔を出し手招きをする。
大人しく着いていった先は、嗅ぎ慣れた匂いで溢れる晴香の部屋だった。
けれど八雲はそわそわと落ち着かない。
晴香が首を傾げるとぼそっと八雲は訪ねた。
「君の家族はどうした」
「お昼のピーク時だから、みんなお店の方です」
「君は手伝わなくていいのか?」
「私が手伝うとますます仕事が増えちゃうので」
苦笑を浮かべる横顔がどこか寂しげに見えたのは気のせいか。
顔を上げた晴香はいつもの元気が取り柄の晴香だった。
「サイズが合ってたみたいでよかった!」
言いながら晴香はジャージのファスナーを上まで締める。
息苦しさに堪えながら、このジャージはなんだと目で訪ねる。
「狼さんがお風呂に入ってる間に買ってきたの!」
「な・ま・え」
「……もう!八雲君、がお風呂に入ってる間に買ってきましたっ!」
「僕のシャツはどうした」
「洗濯中です」
腕を引かれ無理矢理座らせられる。
途端に聞こえるごおという音に、八雲は尾を膨らました。
「な、なんだそれは!」
飛び起きた八雲は同じように座っていた晴香を睨む。
手にはドライヤーが握られている。
「そのままじゃ、ますます悪化する一方ですよ」
そこで自らが風邪をひいていることを思い出した。
風邪のひき始めなのか自覚がない。
少し体が重いような気もするがつらくはない。
さっきまで寒かった体も、シャワーを浴びたおかげですっかり暖まった。
「ドライヤーは怖くないよ、大丈夫だよ」
ちちちと舌を鳴らす晴香が、犬や猫を構う姿に見えるのは気のせいか。
大人しく座る八雲の尾に晴香は温かい風を送る。
毛の量が多いため、乾かすのに時間がかかった。
八雲は晴香の作ってくれたお粥を口にしながら、乾くのを待った。
「そういえば」
思い出したとぽんと手を叩く。
「狼さ…じゃなかった八雲君のポケットにこんなのが入ってたんだけど」
晴香は机の上から一輪の白い花を見せた。
明らかに八雲の表情が変わったのを見逃さない。
「これ、どうしたんですか?」
花を手に、八雲に躙り寄る。
後ろへ下がった八雲だがそう広くはない部屋。
すぐに背中が壁に付いた。
逃げ場を失った八雲は顔を背ける。
八雲と縁のない花。
八雲のこの聞かれたくないという表情。
かわいいものは虐めたくなる。
晴香の知らない感情が心の内からじわりじわりと染み渡り。
「かわいい!」
「!?」
ぎゅっと八雲を抱きしめた。
「狼さん狼さん、このお花はどうしたんですか?」
「……なまえ」
少し前の八雲とは大違い。
いつもはぴんと張った耳も弱気に垂れていた。
「教えて、八雲君?」
呼ばれた名前に含まれた甘い雰囲気に、八雲は頬を染める。
「…君にあげようと思って」
「もしかして、このお花を取るために崖に近付いたんですか?」
「………」
何も言わないのは肯定。
「大好き!」と飛びついてきた晴香の肩に、八雲はまた頬を染めた。
end.
続きます。
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