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八雲で八晴。
上げるのを忘れていました…
今は春休みでしょうが、気持ちは冬休みで!
八雲九巻フラゲしましたので、今夜は徹夜!
うひゃっほい!
八雲/八晴
上げるのを忘れていました…
今は春休みでしょうが、気持ちは冬休みで!
八雲九巻フラゲしましたので、今夜は徹夜!
うひゃっほい!
八雲/八晴
思い出とはいつかは忘れてしまうもの。
日記に残したり写真に写したとしても、あのときには戻れない。
すべてを思い出すことは出来ない。
そのときに何を感じ、思い、願ったのか。
少しずつ忘れてしまうことに、私は恐怖を覚えた。
四角い窓枠に切り取られた青空を、一羽の小鳥が弧を描きながら過ぎ去った。
吹き込む冬の冷たい風が、空豆色のカーテンをゆらゆらと揺らしている。
長野県戸隠。
久しぶりに見せた青空に浮かぶ太陽が、地上の雪を宝石のように輝かせている。
冬休みを利用して実家に帰省している晴香は、自宅二階の部屋でアルバムを広げていた。
アルバムは晴香と、姉である綾香の写真で埋まっている。
父と母にとって初めての子供だったからか、何気ない写真がたくさんだ。
中には目を凝らしても違いが分からないような、間違い探しのようなものまである。
そんな写真を見つける度に、晴香は写真を指でなぞりながら違いを探した。
夢中になって写真を見ていたため、背後から近付いてくる人影に気付けなかった。
「ふふっ」
「一人で笑うだなんて、ついに頭がおかしくなったのか」
それからため息。
振り返るとそこには白い顔をした八雲がいた。
だが鼻先だけはクリスマスのトナカイのように赤い。
どうせ暇ならばと、八雲も実家に連れてきていた。
最初はしぶしぶといった様子の八雲も、数日経った今ではここでの生活に慣れ快適そうである。
「雪下ろし、お疲れさま」
「君の父親は誰かさんにそっくりで人使いが荒い」
鼻を鳴らした八雲はヒーターの前にしゃがみ、手を暖め始める。
苦笑を浮かべた晴香はアルバムを捲る作業に戻った。
「息子が出来たみたいで嬉しそうだったけどなぁ」
アルバムは捲っても捲っても、女の子らしい色に染まっている。
写真を飾る色紙も、言葉を連なる文字も。
母が選んだであろう淡い色が中心。
八雲を嫌いつつも、父は八雲を息子のように思っている。
想像でしかないが晴香は密かに考えていた。
「君の家には男の子がいなかったか?」
浮かれる晴香の目の前で八雲がアルバムを差す。
そこに写っていたのは幼い頃の晴香だった。
「ちょっと、それどういう意味よ」
「この子は男じゃないのか?」
驚愕してわざとらしく肩を竦める八雲に、晴香は思わず声を荒げた。
「私は女の子です!」
確かに、あの頃は男の子に間違われることもあった。
可愛く清楚な姉と生傷の絶えないやんちゃな妹。
そんな対なる二人が並んでいたからでもあろう。
出向かう先々で、私は男の子に間違われた。
でも、姉はその度に注意をしてくれて、私は嬉しかった。
自慢のお姉ちゃんだった。
晴香がそう言うと、八雲は「僕には理解出来ない」と言った。
「この気持ちは妹にしか分からないのよ。…たぶん」
「なんだそれは」
気付いたら八雲の鼻先は赤くなくなっていた。
隣に腰を下ろしアルバムに目を向ける。
自らの幼少期を見られるというのは、どうもこそばゆい。
アルバムを閉じようとした矢先、八雲に先手を打たれた。
八雲の白くて骨張った指が写真の中の晴香をなぞる。
「君は変わらないな」
「…どういう意味よ」
わざととはいえ、男に間違えられたばかり。
晴香は八雲を威嚇するように睨む。
しかし八雲はそれ以上なにも言わなかった。
途中でお風呂に入ってる写真を見つけ慌てたが、顔色一つ変えない八雲に晴香は張り手を決めてやった。
アルバムを捲るにつれて年を取ってゆく。
姉が亡くなってから、写真を撮ることが減った。
アルバムの残りは少ない。
ページを捲る手が自然と重たくなる。
「お姉ちゃん、可愛かったでしょ」
「そうだな」
あっさり認めてしまう八雲に晴香は思わず凝視する。
自慢の姉を認められた嬉しさ。
しかし可愛いと認めた相手は恋する彼。
複雑な感情たちが天秤を揺らすも、やっぱり自慢の姉を認められたのは嬉しかった。
「お姉ちゃんが生きてたら八雲君はお姉ちゃんと付き合ってたのかなぁ」
「は?」
「美男美女のお似合いカップルだったんだろうね」
「おい」
「あーあ…羨ましい」
上を見上げた晴香の頬を、涙が滑り落ちていった。
そこで晴香は自らが泣いていることに気が付いた。
「お姉ちゃんはモテモテだったんだよ」
それきり晴香は涙を隠すように俯いてしまう。
隣で静かに泣かれ、八雲は困惑する。
静寂が包む部屋の中、堪えるようにすすり泣く晴香に八雲は手を伸ばした。
しかし肩先に触れた手は、引っ込んでしまった。
「こういうとき、どうすればいいのかわからないんだ」
口の中ですまないと謝る。
驚いた晴香は顔を上げ、また俯いて言った。
「抱きしめれば良いと思う」
八雲の脳裏に、暗い本堂での出来事がフラッシュバックする。
震える僕を、彼女は静かに抱き締めてくれた。
「でも八雲君には似合わないね」
そう言って顔を上げた晴香は、涙を見せながら笑った。
笑顔の裏に潜む悲しい顔に、胸が締め付けられる。
腕を伸ばしていた八雲は、引き寄せるように晴香を抱き締めた。
晴香も恐る恐る八雲の背中に手を回す。
顔が見られないことにほっとしたのか、涙をぽろぽろ零した。
「お姉ちゃんのことは大好きなのに、思い出すのは辛いよ」
「だからって忘れるのはもっと辛いんだろ」
「…うんっ」
「そういうときは泣いてもいい。僕がそばにいる」
晴香は声を漏らしながら泣いた。
階下に母がいるからか、声を押し殺すように八雲の胸に顔を埋めて。
八雲は晴香が泣きやむまで、小さな背中を抱き締めてやった。
「こういうときばかり優しいずるい」
しゃくりあげながら晴香は言う。
八雲は子を寝かしつけるように、背中をぽんぽんと叩いてやる。
「このあとはどうすればいい」
「自分で考えて」
潤んだ瞳で八雲を睨む。
しかし、その瞳は期待に熱を帯びていた。
困ったように苦笑しつつも、八雲は晴香に触れるだけの優しいキスをした。
end.
短い!
日記に残したり写真に写したとしても、あのときには戻れない。
すべてを思い出すことは出来ない。
そのときに何を感じ、思い、願ったのか。
少しずつ忘れてしまうことに、私は恐怖を覚えた。
四角い窓枠に切り取られた青空を、一羽の小鳥が弧を描きながら過ぎ去った。
吹き込む冬の冷たい風が、空豆色のカーテンをゆらゆらと揺らしている。
長野県戸隠。
久しぶりに見せた青空に浮かぶ太陽が、地上の雪を宝石のように輝かせている。
冬休みを利用して実家に帰省している晴香は、自宅二階の部屋でアルバムを広げていた。
アルバムは晴香と、姉である綾香の写真で埋まっている。
父と母にとって初めての子供だったからか、何気ない写真がたくさんだ。
中には目を凝らしても違いが分からないような、間違い探しのようなものまである。
そんな写真を見つける度に、晴香は写真を指でなぞりながら違いを探した。
夢中になって写真を見ていたため、背後から近付いてくる人影に気付けなかった。
「ふふっ」
「一人で笑うだなんて、ついに頭がおかしくなったのか」
それからため息。
振り返るとそこには白い顔をした八雲がいた。
だが鼻先だけはクリスマスのトナカイのように赤い。
どうせ暇ならばと、八雲も実家に連れてきていた。
最初はしぶしぶといった様子の八雲も、数日経った今ではここでの生活に慣れ快適そうである。
「雪下ろし、お疲れさま」
「君の父親は誰かさんにそっくりで人使いが荒い」
鼻を鳴らした八雲はヒーターの前にしゃがみ、手を暖め始める。
苦笑を浮かべた晴香はアルバムを捲る作業に戻った。
「息子が出来たみたいで嬉しそうだったけどなぁ」
アルバムは捲っても捲っても、女の子らしい色に染まっている。
写真を飾る色紙も、言葉を連なる文字も。
母が選んだであろう淡い色が中心。
八雲を嫌いつつも、父は八雲を息子のように思っている。
想像でしかないが晴香は密かに考えていた。
「君の家には男の子がいなかったか?」
浮かれる晴香の目の前で八雲がアルバムを差す。
そこに写っていたのは幼い頃の晴香だった。
「ちょっと、それどういう意味よ」
「この子は男じゃないのか?」
驚愕してわざとらしく肩を竦める八雲に、晴香は思わず声を荒げた。
「私は女の子です!」
確かに、あの頃は男の子に間違われることもあった。
可愛く清楚な姉と生傷の絶えないやんちゃな妹。
そんな対なる二人が並んでいたからでもあろう。
出向かう先々で、私は男の子に間違われた。
でも、姉はその度に注意をしてくれて、私は嬉しかった。
自慢のお姉ちゃんだった。
晴香がそう言うと、八雲は「僕には理解出来ない」と言った。
「この気持ちは妹にしか分からないのよ。…たぶん」
「なんだそれは」
気付いたら八雲の鼻先は赤くなくなっていた。
隣に腰を下ろしアルバムに目を向ける。
自らの幼少期を見られるというのは、どうもこそばゆい。
アルバムを閉じようとした矢先、八雲に先手を打たれた。
八雲の白くて骨張った指が写真の中の晴香をなぞる。
「君は変わらないな」
「…どういう意味よ」
わざととはいえ、男に間違えられたばかり。
晴香は八雲を威嚇するように睨む。
しかし八雲はそれ以上なにも言わなかった。
途中でお風呂に入ってる写真を見つけ慌てたが、顔色一つ変えない八雲に晴香は張り手を決めてやった。
アルバムを捲るにつれて年を取ってゆく。
姉が亡くなってから、写真を撮ることが減った。
アルバムの残りは少ない。
ページを捲る手が自然と重たくなる。
「お姉ちゃん、可愛かったでしょ」
「そうだな」
あっさり認めてしまう八雲に晴香は思わず凝視する。
自慢の姉を認められた嬉しさ。
しかし可愛いと認めた相手は恋する彼。
複雑な感情たちが天秤を揺らすも、やっぱり自慢の姉を認められたのは嬉しかった。
「お姉ちゃんが生きてたら八雲君はお姉ちゃんと付き合ってたのかなぁ」
「は?」
「美男美女のお似合いカップルだったんだろうね」
「おい」
「あーあ…羨ましい」
上を見上げた晴香の頬を、涙が滑り落ちていった。
そこで晴香は自らが泣いていることに気が付いた。
「お姉ちゃんはモテモテだったんだよ」
それきり晴香は涙を隠すように俯いてしまう。
隣で静かに泣かれ、八雲は困惑する。
静寂が包む部屋の中、堪えるようにすすり泣く晴香に八雲は手を伸ばした。
しかし肩先に触れた手は、引っ込んでしまった。
「こういうとき、どうすればいいのかわからないんだ」
口の中ですまないと謝る。
驚いた晴香は顔を上げ、また俯いて言った。
「抱きしめれば良いと思う」
八雲の脳裏に、暗い本堂での出来事がフラッシュバックする。
震える僕を、彼女は静かに抱き締めてくれた。
「でも八雲君には似合わないね」
そう言って顔を上げた晴香は、涙を見せながら笑った。
笑顔の裏に潜む悲しい顔に、胸が締め付けられる。
腕を伸ばしていた八雲は、引き寄せるように晴香を抱き締めた。
晴香も恐る恐る八雲の背中に手を回す。
顔が見られないことにほっとしたのか、涙をぽろぽろ零した。
「お姉ちゃんのことは大好きなのに、思い出すのは辛いよ」
「だからって忘れるのはもっと辛いんだろ」
「…うんっ」
「そういうときは泣いてもいい。僕がそばにいる」
晴香は声を漏らしながら泣いた。
階下に母がいるからか、声を押し殺すように八雲の胸に顔を埋めて。
八雲は晴香が泣きやむまで、小さな背中を抱き締めてやった。
「こういうときばかり優しいずるい」
しゃくりあげながら晴香は言う。
八雲は子を寝かしつけるように、背中をぽんぽんと叩いてやる。
「このあとはどうすればいい」
「自分で考えて」
潤んだ瞳で八雲を睨む。
しかし、その瞳は期待に熱を帯びていた。
困ったように苦笑しつつも、八雲は晴香に触れるだけの優しいキスをした。
end.
短い!
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