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八雲で八晴です。
一応は友人設定ですが、もしや、こやつら、付き合って…?
な関係です。
台風があった日に書いたのですが、ずいぶんと間が空いてしまいました。
続きものです。
八雲/八晴(友人設定?)
一応は友人設定ですが、もしや、こやつら、付き合って…?
な関係です。
台風があった日に書いたのですが、ずいぶんと間が空いてしまいました。
続きものです。
八雲/八晴(友人設定?)
「ひゃあっ!」
開いたドアの向こうから、ごうごうと風の音に紛れて小さな悲鳴が聞こえた。
八雲が顔を上げて確認するまでもない。
そこには風に吹かれるがまま、栗色の髪を揺らす晴香の姿があった。
「いいからドアを閉めろ」
「う、うん」
こんな天気だ。さすがの八雲も晴香を追い出す気にはならない。
今、日本全域に台風並みの暴風雨が直撃しているそうだ。
この辺りはまだピークに達していないそうだが、昼過ぎから風と雨が窓を叩いている。
まだ酷くなるのか、とのんきに八雲は晴香に目を向けた。
「も、すごい!すごいのっ!さっきも傘がひっくり返っちゃって!」
そう言う晴香の手には、骨の折れた傘がだるそうにしている。
「ここに来るのも大変だったんだから!」
「誰も来いとは言ってない」
晴香が子供のように頬を膨らます。
「八雲君が怖がってるんじゃないか心配だったの!」
「余計なお世話だ」
目の前の席に腰を下ろす。
濡れたスカートが気持ち悪かったのか、顔をしかめていた。
「君こそ早く帰らなくていいのか?」
「そりゃ帰ろうと思ったよ」
「じゃあなんで…」
言い掛けた八雲の目に、無残な姿の傘が映る。
「えへへ」
晴香が照れくさそうに舌を出した。
「何がえへへだ。傘ぐらい貸してやるから、今日は早く帰れ」
晴香が驚いたように目を丸くする。
「八雲君が傘を貸してくれるだなんて…意外…」
「…追い出すぞ」
「嘘うそっ。お言葉に甘えて、借りてくね」
「………」
なんというか。
ここのところ、空回りしてばかりな気がする。
いや、空回りしているのではなく、彼女に振り回されているのかもしれない。
八雲はがりがりと寝癖だらけの髪を掻く。
それで止まった歯車が動き出すようなことはなく、胸のムカムカが消えることもなかった。
晴香がロッカーに足を向けたその時。
じじっと羽虫が羽を擦らせたような音が頭上から聞こえたかと思えば、世界が暗転した。
「きゃあ!」
晴香の悲鳴が聞こえる。
ごうごうと空気口を走る風の音も聞こえる。
「な、何?なになになに!?」
慌てふためく晴香に比べ、八雲は至って冷静だった。
慌てる人間がいたからこそ、冷静でいられたのかもしれないと八雲は思った。
天井を見上げると、蛍光灯が消えている。
部屋の中よりも、窓の外の方が明るい。
「停電、か…」
「て、停電!?」
「いちいちうるさい」
耳を塞いでうるさいとアピールをしたが、この暗闇の中、晴香には見えたのだろうか。
「きゃあきゃあ」と悲鳴を上げ続ける晴香に、八雲は溜め息を吐く。
「君は犬か何かか」
「だ、だってだって!八雲君どこ?」
「僕はここにいる」
「えっ、どこ?ねぇってば」
パニックになっているのだろう。
地を這うような衣擦れの音の後、ガンとロッカーがある辺りから音がした。
「っ〜!」
声にならない声が上がる。
「ああもう」と舌打ち混じりに髪を掻き、八雲は立ち上がった。
携帯電話の画面を床に突きつけるようにして晴香を探す。
ロッカーの前で頭を抱え、しゃがみ込む晴香を見つけた。
「君は本当にバカだな」
返事は返ってこない。
代わりに停電を知らせる緊急放送が耳に届いた。
どうやら大学内の電線が節電したらしく、被害はここだけのようだ。
「立てるか?」
「う、うぅん…」
それが「うん」なのか「ううん」なのかは分からない。
しかし晴香が立ち上がろうとしているから「うん」なのだろう。
八雲に手伝われながらも、晴香は立ち上がる。
生まれたての小鹿のように弱々しい。
「あ、ありがとう」
頭痛がするらしく、壁に手を突いて体を支えている。
あの音からして、随分と勢い良くロッカーに頭をぶつけたらしい。
「………」
開いたままの携帯電話を晴香に預け、八雲は冷蔵庫へ向かう。
年中この場所にいるせいか、暗闇でも冷蔵庫の場所は分かった。
開けた冷蔵庫の中も、当たり前だが真っ暗だった。
「それで冷やしておけ」
ペットボトルのお茶を晴香に渡す。
投げようとしたが、頭を押さえる晴香と視界の悪さに断念した。
「八雲君…!」
暗闇の中でも、晴香の瞳が輝いていることが分かった。
視線を逸らすように、要冷蔵のものはないかと冷蔵庫へ目を向ける。
しかし冷蔵庫の中にはペットボトルしかなかった。
あとは部室の鍵やら歯磨きやら。
「…ってこれ、私の飲み物じゃない!」
晴香の突っ込みに、八雲は暗闇に紛れて胸を撫で下ろした。
暗闇に目が慣れ出した頃。
八雲はロッカーから傘を取り出した。
「二本?」
晴香は首を傾げる。
その通り、八雲の手にはビニール傘が二本握られていた。
「夕飯を買いに行かないといけないんだ」
これは事実。
冷蔵庫の中には飲み物しかないし、どこかで夕飯を調達しないといけないのだ。
一食ぐらいどうってことないが、あいにく昼食も抜いていた。
さすがに胃袋が空腹を訴えている。
「途中まで送っていく」
晴香に傘を渡しドアを開けた。
びゅんと風が頬を切り、部屋の中のプリント類を巻き上げる。
早く来いと目で訴える。
「じ、じゃあさ!」
慌てて飛び出した晴香は、顔を上げて八雲を見上げた。
「うちで夕飯、食べていかない?」
久しぶりに明るいところで見た晴香の顔は、火照っているようだった。
「君の家で…?」
「う、うん!私としては家まで送ってもらえるし、八雲君だってタダでご飯が食べれるんだよ?」
「タダ、か…」
その言葉に八雲は誘われるように生唾を飲む。
正直に言うと、今月はピンチだった。
思わぬところで出費があり、そのため昼食も抜きにしていたのだ。
「八雲君にとっても悪い案じゃないと思うんだけど…」
ちらりと晴香が見上げる。
「…それは、食べれるものなんだろうな?」
「まっかせなさい!」
ふんと鼻を鳴らし、ガッツポーズをする。
バサバサと風に揺られる髪のせいか、やけに説得力を感じた。
というより、闘いに出る戦士のように見えた。
ふっと吐息を吐きながら八雲は笑う。
「任せてみるか」
end.
続きます!
開いたドアの向こうから、ごうごうと風の音に紛れて小さな悲鳴が聞こえた。
八雲が顔を上げて確認するまでもない。
そこには風に吹かれるがまま、栗色の髪を揺らす晴香の姿があった。
「いいからドアを閉めろ」
「う、うん」
こんな天気だ。さすがの八雲も晴香を追い出す気にはならない。
今、日本全域に台風並みの暴風雨が直撃しているそうだ。
この辺りはまだピークに達していないそうだが、昼過ぎから風と雨が窓を叩いている。
まだ酷くなるのか、とのんきに八雲は晴香に目を向けた。
「も、すごい!すごいのっ!さっきも傘がひっくり返っちゃって!」
そう言う晴香の手には、骨の折れた傘がだるそうにしている。
「ここに来るのも大変だったんだから!」
「誰も来いとは言ってない」
晴香が子供のように頬を膨らます。
「八雲君が怖がってるんじゃないか心配だったの!」
「余計なお世話だ」
目の前の席に腰を下ろす。
濡れたスカートが気持ち悪かったのか、顔をしかめていた。
「君こそ早く帰らなくていいのか?」
「そりゃ帰ろうと思ったよ」
「じゃあなんで…」
言い掛けた八雲の目に、無残な姿の傘が映る。
「えへへ」
晴香が照れくさそうに舌を出した。
「何がえへへだ。傘ぐらい貸してやるから、今日は早く帰れ」
晴香が驚いたように目を丸くする。
「八雲君が傘を貸してくれるだなんて…意外…」
「…追い出すぞ」
「嘘うそっ。お言葉に甘えて、借りてくね」
「………」
なんというか。
ここのところ、空回りしてばかりな気がする。
いや、空回りしているのではなく、彼女に振り回されているのかもしれない。
八雲はがりがりと寝癖だらけの髪を掻く。
それで止まった歯車が動き出すようなことはなく、胸のムカムカが消えることもなかった。
晴香がロッカーに足を向けたその時。
じじっと羽虫が羽を擦らせたような音が頭上から聞こえたかと思えば、世界が暗転した。
「きゃあ!」
晴香の悲鳴が聞こえる。
ごうごうと空気口を走る風の音も聞こえる。
「な、何?なになになに!?」
慌てふためく晴香に比べ、八雲は至って冷静だった。
慌てる人間がいたからこそ、冷静でいられたのかもしれないと八雲は思った。
天井を見上げると、蛍光灯が消えている。
部屋の中よりも、窓の外の方が明るい。
「停電、か…」
「て、停電!?」
「いちいちうるさい」
耳を塞いでうるさいとアピールをしたが、この暗闇の中、晴香には見えたのだろうか。
「きゃあきゃあ」と悲鳴を上げ続ける晴香に、八雲は溜め息を吐く。
「君は犬か何かか」
「だ、だってだって!八雲君どこ?」
「僕はここにいる」
「えっ、どこ?ねぇってば」
パニックになっているのだろう。
地を這うような衣擦れの音の後、ガンとロッカーがある辺りから音がした。
「っ〜!」
声にならない声が上がる。
「ああもう」と舌打ち混じりに髪を掻き、八雲は立ち上がった。
携帯電話の画面を床に突きつけるようにして晴香を探す。
ロッカーの前で頭を抱え、しゃがみ込む晴香を見つけた。
「君は本当にバカだな」
返事は返ってこない。
代わりに停電を知らせる緊急放送が耳に届いた。
どうやら大学内の電線が節電したらしく、被害はここだけのようだ。
「立てるか?」
「う、うぅん…」
それが「うん」なのか「ううん」なのかは分からない。
しかし晴香が立ち上がろうとしているから「うん」なのだろう。
八雲に手伝われながらも、晴香は立ち上がる。
生まれたての小鹿のように弱々しい。
「あ、ありがとう」
頭痛がするらしく、壁に手を突いて体を支えている。
あの音からして、随分と勢い良くロッカーに頭をぶつけたらしい。
「………」
開いたままの携帯電話を晴香に預け、八雲は冷蔵庫へ向かう。
年中この場所にいるせいか、暗闇でも冷蔵庫の場所は分かった。
開けた冷蔵庫の中も、当たり前だが真っ暗だった。
「それで冷やしておけ」
ペットボトルのお茶を晴香に渡す。
投げようとしたが、頭を押さえる晴香と視界の悪さに断念した。
「八雲君…!」
暗闇の中でも、晴香の瞳が輝いていることが分かった。
視線を逸らすように、要冷蔵のものはないかと冷蔵庫へ目を向ける。
しかし冷蔵庫の中にはペットボトルしかなかった。
あとは部室の鍵やら歯磨きやら。
「…ってこれ、私の飲み物じゃない!」
晴香の突っ込みに、八雲は暗闇に紛れて胸を撫で下ろした。
暗闇に目が慣れ出した頃。
八雲はロッカーから傘を取り出した。
「二本?」
晴香は首を傾げる。
その通り、八雲の手にはビニール傘が二本握られていた。
「夕飯を買いに行かないといけないんだ」
これは事実。
冷蔵庫の中には飲み物しかないし、どこかで夕飯を調達しないといけないのだ。
一食ぐらいどうってことないが、あいにく昼食も抜いていた。
さすがに胃袋が空腹を訴えている。
「途中まで送っていく」
晴香に傘を渡しドアを開けた。
びゅんと風が頬を切り、部屋の中のプリント類を巻き上げる。
早く来いと目で訴える。
「じ、じゃあさ!」
慌てて飛び出した晴香は、顔を上げて八雲を見上げた。
「うちで夕飯、食べていかない?」
久しぶりに明るいところで見た晴香の顔は、火照っているようだった。
「君の家で…?」
「う、うん!私としては家まで送ってもらえるし、八雲君だってタダでご飯が食べれるんだよ?」
「タダ、か…」
その言葉に八雲は誘われるように生唾を飲む。
正直に言うと、今月はピンチだった。
思わぬところで出費があり、そのため昼食も抜きにしていたのだ。
「八雲君にとっても悪い案じゃないと思うんだけど…」
ちらりと晴香が見上げる。
「…それは、食べれるものなんだろうな?」
「まっかせなさい!」
ふんと鼻を鳴らし、ガッツポーズをする。
バサバサと風に揺られる髪のせいか、やけに説得力を感じた。
というより、闘いに出る戦士のように見えた。
ふっと吐息を吐きながら八雲は笑う。
「任せてみるか」
end.
続きます!
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