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八雲で八晴!


いつもとらじまさんにはりゅかがお世話になってばかりなので…
少しばかりの御礼にと、みんな大好き!はだワイ晴香ちゃんです(*`ω´*)

久しぶりに書きましたが…
いやぁ、はだワイって良いですね。
はだワイがちょうど良い季節になってまいりました。

八雲/八晴

「………」


夕飯の買い出しに出掛けようとした八雲は、ドアを開けたまま制止した。

ざあざあ音を立てて降り落ちる雨粒。
見上げた空に朝まであった青空はなく、灰色の厚い雲が広がっている。


「………」


少し考えた後、八雲は静かにドアを閉めた。






梅雨なのだから仕方ない。

八雲は溜め息を吐くと、深く腰を下ろした。
使い古されたパイプ椅子が悲しく軋む。

傘を差してまで買い物に行くという考えは、生憎ながらない。
ロッカーの中に放置された傘を見て理解して頂きたい。
見るも無惨な方向に折れ曲がっている。


八雲は机の隅に積まれた文庫本を手に取った。

一食ぐらい減らしたって死ぬわけじゃない。
もしも胃袋が訴えかけてきたら、アイツが置いていった菓子でも摘めば良い。

対価は文句と愚痴を聴かされるだけ。
ぷんすかと怒りながらも、数分後にはけろりと笑っているだろう。


「ふっ」


目の前の空席を見て、八雲は小さく笑みをこぼした。
ハッと気付き、慌てて口の端を引き締める。


誰かを想って笑うだなんて。


「僕らしくない」


いけないいけない。

机に片肘を突き、頬に手のひらを押し付ける。
意識をしたら逆にお腹が空いてきた。

そのとき、雨音に紛れてぴしゃんぴしゃんと近付いてくる足音に気が付いた。
八雲は肘を突いたまま顔を上げる。


「もうっ…最悪ー!」


勢い良く開いたドアの向こうには、ずぶ濡れの晴香が立っていた。

「すごい格好だな」

今笑ったのは、濡れ細った迷子犬のような晴香の姿に、だ。
断じて来てくれたのが嬉しいとか、そういうのじゃない。

ドアが閉まるのを見ながら、手のひらで頬を引き締めた。

「濡れたまま部屋の中に入るな」

「だって外寒いんだもん」

ロッカーの中から一番綺麗そうなタオルを取り出し、晴香の頭に掛けてやる。

犬を拭くように荒々しく手を動かす。
タオルの下で晴香が何やら文句を言ったが、八雲は無視をした。

「何があったんだ?」

晴香が傘を忘れるだなんて珍しい。

「それが聞いてよ!講義中にね、傘取られちゃったの!」

くやしい!と大きく足踏みをした。
しかし徐々に冷静を取り戻し、一人でできる、とタオルを掴んだ。

「だからってここに来なくたって良いだろ」

手持ち無沙汰になった両手を、体の後ろで握り合わせた。


別にここに来なくたって良いじゃないか。

この時間なら食堂だって図書館だって開いている。

わざわざ濡れる思いをしてまで部活棟に来なくたって良いのに。


指の間には晴香の濡れた髪の感触が残っている。
勘違いをしてはいけないと自分自身に言い聞かせるように、咳払いをした。

「どうせトラブルでも拾ってきたんだろう」

「失礼ね!そんなんじゃありません」

タオルの端と端とを握り、頬を膨らます。
それから手を拭うと、肩から掛けたバッグの中からタッパーを出した。

「マドレーヌ作ってみたんだけど」

空っぽの胃袋が期待に腹を鳴らす。
晴香に聞かれなかったのが救いである。

「でも意地悪言う八雲君には──」

そこまで言うと、会話の途中なのに途切れてしまった。
不思議に思い八雲は顔を上げる。
晴香は「くしゅん」とくしゃみをした。
足元には小さな水たまりが出来ていた。

「…でも、意地悪言う八雲君には」

「分かった分かった」

鼻を啜りながらも話そうとする晴香を制し、八雲は再びロッカーに向かう。
中から綺麗そうなシャツとジーンズを出すと、それを渡した。

「何?」

「そのままの格好でいたら、風邪をひく」

「………」

「その気持ち悪い目をやめてくれ」

「八雲君が優しいだなんて…この雨はそれが原因ね!」

「…今すぐ追い出してもいいんだぞ」

「ゴメンナサイ」

晴香が直角に腰を曲げる。
片言な謝罪の言葉に誠意は見られないが、追求はしなかった。

「早く着替えろ。君は僕の部屋を水浸しにする気か?」

「ここは大学の私有地ですよーだ!」

べーと子供のように舌を出す。
八雲は肩をすくめ、「外の様子を見てくる」と告げ部屋を後にした。






鼻先に落ちてきた水滴に、八雲は一歩後ろに下がった。

外の様子は変わらない。
ついさっき外に出て確認したばかりだ。
そう簡単に天気が変わるわけがない。

そもそも雨の様子を見るために部屋を出たわけじゃない。


壁に背を付け寄りかかり、雨音に耳を澄ませるように目を閉じた。


壁一枚を挟んだ向こうで、無防備にも着替えている女。
悪趣味な奴ならばビデオカメラを仕込んでいたっておかしくはない。
疑うことを知らないというか、彼女は無知過ぎる。

相手が僕じゃなかったらどうなっていたことか。

本当に相手が僕でよかったな。


うんうんと頷く。

しかし衣擦れの音を拾おうとしてしまうのが男の悲しい性。
ドクドク煩い鼓動に舌打ちをしている自分に呆れ果てた。

「何をしているんだ、僕は…」

湿気で三割り増した髪を掻く。

そろそろ着替え終わっただろうか。
だが、こういう場合は向こうから合図があるはず。
もう少し待ってみよう。

…しかし、考えてもみろ。

あいつのことだ。
本当に外の様子を見に行ったと勘違いしているかもしれない。
いくらなんでも遅すぎる。


眉間に皺を寄せ、八雲はドアの前に立った。
恐る恐るドアに空いた覗き穴に顔を寄せる。
部屋の中には乾いたシャツを身にまとった晴香がいた。

着替え終わったのなら声ぐらい掛けろ。
と腹立つ裏腹、内心では肩を落とす自分がいた。
注意をしてやろうとしたが、あくまで外の様子を見に来た体なのだ。
少しの間考え、ドアに手をかけた。

「まだまだやみそうに──」

ないな。

続くはずだった言葉が途切れてしまう。


「なっ…!」


八雲は目を丸くし、白が目立つ晴香を凝視した。

「あ、八雲君。外の様子はどうだった?」

そこにいた晴香は、八雲のシャツを着ていた。
しかしシャツから下にあるべきはずの布地は無く、すらりと白い生脚が伸びている。

男性物のシャツは小柄な女性である晴香には大きい。
振り返り際に翻した裾に、思わず目が釘付けになった。


「なっ…んて格好をしてるんだ!」

「なんて格好って…八雲君が渡したシャツだよ」

「シャツのことを言ってるんじゃなくて…」

目で訴えるように脚に視線を落とす。
肉付きのよい腿から目が離せなくなりそうで、慌てて頭を振った。

顔が熱い。全身の血液が集まっているようだ。


「あぁ、ジーパンなら胴回りが大きくて」


だったらベルトを渡しておくべきだった。
今履いているジーンズから抜き取ってでも貸しておくんだった。


こみ上げてくる何かを抑えるように、頭を抱えて俯く。
熱があるのではないかと疑うほど、顔が熱かった。

足の先から頭のてっぺんまで、体中も熱かった。



「君は…馬鹿だろう…」

「どうしてそうなるのよ!」


晴香は腰に手を当て八雲に詰め寄る。
しかし顔を上げた八雲を見た途端、身体を震わせた。

外敵を見つけた野ウサギみたいだ。
理性が一生懸命になって自分自身を抑える中、ふとそんなことを思った。

「ここは僕の部屋で、僕は男で。つまりここは男の部屋だ」

一歩、また一歩と歩み寄ってくる八雲に、晴香も逃げるように後ろへ下がる。

しかし大して広くもない部室。
晴香はあっと言う間に、机にぶつかってしまった。

「待って待って!」

晴香の顔は真っ青だった。
両手を突っ張っても、八雲が止まることはない。

挙げ句の果てにその手に指を絡められ、二人の距離はすぐそこにまで迫っていた。

「な、何しようとしてるの?」

「ナニをしようとしている」

太股に食い込む感触に、顔が燃えるように熱くなった。
慌てて下を見ると、八雲の骨張った手が晴香の脚に這っている。

「嘘…だよね?」

「嘘だと思うなら見てれば良い」

ニヤリと口の端を上げて笑う八雲は、嘘を言う顔には見えなかった。

晴香の悲鳴が途絶えたのは、雨音のせいか。彼のせいか…






end.



むっつり助平の八雲!
ただ単にはだワイが書きたかったのに…どうしてこうなった。

いやあ、はだワイって良いですね。(たいせつなことなので二回ry
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