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八雲で八晴。

前回に引き続き、はだワイ祭りです!

八雲/八晴

晴香は小さく唸ると、布団の中で寝返りを打った。


体が重い。


昨晩は八雲に捕まってからと言うものの、まともに寝かせてもらえなかった。
日が高いことから察するに、もう正午は過ぎているだろう。


腕に浮かぶ赤い痕を眺めため息。


「ばか八雲…」



布団の中で下着を穿いて、寝間着を探す。
しかしそこにあるはずの寝間着が見つからない。
起きたときから気付かないフリをしてきたけれど、八雲もいなかった。


どこに行っちゃったんだろう。


冷たくなった隣のスペースに寝転がる。
耳を澄ます。シャワー音は聞こえない。


帰っちゃったのかな。

そういえば、事件現場から直接来たって言っていた。
帰ってしまったのかもしれない。

…でも、帰る前に一言言ってくれたら良いのに。

気を遣ってくれたのかな。


何も言わずにいなくなってしまったのは寂しい。
けれど、それはそれで嬉しい。



「ふふっ」


布団で口元を隠して笑う。
誰に見られているわけでもないのに。

八雲と同じベッドで寝るようになってからの癖だった。



寝転がり、うつ伏せになる。
彼の残り香を求め、シーツに顔を埋めた。


少しだけ汗臭い。

昨晩の八雲と同じ匂い。



十日も掛かったのだから、何度かはシャワーを浴びれただろう。
しかし毎日体を洗っている様子はなかった。


次来たら、たっぴり湯を張ったお風呂に浸からせてあげよう。
溜まっているであろう衣類も洗ってあげよう。



「そろそろシーツも洗濯しようかな」


洗濯──


ハッと起き上がる。
夢見心地な甘い世界から一気に現実に引き戻る。

大切なことを思い出した。


布団が肩からずり落ちる。
暖かくなってきたからと言っても、さすがに下着姿では肌寒かった。


くるりとベランダの方を向く。



窓を横に二つに割るように掛けられた物干し竿。
そこには昨日から干したままの服たちが、初夏の風にゆらゆらと揺られていた。


「あーあ…」

数えて丸々一日。

干しっぱなしになっていた色とりどりの服たち。
雨が降らなかったのが唯一の救いか。

「日焼けしてないかな?」

シーツを肩から掛けて、ベランダに近寄る。



昨日は久しぶりの快晴で、溜まりに溜まった洗濯物を一気に洗った。

日が沈む前に取り込もうとしたのだが、その前に八雲が来てしまった。

後藤さんの手伝いをさせられていたとかなんとか。
かれこれ数十日ぶりの再会。
そして感動を味わう時間もなく、玄関で襲われた。



「じゃあ洋服は玄関かな」

寝間着にすら着替えていなかったのか。
心の中でもう一度、「ばか八雲」と呟いた。






さて、どうしたものか。

目の前の物干し竿から下は洗濯物に溢れ、向こう側は見えない。
ときどき風が吹いては、服と服との間から光が漏れた。

洗濯物でこちらが見えないのを良いことに、晴香はそれを眺めていた。
窓を開けると風がシーツの隙間から入り込み、思わず震えた。


しかし、嫌じゃない。


「あ!」

規則正しく並んだ洗濯物の中に、一枚見慣れないものを見つけた。

見覚えはあるのだけど。
ここに並ぶ姿は、あまり見たことがない。


物干し竿に並ぶ服たちよりも、一回り大きなそれ。
小柄なハンガーに上手く収まらず、少し不恰好な姿で並んでいる。


一際白く輝くそれは、八雲のトレードマークとも言えるワイシャツだった。


「そういえば、八雲君のシャツも洗ったんだった」

いつだったか泊まりに来たときに、忘れていったもの。
衣替えの時に、タンスの奥から出てきたのだ。


「次来たとき返さなくちゃ」

本来は、ここにいてもおかしくないのに。


「まったく…どこ行っちゃったのよ…」


飢えてるだの溜まってるだの。

やりたいだけやって、朝になったらいなくなる。

「…ばか」

火照った顔を冷まそうと、ベランダに出た。
一直線に向かうは八雲のシャツ。

八つ当たりしてやろうと手に取る。


ぐしゃぐしゃにしてやろうか。

しばらくワイシャツとにらめっこ。


「………」

しかし見つめている間に、愛しさが湧いてくる。
無意識のうちにいなくなった彼のことを考えてしまう。
思い出すのは昨夜の彼と、冷たくなったシーツ。

日向に干されて程良く暖かいワイシャツ。
腕の中のぬくもりが、晴香のことを誘っていた。



「…ちょっとくらいなら、いいよね?」

ぎゅっと胸に抱きしめる。
否定しようとする自分自身から逃げるように、部屋の中に駆け込んだ。



ワイシャツを見つめる瞳はどこか熱っぽい。
晴香は口内に溜まった唾を飲み込んだ。

シーツが床に落ちる。

肌寒さとは別の意味で、身体が小刻みに震えていた。

恐る恐るシャツの袖に腕を通す。
日光を浴びていたワイシャツは、肉まんのごとくぽかぽかしている。

その場で回ってみせると、裾がひらり翻った。


「やっぱり男の人なんだなぁ」


有り余る袖。丈の長い裾。

ボタンを留めても襟は立たず、肩が出てしまった。



両手を広げて回れば、袖が魚のように宙を泳ぐ。


やくもくんやくもくん。



「八雲君」



くるくると景色が回り、そして繋がる。

目が回り、勢いだけで動く脚。


「寂しいよ」


足がもつれる。
「あっ」と思ったときには遅く、目の前に天井が現れた。


倒れる。


思わず目を閉じる。
やってくる痛みを待った。

しかしいつまで経ってもそれは来ない。
むしろなにやら柔らかい。


「まったく」


目を開けると、見慣れた壁が広がっていた。

「君は何をしてるんだ」

「八雲君!」

声がする方を向こうとするが出来ない。
見ると身体に腕が絡み着いていた。
晴香が着ているシャツと同じシャツの袖。

「それは僕のシャツだろ?」

「ま、前、忘れてったの」

「そうか」

晴香の肩に顔が埋まる。
露わになった肌に髪が触れ、身体が震えた。
八雲がにやりと笑ったのを、晴香は知らない。

八雲は抱きしめる力を強めた。

「帰ったんじゃなかったの?」

「朝飯がなかったようだから、買ってきた」

ビニール袋がガサガサと音を立てる。
晴香からは見えないが、買い物に行ってきてくれたようだ。

八雲がいなくなったのではなく、帰ってきてくれたことが何よりも嬉しかった。

「…そっか」

「そんなことより」

「っ!」

八雲の手がシャツの中に入り込んでくる。

「君は何をしてたんだ?」

これは大変だ。
背中に嫌な汗が浮かぶ。
逃げだそうとしたが、しっかりと抱きしめられて敵わない。

「聞いているのか?」

さすがの晴香でも、このあとどうなってしまうかは想像ができた。
身体はまだ重いし、このままでは昨日の二の舞になる。

「…とにかく、そのシャツは僕のものだから返してもらう」

「ちょっ、やっ──!」

ボタンに手が掛かる。
慌てて止めに入ると、意外にもすんなり止めてくれた。

不思議に思い振り向く。
先ほどよりも包容する力が弱かったのか、八雲の顔を見ることができた。

この顔は…ナニかいやなことを思いついた顔だ。

「ふむ」

「や、やくもくん?」

「たまには着たままでも良いかもしれない」

「ナンノコトデショウカ」

「分からないなら、手取りナニ取り教えてやろう」

「い、いやーっ!!」






end.



はだワイ、干されたワイシャツを思わず着てしまう晴香編。
まさかの二回連続ではだワイ&助平八雲を書くことになるとは。
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「や」がつくけもの
野獣がでましたよお嬢さん気をつけてーっ!
…手遅れ

こんにちは。肌ワイに釣られました。なんですかね、十日もクマさんと一緒で何かがぶっとんじゃったんですかね八雲は。玄関てあなた禁断症状?被害にあうのは晴香チャンなのに(笑)いや笑えんて。
えろり供給バンザイです!
delia 2012/06/27(Wed)18:22:01 編集
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