×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
八雲で晴香わんこいぬパロのきょうのはるかです!
題からもわかるかもしれませんが、晴香ととある溶けちゃうものが出会います。
八雲/きょうのはるか
題からもわかるかもしれませんが、晴香ととある溶けちゃうものが出会います。
八雲/きょうのはるか
夏の日差しにじりじり肌が焼けていく。
体が日差しに強いわけではないことは、白い肌が証明している。
日に当たるのも外に出るのも苦手だが、食糧難には耐えられない。
こめかみ辺りから滲み出た汗が、顎を伝って地面に落っこちた。
腕で太陽を隠しながら空を見上げる。
遠くに見える大きな入道雲が、街を襲うように空を覆っていた。
「夏だな…」
「きゅ…」
足元から聞こえた蚊の羽ばたきのような弱々しい返事。
今にも溶けて蒸発してしまいそうな体を繋ぎ止めるように、握る手に力を込めた。
腕に抱えた買い物袋を抱え直す。
ビニールが擦れ、がさがさ音をたてた。
それを真似て、晴香も500ミリのペットボトルを抱え直す。
「重くないか?」
「ないない」
空いた晴香の左手が、八雲の人差し指と中指を掴む。
ちゃんと握るには、晴香の手はまだまだ小さい。
あと何年経てば、手を繋ぐにちょうど良くなるだろうか。
そんなことを考えていると、晴香がこちらを見上げていることに気が付いた。
視線の先を追うと、そこには腕の中の買い物袋。
羨ましそうに。また、恨めしそうに。
「…抱っこ、するか?」
ぶんぶん大きく頭を横に振る。
早く帰ろうと言わんばかりに手を引かれ、引っ張られるように足を動かした。
それからどれだけの時間が過ぎただろう。
先導していた晴香はいつの間にか横に並び、そして視界から消えた。
その度に走って先導するが、また元の位置に戻ってきてしまう。
そしてついに元気だけが取り柄の晴香にも、限界がきてしまった。
ぐいと腕を引っ張られる。今度は後ろに。
振り返った八雲が見たのは、地べたにしゃがみ込む晴香の姿だった。
尾は垂れ下がり、夏の日差しに溶けてしまいそう。
「大丈夫か?」
八雲は膝を曲げて顔を覗く。
晴香の顔は熱を出したときのように火照り、只事ではない。
両方の目はぼうと乾いた地面を見つめている。
素人目にも、初夏の暑さに負けてしまったことが分かった。
誇らしげに抱えていた500ミリのペットボトルは、いつの間にかぬるくなっていた。
「きゅ〜」
晴香がすがりついてくる。
八雲は小さく溜め息を吐いた。
荷物を左腕に抱え直すと、晴香の体を右腕に抱きかかえる。
いくら子供だからと言っても、このシチュエーションは辛い。
夏の日差し。湯たんぽのように火照った晴香。両手の荷物。
家はまだまだ遠い。着く前にこちらが倒れてしまう。
「そうだ」
考えた八雲が足を運んだのは、コンビニエンスストアだった。
両手が塞がった八雲を、自動ドアは優しく迎えてくれる。
賑やかな店内は冷房が利き、体の熱を奪っていく。
空気が変わったのを晴香も察し、うなだれていた頭を上げた。
飲食コーナーの椅子に晴香を座らせ、荷物も置く。
背を反らすと骨がポキッと心地よく音を立てた。
「ここで待ってろ」
財布を片手に足早に冷蔵庫へ向かう。
少し迷って水分補給のしやすいスポーツドリンクを取り出す。
レジで支払いをしていると、何かがシャツの裾を引っ張った。
そこにいたのは、やっぱり晴香だった。
「待ってろと言っただろ」
「やきゅがいい」
「………」
何と比べてだ。
頭が痛くなる一方、徐々に体力を取り戻す姿にほっと胸を撫で下ろす。
「あれも追加で」
ボタンを叩く店員に、八雲はポスターを指さした。
「どのお味にしましょうか」
晴香は八雲の話し相手が気になるようだったが、目の前の壁は高山のごとし。
八雲を支えに背伸びをするが、レジの向こう側を見ることは敵わなかった。
そんなことを知らない八雲は、頬を膨らます晴香を見て首を傾げていた。
「何を怒ってるんだ」
「きうきう」
飲食コーナーの椅子に二人は腰を下ろす。
晴香が落ち着いて座るのを待ってから、八雲は手に持ったそれを差し出した。
「ほら」
「?」
晴香の瞳にうねうねとぐろを巻くものが映る。
逆三角形を握る八雲の手元と、八雲の顔を交互に見やる。
乳白色でつやつや。まるでさざなみに揺れる貝の裏側のよう。
「早く食べないと溶けるぞ」
「!」
これが食べもの!?と言わんばかりな顔。
八雲は笑うのを堪え、晴香の口元にソフトクリームを差し出した。
おずおず鼻先を寄せ、くんくん匂いから確かめる。
「!」
鼻腔をくすぐるふんわり甘い匂いに、晴香の目が見開かれた。
先端のくるりと円を描いたところをぺろりと一舐め。
目が輝いたのが早いか、しっぽが揺れたのが早いか。
八雲を見上げた顔は、さきほどとは別の理由で紅潮していた。
「おいしかったか?」
「きゅっ!」
「…そうか」
八雲は晴香にソフトクリームを渡すとスポーツドリンクを一口含んだ。
すうと身体の隅々まで染み渡っていく。
とにかく晴香が元気になってよかった。
一心不乱にソフトクリームを舐め続ける晴香を見て、八雲は微笑んだ。
「やきゅもいる?」
「一口」
雪山のように滑らかになったソフトクリーム。
とぐろの跡のない先端を、ぱくりと大口でいただいた。
「きゅっ!?」
滑らかだった斜面は削られてしまった。
怒るか?としばらく様子を見る。
あんぐり口を開け、ソフトクリームを見つめる。
何を思ったか、ソフトクリームに噛みついた。
「おい!」
慌てて離すも後の祭り。
晴香の顔は口を中心に、真っ白に染まっていた。
口一杯にソフトクリームを含んだ晴香は、足をばたばたさせて喜びを露わにする。
「ちゅめたい!」
「当たり前だ」
ぺろぺろと口の周りを舐めて、またしっぽを振る。
「あまい!」
「そうか」
一通り口の周りを舐め終わると、またソフトクリームを舐め始める。
そして唐突にソフトクリームに噛みつく。
「おいちい!」
「…それはよかった」
その度に口元を汚すが、晴香はとても幸せそうだった。
甘くて冷たいソフトクリームを知って、やみつきになった晴香なのでした。
end.
某コンビニのソフトクリームがとてもおいしいです!
体が日差しに強いわけではないことは、白い肌が証明している。
日に当たるのも外に出るのも苦手だが、食糧難には耐えられない。
こめかみ辺りから滲み出た汗が、顎を伝って地面に落っこちた。
腕で太陽を隠しながら空を見上げる。
遠くに見える大きな入道雲が、街を襲うように空を覆っていた。
「夏だな…」
「きゅ…」
足元から聞こえた蚊の羽ばたきのような弱々しい返事。
今にも溶けて蒸発してしまいそうな体を繋ぎ止めるように、握る手に力を込めた。
腕に抱えた買い物袋を抱え直す。
ビニールが擦れ、がさがさ音をたてた。
それを真似て、晴香も500ミリのペットボトルを抱え直す。
「重くないか?」
「ないない」
空いた晴香の左手が、八雲の人差し指と中指を掴む。
ちゃんと握るには、晴香の手はまだまだ小さい。
あと何年経てば、手を繋ぐにちょうど良くなるだろうか。
そんなことを考えていると、晴香がこちらを見上げていることに気が付いた。
視線の先を追うと、そこには腕の中の買い物袋。
羨ましそうに。また、恨めしそうに。
「…抱っこ、するか?」
ぶんぶん大きく頭を横に振る。
早く帰ろうと言わんばかりに手を引かれ、引っ張られるように足を動かした。
それからどれだけの時間が過ぎただろう。
先導していた晴香はいつの間にか横に並び、そして視界から消えた。
その度に走って先導するが、また元の位置に戻ってきてしまう。
そしてついに元気だけが取り柄の晴香にも、限界がきてしまった。
ぐいと腕を引っ張られる。今度は後ろに。
振り返った八雲が見たのは、地べたにしゃがみ込む晴香の姿だった。
尾は垂れ下がり、夏の日差しに溶けてしまいそう。
「大丈夫か?」
八雲は膝を曲げて顔を覗く。
晴香の顔は熱を出したときのように火照り、只事ではない。
両方の目はぼうと乾いた地面を見つめている。
素人目にも、初夏の暑さに負けてしまったことが分かった。
誇らしげに抱えていた500ミリのペットボトルは、いつの間にかぬるくなっていた。
「きゅ〜」
晴香がすがりついてくる。
八雲は小さく溜め息を吐いた。
荷物を左腕に抱え直すと、晴香の体を右腕に抱きかかえる。
いくら子供だからと言っても、このシチュエーションは辛い。
夏の日差し。湯たんぽのように火照った晴香。両手の荷物。
家はまだまだ遠い。着く前にこちらが倒れてしまう。
「そうだ」
考えた八雲が足を運んだのは、コンビニエンスストアだった。
両手が塞がった八雲を、自動ドアは優しく迎えてくれる。
賑やかな店内は冷房が利き、体の熱を奪っていく。
空気が変わったのを晴香も察し、うなだれていた頭を上げた。
飲食コーナーの椅子に晴香を座らせ、荷物も置く。
背を反らすと骨がポキッと心地よく音を立てた。
「ここで待ってろ」
財布を片手に足早に冷蔵庫へ向かう。
少し迷って水分補給のしやすいスポーツドリンクを取り出す。
レジで支払いをしていると、何かがシャツの裾を引っ張った。
そこにいたのは、やっぱり晴香だった。
「待ってろと言っただろ」
「やきゅがいい」
「………」
何と比べてだ。
頭が痛くなる一方、徐々に体力を取り戻す姿にほっと胸を撫で下ろす。
「あれも追加で」
ボタンを叩く店員に、八雲はポスターを指さした。
「どのお味にしましょうか」
晴香は八雲の話し相手が気になるようだったが、目の前の壁は高山のごとし。
八雲を支えに背伸びをするが、レジの向こう側を見ることは敵わなかった。
そんなことを知らない八雲は、頬を膨らます晴香を見て首を傾げていた。
「何を怒ってるんだ」
「きうきう」
飲食コーナーの椅子に二人は腰を下ろす。
晴香が落ち着いて座るのを待ってから、八雲は手に持ったそれを差し出した。
「ほら」
「?」
晴香の瞳にうねうねとぐろを巻くものが映る。
逆三角形を握る八雲の手元と、八雲の顔を交互に見やる。
乳白色でつやつや。まるでさざなみに揺れる貝の裏側のよう。
「早く食べないと溶けるぞ」
「!」
これが食べもの!?と言わんばかりな顔。
八雲は笑うのを堪え、晴香の口元にソフトクリームを差し出した。
おずおず鼻先を寄せ、くんくん匂いから確かめる。
「!」
鼻腔をくすぐるふんわり甘い匂いに、晴香の目が見開かれた。
先端のくるりと円を描いたところをぺろりと一舐め。
目が輝いたのが早いか、しっぽが揺れたのが早いか。
八雲を見上げた顔は、さきほどとは別の理由で紅潮していた。
「おいしかったか?」
「きゅっ!」
「…そうか」
八雲は晴香にソフトクリームを渡すとスポーツドリンクを一口含んだ。
すうと身体の隅々まで染み渡っていく。
とにかく晴香が元気になってよかった。
一心不乱にソフトクリームを舐め続ける晴香を見て、八雲は微笑んだ。
「やきゅもいる?」
「一口」
雪山のように滑らかになったソフトクリーム。
とぐろの跡のない先端を、ぱくりと大口でいただいた。
「きゅっ!?」
滑らかだった斜面は削られてしまった。
怒るか?としばらく様子を見る。
あんぐり口を開け、ソフトクリームを見つめる。
何を思ったか、ソフトクリームに噛みついた。
「おい!」
慌てて離すも後の祭り。
晴香の顔は口を中心に、真っ白に染まっていた。
口一杯にソフトクリームを含んだ晴香は、足をばたばたさせて喜びを露わにする。
「ちゅめたい!」
「当たり前だ」
ぺろぺろと口の周りを舐めて、またしっぽを振る。
「あまい!」
「そうか」
一通り口の周りを舐め終わると、またソフトクリームを舐め始める。
そして唐突にソフトクリームに噛みつく。
「おいちい!」
「…それはよかった」
その度に口元を汚すが、晴香はとても幸せそうだった。
甘くて冷たいソフトクリームを知って、やみつきになった晴香なのでした。
end.
某コンビニのソフトクリームがとてもおいしいです!
PR
この記事にコメントする