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八雲で八晴!赤頭巾ちゃんパロです!

元ネタは空麗爛さんちでの絵チャのお題、けもみみウエディングです。
といっても、ウエディング要素は薄いですが…
もしよろしければ、そちらの方もご覧くださいー♪

八雲/赤頭巾ちゃんパロ

ピンと耳が立った。

幾度か耳が揺れて、獲物を捕らえるようにとある方向へ一直線に向く。
遅れて顔もそちらを向いた。


どうしたんだろう?


不思議に思って横顔を窺うが、それだけじゃ何も分からない。
眉間からすっと伸びた鼻と厚みのない唇は、外国のお人形のよう。
八雲の視線の先を追うも、そこには森が広がるだけだった。


「おおかみさん」


待ちくたびれた晴香は催促するようにシャツの裾を引っ張った。

「カネが」

「かね?」

お金が落ちていたのだろうか。
それなら森のおまわりさんである後藤さんに届けなくては。

地面を見渡す晴香に、八雲はもう一度言った。


「鐘が鳴っている」


そこで晴香は、カネが鐘であることに気が付いた。






「鐘…ですか?」

八雲は何も答えず、一方を向いたまま。
晴香も真似てそちらを見るも、鐘も見えなければ音すらしない。

「どんな音ですか?」

「…ゴーンゴーン」

どうやら学校のチャイムや、日暮れを知らす音ではない模様。
少し考え、あぁ!と手を鳴らした。

「きっと教会のチャイムです!」

「教会?」

「街外れにあるの知りません?向こうの森に…」

「…そういえばあったな」

腕組みをして思案する間も、頭上に生えた三角形の耳は見えぬ教会へ向く。

「そういえばお花屋の娘さんが結婚式をあげるって言ってました」

八雲は返事を返さなかった。
八雲の耳にだけ届く鐘の音は、男女の幸せを祝福するもの。


少しでも届けばいいのに。

八雲だけに聴こえる鐘の音を想像し、晴香は目を閉じた。


さわさわ木々が揺れる音。

隠れた小鳥のひそひそ話。


風が一つ吹く度に、森はいろいろな音を奏でた。



目を開ける。鼓膜に集中していた神経が、ぼやけた視界を修復していく。
しかしそこに八雲の姿は見えなかった。

「あれ?」

さっきまで隣にいたのに。
辺りを見渡す。
同じような樹木が並ぶ中、一本の木の幹に寄りかかる八雲を見つけた。

「もう!勝手に行かないで!」

「君がボーっとしてるのが悪い」

八雲は顔を上げない。
一心に手元を動かしていた。

何をしているのだろう。
目線を合わせるようにしゃがみ込み、手元を覗き込んだ。

「わあ…!」

晴香の瞳がガラス玉のように輝く。
ぐいと八雲に顔を寄せる。


「お花のかんむり!」


「耳元で大きな声を出すな」

頭の耳に手で蓋をした。
効果があるのか分からないが、ぐいぐい寄ってくる晴香に体を反らしす。

「狼さん、冠作れるんですか?」

「……これくらい普通にできるだろう?」

「すごい…!すごいです!」

ぴょんぴょん跳ねたいのだろう。

しかし地面に腰を下ろしているため敵わず。
晴香は代わりに体を揺らした。
口の端をくいとあげて、左右に揺れている。

「その…君はできないのか?」

「はい。お姉ちゃんは得意なんだけど…」

「ああそうだな。君のお姉さんは得意そうだ」



妹とは対照的に“女の子らしい”姉。


妹である晴香に女の子らしさがないわけではない。

身体はまだ未発達な部分もあるが、女性特有の柔らかさは存分にあるし。
泣いたかと思えば、けろりと笑ったり。

今だって唇を奪いたいのを八雲は必死で我慢していた。


正し、これは八雲の目に映る晴香だ。

世間的に見て“女の子らしさ”で晴香が姉の綾香に勝てる日は夢のまた夢であろう。


「………」

晴香も認めているようだったが、どこかつまらなそうに口を尖らせていた。
それを見てついつい押し倒したくなるのを、理性をフル動員させて堪えた。

「ほら」

完成した花の冠を晴香の頭の上に乗せる。
小さいか?と思ったが、晴香の頭にはぴったりの大きさだった。

うんうん頷く八雲に、晴香は照れくさそうに目を伏せた。
短い髪を指で解く。

「似合う…かな?」

「あぁ、子供みたいだ」

「子供ってねぇ…!」

カチンと来てとっさに赤い頬のまま顔を上げる。
が、言葉は途切れてしまった。

目前に迫る八雲の顔。吸い込まれそうになる黒と赤の瞳。

しかし惹かれたのは八雲の方だった。


髪をいじる晴香の手を包み込むように取る。
何もかも小さいんだな、と今更ながらに思う。

鼻の先がつんと当たっただけで、晴香は大きく体を揺らした。
スカートから覗く脚に空いた右手を這わす。

「お、おおかみさん…」

晴香が口を開ける度に湿った吐息が唇に触れた。
吐息を食べるように口を開け、晴香の唇を舐める。

「っ…」

一文字に閉ざされた唇。
八雲が進入する隙間さえない。

「………」

大人しく身を任せてればいいものを。
肩をすくめた八雲は晴香の後ろに手を突き、一気に距離を縮めた。
手を内股に滑り込ませれば、あっと言う間に足の間に入ることが出来た。

「わ、わっ」

素足に触れるジーンズの感触に驚いた晴香が背を反らす。
花の冠が草の上に落ちた。


肘を着いたおかげで倒れることはなかったが、この体勢はキツい。
それに八雲の胸板がすぐ目の前にあり、顔に熱が集まる。

自分のことでいっぱいいっぱいな晴香は今にも倒れてしまいそう。
八雲が腰を引き寄せてきたのを感じ、慌てて声をあげた。

「待って!」

珍しく素直にやめてくれる八雲。
とりあえずほっと胸を撫で下ろし、八雲を見上げた。
無表情で何を考えているか分からないが、その気になっているのは確か…なんだろう。
思い返してみても何が八雲にスイッチを入れさせたのかは分からないけれど。

「あー…えっと、こういうことは外でやるものじゃないし、それにまだお昼だし」

「………」

「とりあえず落ち着いて、ね?深呼吸深呼吸」

脱出を計らぐも、八雲にのしかかられていては叶わない。
恐る恐る胸板を押してみるがぴくりとも動かない。

「もう」

「?」

「動いても良いか?」

「う、うん…?」

小さく頷くと、先ほどの再現をするように手を取られた。

「えっ!」

そのまま半開きの唇を奪われ、晴香は草の上に押し倒される。


「僕は待てと言われたから待っただけだ」

「やっ…」

「誰もやめるだなんて言っていない」


ずるい!晴香は叫びたい気持ちでいっぱいだったが、それは叶わなかった。






end.



久しぶりに狼らしい狼八雲が書けた気がします!
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