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八雲で八晴!
八雲たちの世界ではまだスマフォ普及していないんですよねー。
あの人達がスマフォを仕様している姿が想像つかないです…
八雲/八晴
八雲たちの世界ではまだスマフォ普及していないんですよねー。
あの人達がスマフォを仕様している姿が想像つかないです…
八雲/八晴
着信を知らせる電子音に晴香は携帯電話を取り出した。
通話ボタンを押して小さなスピーカーを耳に当てる。
「もしもし」
『…僕だ』
僕だ、なんてオレオレ詐欺か。
それを伝えると「どうせ僕だと知っていたんだろ」
と冷静に言われた。
着信が来たとき、画面には“斉藤八雲”の名前が表示され、確かに気付いていた。
八雲からの着信に慌てて出たのは内緒にしておく。
「八雲君から電話掛けてくるだなんて珍しい」
照れ隠しをするように、精一杯の皮肉を言う。
『…僕から電話を掛けちゃいけないのか?』
しかし返ってきたのは思いもしない素直な言葉で、晴香は慌てて頭を振った。
「う、ううん!全然いいよ!」
『そもそも帰ってきたら連絡寄越せと言ったのは君の方だろ』
スピーカーの向こうでため息を吐くのが聞こえる。
かわいくないなぁ。
と思いつつ、ついつい口元が緩んでしまう。
「じゃあもしかして」
『今朝、帰ってきたばかりだ』
晴香はほっと胸を撫で下ろした。
先週の終わりから八雲は後藤とともに部室を出ていった。
それきり帰ってくることはなく、翌日になっても帰って来なかった。
晴香の携帯に連絡が来たのは今週の始め辺りだろうか。
後藤に連れ去られた時点で捜査に巻き込まれたのだろうと考えていた予想は当たった。
「ちゃんと帰ってきてね」
「…あぁ」
咳払いに紛れ込ませた返事を思い出し、晴香は笑い声を漏らした。
『どうした?』
「ううん、なんでもない」
携帯を耳と肩に挟んで靴を履く。
「怪我とかしてない?」
『君じゃないんだ。そう簡単に怪我なんてしない』
「ちょっと、それどういう意味よ」
『言葉通りに受け取ってもらって構わない』
晴香は頬を膨らました。
八雲が隣にいたならば、わき腹をつついていたところだ。
あとで思う存分つつかせてもらおう。
そう誓った晴香は鍵穴に差し込んだ鍵を横に捻った。
「ご飯は食べてた?」
『あそこのコンビニの飯はもうこりごりだ』
きっといつにも増してもじゃもじゃした髪をを掻いているのだろう。
「ふふっ、パンと牛乳で張り込み捜査ですかぁ」
『…他人事だと思って』
「冗談冗談。ちゃんと寝れたの?」
返事がない。
晴香も問い返すことはせずに歩き続ける。
すると少し間を置いて八雲が口を開いた。
『…さっきから質問ばかりだな』
「そうかな?」
『まるで母親だ』
「私はそんなひねくれ者を生んだ覚えはありません」
『僕だってドジで間抜けで、トラブルメーカーな母親から生まれた覚えなんてない』
ふんと鼻で笑う音がスピーカーから届く。
お返しと言わんばかりに、晴香は堂々と鼻を鳴らした。
笑いを堪える声が漏れてきたが、晴香は聞こえないフリをすることにした。
「………」
けれど不思議なことに“母親”と呼ばれて嫌な感じはしない。
胸の奥の辺りがざわめき、むずむずくすぐったい。
鎖骨の下を指でそっとさすったが、治る気配は皆無だった。
『…ノーだ』
「な、何が」
突然「ノー」と言われ、心の中を見透かされたのではと鼓動が速まる。
『質問の答え』
「あぁ!」
なんだ、と胸を撫で下ろす。
しかしほっとしたのもつかの間。
「眠れなかったの!?」
『マイクの近くで大きな声を出すな』
「そ、それで体は大丈夫!?」
『そんなに心配するようなことじゃない』
いつものことだと八雲は言うが、心配なものは心配だ。
歩くスピードが自然と早くなる。
「睡眠はしっかり取らなくちゃ駄目なんだよ?」
『それを僕に言うのか』
八雲がくっと笑う。
脳裏に浮かぶのは、暇さえあればパイプ椅子でも寝袋でも寝ている姿。
『まあ、今夜は君の言う通りゆっくり寝させてもらうよ』
一旦会話が途切れる。
まだまだ八雲と話していたい。
晴香は慌てて話題を探す。
「夕飯はまたコンビニ?」
『また質問か』
間髪入れずに続ける。
『まだ決めていない』
空いた左手で拳を握りガッツポーズ。
なるべく自然に立ち振る舞い、八雲に尋ねた。
「だったら食べにくる?」
家で電話を掛けていたのなら、コードに指を絡ませていたであろう。
あいにく携帯電話のためコートはない。
代わりに日の沈み掛けた空を見上げて続けた。
「ちょうど今ね、夕飯作ってるとこなんだけど」
これが嘘だと知っているのは私だけ。
「ちょっと間違えたら作り過ぎちゃって。食べにこないかなぁ…なんて」
『ちょっと間違えたくらいで、夕飯が一食分も増えないと思うが?』
鋭い。
ここはいつものように「トラブルメーカーだから」で済ませてくれれば良いのに。
『まあ、君らしいと言えば君らしいが』
ずっと向こうの方に人影がある以外、身近に人はいない。
確認してから晴香は子供のように頬を膨らませた。
「それって料理が下手って言いたいのかしら?」
『残念なことにそうではない』
じゃあなんだって言うのだ。
先を促すように黙っていると、呆れとも尊敬とも取れるように続ける。
『まだ気が付かないのか?』
「何がよ」
『前』
「前?」
前がいったいどうしたんだ。
晴香は顔を上げる。
「夕飯を作っているんじゃなかったのか?」
遅れてスピーカーからも声が届いた。
「あ」
目の前にはいるはずのない八雲がいた。
どうしてと口にするよりも先に、スピーカーから鼻で笑う音。
「まさかこんなところで会うとは、な」
「それはこっちの台詞よ」
携帯を耳に当てたまま握りしめる。
八雲が帰ってきた。声を聞けた。姿が見れた。
外に声が漏れないように口元に手を当て、八雲がなにやら口にする。
『今から会いに行ってもいいか?』
「うん…!」
晴香は大きく頷くと八雲に抱き付く。
突然の衝突に一歩二歩後ろに退けながらも、八雲は晴香を受け止めた。
「おかえりなさいっ!」
「ただいま」
「長い間、お疲れさまでした」
ご褒美のキスを頬に贈って。
end.
八雲はともかく晴香がスマホを使っている姿が思い浮かばない…
いつか二人にもこんなときがくるのだろうか。
通話ボタンを押して小さなスピーカーを耳に当てる。
「もしもし」
『…僕だ』
僕だ、なんてオレオレ詐欺か。
それを伝えると「どうせ僕だと知っていたんだろ」
と冷静に言われた。
着信が来たとき、画面には“斉藤八雲”の名前が表示され、確かに気付いていた。
八雲からの着信に慌てて出たのは内緒にしておく。
「八雲君から電話掛けてくるだなんて珍しい」
照れ隠しをするように、精一杯の皮肉を言う。
『…僕から電話を掛けちゃいけないのか?』
しかし返ってきたのは思いもしない素直な言葉で、晴香は慌てて頭を振った。
「う、ううん!全然いいよ!」
『そもそも帰ってきたら連絡寄越せと言ったのは君の方だろ』
スピーカーの向こうでため息を吐くのが聞こえる。
かわいくないなぁ。
と思いつつ、ついつい口元が緩んでしまう。
「じゃあもしかして」
『今朝、帰ってきたばかりだ』
晴香はほっと胸を撫で下ろした。
先週の終わりから八雲は後藤とともに部室を出ていった。
それきり帰ってくることはなく、翌日になっても帰って来なかった。
晴香の携帯に連絡が来たのは今週の始め辺りだろうか。
後藤に連れ去られた時点で捜査に巻き込まれたのだろうと考えていた予想は当たった。
「ちゃんと帰ってきてね」
「…あぁ」
咳払いに紛れ込ませた返事を思い出し、晴香は笑い声を漏らした。
『どうした?』
「ううん、なんでもない」
携帯を耳と肩に挟んで靴を履く。
「怪我とかしてない?」
『君じゃないんだ。そう簡単に怪我なんてしない』
「ちょっと、それどういう意味よ」
『言葉通りに受け取ってもらって構わない』
晴香は頬を膨らました。
八雲が隣にいたならば、わき腹をつついていたところだ。
あとで思う存分つつかせてもらおう。
そう誓った晴香は鍵穴に差し込んだ鍵を横に捻った。
「ご飯は食べてた?」
『あそこのコンビニの飯はもうこりごりだ』
きっといつにも増してもじゃもじゃした髪をを掻いているのだろう。
「ふふっ、パンと牛乳で張り込み捜査ですかぁ」
『…他人事だと思って』
「冗談冗談。ちゃんと寝れたの?」
返事がない。
晴香も問い返すことはせずに歩き続ける。
すると少し間を置いて八雲が口を開いた。
『…さっきから質問ばかりだな』
「そうかな?」
『まるで母親だ』
「私はそんなひねくれ者を生んだ覚えはありません」
『僕だってドジで間抜けで、トラブルメーカーな母親から生まれた覚えなんてない』
ふんと鼻で笑う音がスピーカーから届く。
お返しと言わんばかりに、晴香は堂々と鼻を鳴らした。
笑いを堪える声が漏れてきたが、晴香は聞こえないフリをすることにした。
「………」
けれど不思議なことに“母親”と呼ばれて嫌な感じはしない。
胸の奥の辺りがざわめき、むずむずくすぐったい。
鎖骨の下を指でそっとさすったが、治る気配は皆無だった。
『…ノーだ』
「な、何が」
突然「ノー」と言われ、心の中を見透かされたのではと鼓動が速まる。
『質問の答え』
「あぁ!」
なんだ、と胸を撫で下ろす。
しかしほっとしたのもつかの間。
「眠れなかったの!?」
『マイクの近くで大きな声を出すな』
「そ、それで体は大丈夫!?」
『そんなに心配するようなことじゃない』
いつものことだと八雲は言うが、心配なものは心配だ。
歩くスピードが自然と早くなる。
「睡眠はしっかり取らなくちゃ駄目なんだよ?」
『それを僕に言うのか』
八雲がくっと笑う。
脳裏に浮かぶのは、暇さえあればパイプ椅子でも寝袋でも寝ている姿。
『まあ、今夜は君の言う通りゆっくり寝させてもらうよ』
一旦会話が途切れる。
まだまだ八雲と話していたい。
晴香は慌てて話題を探す。
「夕飯はまたコンビニ?」
『また質問か』
間髪入れずに続ける。
『まだ決めていない』
空いた左手で拳を握りガッツポーズ。
なるべく自然に立ち振る舞い、八雲に尋ねた。
「だったら食べにくる?」
家で電話を掛けていたのなら、コードに指を絡ませていたであろう。
あいにく携帯電話のためコートはない。
代わりに日の沈み掛けた空を見上げて続けた。
「ちょうど今ね、夕飯作ってるとこなんだけど」
これが嘘だと知っているのは私だけ。
「ちょっと間違えたら作り過ぎちゃって。食べにこないかなぁ…なんて」
『ちょっと間違えたくらいで、夕飯が一食分も増えないと思うが?』
鋭い。
ここはいつものように「トラブルメーカーだから」で済ませてくれれば良いのに。
『まあ、君らしいと言えば君らしいが』
ずっと向こうの方に人影がある以外、身近に人はいない。
確認してから晴香は子供のように頬を膨らませた。
「それって料理が下手って言いたいのかしら?」
『残念なことにそうではない』
じゃあなんだって言うのだ。
先を促すように黙っていると、呆れとも尊敬とも取れるように続ける。
『まだ気が付かないのか?』
「何がよ」
『前』
「前?」
前がいったいどうしたんだ。
晴香は顔を上げる。
「夕飯を作っているんじゃなかったのか?」
遅れてスピーカーからも声が届いた。
「あ」
目の前にはいるはずのない八雲がいた。
どうしてと口にするよりも先に、スピーカーから鼻で笑う音。
「まさかこんなところで会うとは、な」
「それはこっちの台詞よ」
携帯を耳に当てたまま握りしめる。
八雲が帰ってきた。声を聞けた。姿が見れた。
外に声が漏れないように口元に手を当て、八雲がなにやら口にする。
『今から会いに行ってもいいか?』
「うん…!」
晴香は大きく頷くと八雲に抱き付く。
突然の衝突に一歩二歩後ろに退けながらも、八雲は晴香を受け止めた。
「おかえりなさいっ!」
「ただいま」
「長い間、お疲れさまでした」
ご褒美のキスを頬に贈って。
end.
八雲はともかく晴香がスマホを使っている姿が思い浮かばない…
いつか二人にもこんなときがくるのだろうか。
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