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八雲で魔法使いパロ。
とりあえず今年中に一段落つけたかったので。
カテゴリ:パロディにある前回のお話を読んで頂いた方が、一層楽しめるかと。
八雲/八雲が魔法使いパロディ
とりあえず今年中に一段落つけたかったので。
カテゴリ:パロディにある前回のお話を読んで頂いた方が、一層楽しめるかと。
八雲/八雲が魔法使いパロディ
どれだけ泣いただろう。
どれだけ「ばか」と言っただろう。
溢れ落ちる涙の粒はとどまることを知らない。
だけど辛くはなかった。
怒りも悲しみも嬉しさも。
全部、受け止めてくれたから。
鼻をすする。
溜まった水分が一気に喉に流れ込み、晴香は噎せ返った。
「けほっ、はっ」
「ゆっくり息を吸って…」
丸くなった背中を大きな手が擦る。
言葉に合わせて吸ったり吐いたりを繰り返すうちに、呼吸が楽になってきた。
しゃくることはあっても、話をするぐらいには落ち着いた。
「いい子だ」
背中を撫でていた手が、襟首を介して頭に移動する。
普段から触られ馴れない項に指が這うのはむず痒く、しゃくりをあげるのに隠れて息を飲む。
「子供扱いしないでよ」
「僕に比べたら、君たち人間なんて子供も同然だ」
口ではそんなことを言いつつ、頭上の手を払うことも身体を離すことも出来ない。
首から掛けた赤い石がゆらりと揺れた。
雨に冷めた身体を八雲に預けながら、晴香はじっと眺めていた。
「特に君は、な…」
そう言うと八雲は首にかけていたペンダントを外す。
首に手を回され、チェーンが止められる。
晴香の胸元で赤い石がきらりと輝いた。
「母さんの御守りだ」
「お母さんの?」
「それは君を守ってくれるだろう」
何から守ってくれるのか。
尋ねたい気持ちでいっぱいだったが、八雲の姿を見ては聞けなかった。
八雲は、私が踏み込んではいけない世界に生きている。
直に八雲の顔を見ることができず、視線を落とす。
胸板の傷。脇腹に浮かぶ真新しい青あざ。
見ているだけで自分の身体に痛みがズキズキ走る。
しかし心を落ち着かせられていたのはそこまでだった。
同じ場所を押さえて、あることに気付く。
指先に触れたのは濡れた布地の感触。
八雲と自分の姿を見比べて初めて、八雲が一糸纏わぬ姿であることに気が付いた。
「ひっ…!」
そこからは早い。
怪我人であることも忘れて振り上げられた手を、八雲の頬目掛けて払う。
それも虚しく、八雲に寸のところで止められてしまった。
「そう何度も同じ手にかかるか」
手首を掴まえ、頭の上で拘束される。
「だから君は子供なんだ」
すっと顔を寄せられ、咄嗟に目をつぶると耳元で囁かれた。
温い吐息がかかり、全身に粟が立つ。
力勝負に敵うわけないと知りつつ、晴香は全力で腕を振り払った。
しかし、勝負は意外な結末を迎える。
目の前の光景がスローモーションのように映る。
八雲の姿が傾いたかと思えば、右にゆっくりと倒れ、晴香の視界からフレームアウト。
どさっと音を立てて、フローリングの上に横になった。
「や、八雲君…?」
声をかけても動かない。
「八雲君っ!!」
慌てて駆け寄る。
顔には先程までの妖しい笑みもなく、大きく息をしていた。
肩に触れようとして裸であることを思い出し躊躇するも、止められなかった。
「ねぇ、八雲君!八雲君ってばぁ!」
「心配するな。魔力が弱っているだけだ」
そういえば彼は魔法使いだった。
なんてのんきな突っ込みをしている間もない。
「でも…でも…」
「少し休めば、また元に戻れるから」
瞳にはしっかりと意志があり、挙動が不審な晴香よりも平常に見える。
「君が心配することじゃない」
その言葉に、ズキリと胸の辺りが傷む。
何か言おうと口を開けるも、喉でつっかえ声にならない。
震える唇が二三度開いては閉じる。
そんな晴香の頭に、八雲はぽんと手を乗せた。
「ありがとう」
「何が“ありがとう”なのよ」
きっと声にならなかった。
けれど八雲は、いつもの見下したような瞳で、晴香の頭を撫で続けていた。
八雲も落ち着いてきたのだろう。
床の上で静かに息をしていた。
頭を撫でていた手は、晴香が「もういい」と手を避けたときから繋いだまま。
…といっても小指と小指が引っ掛かっているだけだが。
ちょっとした拍子で解けてしまいそうなのに、二人の小指は離れない。
多分、八雲君なんて気付いてすらいないんだろうなぁ。
八雲から逸らした目を一瞬だけ戻し、また壁の方を向いた。
「あ、あのぉ…」
「なんだ」
横に寝た八雲は猫そのもの。
人の姿だと言うのに。今は人の姿だということが問題だが。
「……──くを…」
「聞こえない」
「いい加減、服を着てください!」
晴香は叫んだ。
小指が離れて、あっと声が漏れそうになる。
「服?」
「ふ、く、で、す!」
「あぁ…」
そう言うと八雲は自らの身体を見下ろした。
道理で晴香がこちらを見ないわけだ。何度か見ているようだったが。
「それは無理だ」
「えっ?」
すっとんきょうな声が出る。
否定されるとは思わなかった。八雲の性癖を疑う。
「…君は何か勘違いをしている」
それから溜め息。
「僕は見ての通り魔力が弱っている」
傷だらけ痣だらけで体力は失われているようだが、魔力の強弱は分からない。
むしろ魔力に強弱があることを初めて知った。
「いつもの服を出すにも、タダでというわけにはいかないんだ」
「と言うことは…」
「しばらくはこのままだな」
晴香は度肝を抜かれた。
あんぐりと開いた口。先程とは別の意味で震え、絶句。
「じゃ、じゃあ猫の姿になれば…!」
我ながらナイスアイデア。
会話は不自由になるが、隠せる。いろいろと。
「僕は言ったはずだ」
「何を」
「魔力が弱まっていると」
無理だ、と断言され肩を落とす。
怪我人なんだから当たり前と言えば当たり前。潔く諦めようと溜め息を吐いた。
「……わかった」
「え…?」
「試してみる」
そう言うと八雲は瞼を閉じ、口を結った。
ぼん!と煙に包まれる八雲の身体。
煙の中から黒い尾がにょきっと出てくる。
これは…!と晴香が瞳を輝かせたのは一瞬。
あんぐりと口を開ける。
先程とは別の意味で唇が震え、声が出せなかった。
煙が掃けた先にいたのは、猫の耳と尻尾を生やした八雲だった。
…訂正。人間の身体に猫の耳と尻尾を生やした八雲だった。
「な…なっ…」
「失敗だな」
本人は冷静に分析すると、細く開けていた瞼をゆっくりと下ろしていく。
「ちょっと!寝ちゃうの!?」
「残りの魔力も使って僕は疲れた。少し休ませてもらう」
片目を開けていかにもだるそうに言う。
そんなぁと晴香は顔を覆う。
目の前には全裸の猫耳、尻尾の男の人。
私が望んだわけではないが、これはいたたまれない。
どうしようどうしようと、頭の中がショートしてしまいそう。
「あぁそうだ」
八雲の声に顔をあげる。
だるそうに起こした身体で腰に手を回し引き寄せてくると、額の辺りでちゅっと音が弾けた。
「魔除け」
たった三文字そう言うと八雲は再び横になり、その日は目を覚まさなかった。
その日、晴香が眠れなかったのは言うまでもない。
end.
御守りと魔除けがメインだったのに、書きたいことを詰め込んでいったらこんな結果に。
魔はお前じゃないか\(^o^)/
どれだけ「ばか」と言っただろう。
溢れ落ちる涙の粒はとどまることを知らない。
だけど辛くはなかった。
怒りも悲しみも嬉しさも。
全部、受け止めてくれたから。
鼻をすする。
溜まった水分が一気に喉に流れ込み、晴香は噎せ返った。
「けほっ、はっ」
「ゆっくり息を吸って…」
丸くなった背中を大きな手が擦る。
言葉に合わせて吸ったり吐いたりを繰り返すうちに、呼吸が楽になってきた。
しゃくることはあっても、話をするぐらいには落ち着いた。
「いい子だ」
背中を撫でていた手が、襟首を介して頭に移動する。
普段から触られ馴れない項に指が這うのはむず痒く、しゃくりをあげるのに隠れて息を飲む。
「子供扱いしないでよ」
「僕に比べたら、君たち人間なんて子供も同然だ」
口ではそんなことを言いつつ、頭上の手を払うことも身体を離すことも出来ない。
首から掛けた赤い石がゆらりと揺れた。
雨に冷めた身体を八雲に預けながら、晴香はじっと眺めていた。
「特に君は、な…」
そう言うと八雲は首にかけていたペンダントを外す。
首に手を回され、チェーンが止められる。
晴香の胸元で赤い石がきらりと輝いた。
「母さんの御守りだ」
「お母さんの?」
「それは君を守ってくれるだろう」
何から守ってくれるのか。
尋ねたい気持ちでいっぱいだったが、八雲の姿を見ては聞けなかった。
八雲は、私が踏み込んではいけない世界に生きている。
直に八雲の顔を見ることができず、視線を落とす。
胸板の傷。脇腹に浮かぶ真新しい青あざ。
見ているだけで自分の身体に痛みがズキズキ走る。
しかし心を落ち着かせられていたのはそこまでだった。
同じ場所を押さえて、あることに気付く。
指先に触れたのは濡れた布地の感触。
八雲と自分の姿を見比べて初めて、八雲が一糸纏わぬ姿であることに気が付いた。
「ひっ…!」
そこからは早い。
怪我人であることも忘れて振り上げられた手を、八雲の頬目掛けて払う。
それも虚しく、八雲に寸のところで止められてしまった。
「そう何度も同じ手にかかるか」
手首を掴まえ、頭の上で拘束される。
「だから君は子供なんだ」
すっと顔を寄せられ、咄嗟に目をつぶると耳元で囁かれた。
温い吐息がかかり、全身に粟が立つ。
力勝負に敵うわけないと知りつつ、晴香は全力で腕を振り払った。
しかし、勝負は意外な結末を迎える。
目の前の光景がスローモーションのように映る。
八雲の姿が傾いたかと思えば、右にゆっくりと倒れ、晴香の視界からフレームアウト。
どさっと音を立てて、フローリングの上に横になった。
「や、八雲君…?」
声をかけても動かない。
「八雲君っ!!」
慌てて駆け寄る。
顔には先程までの妖しい笑みもなく、大きく息をしていた。
肩に触れようとして裸であることを思い出し躊躇するも、止められなかった。
「ねぇ、八雲君!八雲君ってばぁ!」
「心配するな。魔力が弱っているだけだ」
そういえば彼は魔法使いだった。
なんてのんきな突っ込みをしている間もない。
「でも…でも…」
「少し休めば、また元に戻れるから」
瞳にはしっかりと意志があり、挙動が不審な晴香よりも平常に見える。
「君が心配することじゃない」
その言葉に、ズキリと胸の辺りが傷む。
何か言おうと口を開けるも、喉でつっかえ声にならない。
震える唇が二三度開いては閉じる。
そんな晴香の頭に、八雲はぽんと手を乗せた。
「ありがとう」
「何が“ありがとう”なのよ」
きっと声にならなかった。
けれど八雲は、いつもの見下したような瞳で、晴香の頭を撫で続けていた。
八雲も落ち着いてきたのだろう。
床の上で静かに息をしていた。
頭を撫でていた手は、晴香が「もういい」と手を避けたときから繋いだまま。
…といっても小指と小指が引っ掛かっているだけだが。
ちょっとした拍子で解けてしまいそうなのに、二人の小指は離れない。
多分、八雲君なんて気付いてすらいないんだろうなぁ。
八雲から逸らした目を一瞬だけ戻し、また壁の方を向いた。
「あ、あのぉ…」
「なんだ」
横に寝た八雲は猫そのもの。
人の姿だと言うのに。今は人の姿だということが問題だが。
「……──くを…」
「聞こえない」
「いい加減、服を着てください!」
晴香は叫んだ。
小指が離れて、あっと声が漏れそうになる。
「服?」
「ふ、く、で、す!」
「あぁ…」
そう言うと八雲は自らの身体を見下ろした。
道理で晴香がこちらを見ないわけだ。何度か見ているようだったが。
「それは無理だ」
「えっ?」
すっとんきょうな声が出る。
否定されるとは思わなかった。八雲の性癖を疑う。
「…君は何か勘違いをしている」
それから溜め息。
「僕は見ての通り魔力が弱っている」
傷だらけ痣だらけで体力は失われているようだが、魔力の強弱は分からない。
むしろ魔力に強弱があることを初めて知った。
「いつもの服を出すにも、タダでというわけにはいかないんだ」
「と言うことは…」
「しばらくはこのままだな」
晴香は度肝を抜かれた。
あんぐりと開いた口。先程とは別の意味で震え、絶句。
「じゃ、じゃあ猫の姿になれば…!」
我ながらナイスアイデア。
会話は不自由になるが、隠せる。いろいろと。
「僕は言ったはずだ」
「何を」
「魔力が弱まっていると」
無理だ、と断言され肩を落とす。
怪我人なんだから当たり前と言えば当たり前。潔く諦めようと溜め息を吐いた。
「……わかった」
「え…?」
「試してみる」
そう言うと八雲は瞼を閉じ、口を結った。
ぼん!と煙に包まれる八雲の身体。
煙の中から黒い尾がにょきっと出てくる。
これは…!と晴香が瞳を輝かせたのは一瞬。
あんぐりと口を開ける。
先程とは別の意味で唇が震え、声が出せなかった。
煙が掃けた先にいたのは、猫の耳と尻尾を生やした八雲だった。
…訂正。人間の身体に猫の耳と尻尾を生やした八雲だった。
「な…なっ…」
「失敗だな」
本人は冷静に分析すると、細く開けていた瞼をゆっくりと下ろしていく。
「ちょっと!寝ちゃうの!?」
「残りの魔力も使って僕は疲れた。少し休ませてもらう」
片目を開けていかにもだるそうに言う。
そんなぁと晴香は顔を覆う。
目の前には全裸の猫耳、尻尾の男の人。
私が望んだわけではないが、これはいたたまれない。
どうしようどうしようと、頭の中がショートしてしまいそう。
「あぁそうだ」
八雲の声に顔をあげる。
だるそうに起こした身体で腰に手を回し引き寄せてくると、額の辺りでちゅっと音が弾けた。
「魔除け」
たった三文字そう言うと八雲は再び横になり、その日は目を覚まさなかった。
その日、晴香が眠れなかったのは言うまでもない。
end.
御守りと魔除けがメインだったのに、書きたいことを詰め込んでいったらこんな結果に。
魔はお前じゃないか\(^o^)/
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