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LGで秋直です。友達以上恋人未満な、同居設定で。
恋人じゃないのに同居とかいいですよね。

LG/秋直(同居設定)

今日の晩ご飯はハンバーグです。


秋山さんに教えてもらったインターネットをフルに活用して。

研究に研究を重ねて完成したのが、本日の晩ご飯の直特製スペシャルハンバーグなのです。


おいしいって言ってくれるかなぁ。

直は笑みを浮かべながら挽き肉を練る。


キッチンにずらりと並べられた香辛料たちが、七人の小人のように温かく見守っていた。






リビングにて向かい合い。

秋山に向けて、このハンバーグを作るのにどれだけ研究を重ねたか。
蛍光灯の下で身振り手振り伝えていた。


「…と、言うわけで完成したのがこちらのハンバーグなんです」

「挽き肉と黒胡椒が密輸ゲームをはじめたところが面白かったな」

「…秋山さん、話聞いてましたか」

「うそうそ、君がインターネットを付けるのに一時間かかったところが」

「秋山さん」

黒目がちな目で秋山を睨むと、降参と言わんばかりに両手を上げた。

反省しているなら許します。
その言葉に甘いな、と秋山が呟いたのも知らず直は引いた。

目の前の料理に内蔵が空腹を訴え、秋山は両手を合わせる。


「いただきます」

「どうぞ、めしあがれ!」


秋山が口にするのを今か今かと待ち構える。


女性のように白く男性らしく骨太な右手がナイフを、左手がフォークを握る。

焦げた肉の塊に、きらり輝くナイフの刃が沈む。

一つ力を入れ、弾けたハンバーグから溢れ出す肉汁。


湯気に紛れて香辛料の香りを放つそれに、うっとりと見取れてしまった。


つい目の前のナイフに手が伸びるが、寸で止める。

これは秋山さんのために作ったハンバーグ。

秋山さんが口にする前に食べるだなんて、だめ。


「………」


だが直の必死なる我慢とは裏腹に、秋山はなかなかハンバーグを口にしない。
左から右に、きれいに刻まれたハンバーグの前で腕も視線もその身体も制止してしまう。

そしてみるみるうちに歪んでいく整ったお顔。


「………」

「………」

「……あの」

「ん?」

痺れを切らし話しかける。

どこかゆっくり顔を上げる秋山に直の不安は積もるばかり。


「食べないんですか」

「あぁ…」


コトリ。ナイフとフォークが元の位置に置かれる。

肉汁が、脂が、花柄のテーブルクロスに染みを作った。


「ハンバーグ、嫌いでしたか」

「いや」

「何か変なものでも入っていましたか」

「いや」

「体調が、悪いんですか」

「……直」


切れ長の瞳がまっすぐに直を見つめる。


その瞳があまりに美しくて、あまりに恐ろしくて。

心臓が握られたように痛い。



「落ち着いて、聴いてくれ」


言わないで、秋山さん。

耳を塞ぎたくとも腕が上がらない。


一度広がった不安は、テーブルクロスの染みのようにじわじわと心を侵食していく。


頭に響く金属音の中、秋山の言葉だけが鮮明に鼓膜を揺らした。






「ダイエット中なんだ」



「……はい?」


秋山の口が刻んだ言葉に直は耳を疑った。

長いまつげがパチパチと瞬く。
昔の映画のようにコマ送りされる世界で、秋山は苦笑を浮かべていた。

「ダイエット、ですか」

「あぁ」

「誰が?」

「俺が」

栗色の髪を五本の指が雑に掻く。
そんな見慣れた姿に肩の重荷が解け、背もたれに寄りかかる。

口から吐いた息が、心配ごともまとめて体内から排出していった。

「君と暮らし初めてから、体重が増えるばかりなんだ」

「…ごめんなさい。私、出す量が多かったですか?」

「そうじゃなくて、あまりにおいしくて」

「え?」

「君の料理がおいしくて、腹がいっぱいになっても食べちゃうんだ」


あっさりと聞かされた言葉。


天然なのかわざとなのか。

思いを寄せる人にそんなことを言われ、平気でいられる直ではない。


「そ、それで…どれくらい太ったんですか?」

赤いであろう顔を隠すように俯き、口早に訪ねた。

「これくらい」

ちらりと顔を上げ、秋山の指が表した数に細い眉を寄せる。

「全然太ってないじゃないですか!」

顔を上げた直は思わず声を上げた。

男性が平均でどのくらいなのか知らない直でさえ、その数が一般的ではないことは分かった。

驚いた顔で仰け反る秋山に再度訪ねる。

「じゃあ、前はどれくらいあったんですか」

「これくらい」

示された数字に直は絶句。
そして、フォークを目前の肉の塊に勢いよく突き刺し、秋山の皿に振り落とした。

「私の分も食べて、もっと太ってください!」

「え、なにそれ酷い」

「いいからもっと太ってください!」

自棄になった直はぐっさぐっさとハンバーグを刺していく。

「わかったから、わかったから落ち着いて」

「……ずびまべん」

渡されたティッシュで鼻をかみ、水分の含んだ目元を擦る。


「でも、さすがにこんなには食えない」

苦笑を浮かべた秋山が、直のお皿にハンバーグを返す。

「じゃあ改めて、いただきます」

「…どうぞ、めしあがれ」


少し冷めて固くなったハンバーグは、猫舌の私たちにはぴったりでした。






「羨ましいです」

洗いものも終え、ソファーに腰掛ける。

「何が?」

沈んだ声に気付いた秋山は、読んでいた本を静かに閉じた。
肩に寄りかかってくる頭が力なく垂れ下がる。

「男の人なのに、そんなに細くて」

「そんなことないよ、ほら」

そういって捲られたシャツ。

「………」


覗いた身体に、直は自らの身体を見下ろした。


くびれのない腰。ふくよかな胸元。

摘むことのできる二の腕。


「………」

一つ一つ上げていくうちに悲しくなり、考えるのをやめた。


「まぁ君は、俺みたいにガリガリじゃあないね」

「どーせ私はお肉がついてますー」


抱えた膝に顔を埋める。

洗剤の匂いのロングスカート。


それを嗅いで慰めていると、くしゃっと髪に手が置かれた。


秋山さんの大きくてやさしい手。



「でも俺は、そんな君が好きだよ」


「そう、ですか」



あなたの「好き」の一言で。

私の悩みがまた一つ消えることを、秋山さんは知らない。






end.



ただ、幸せ太りっていいよねってこと。
本人にとってはどうなのかはわからないけれどね(笑)
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